唐揚げにレモンをかけるか
唐揚げにはレモンが供されることが多い。レモンを絞って唐揚げにかける。レモンの酸味が、唐揚げの旨みを引き立てる。絞ると広がる爽やかな香りと酸味は、口の中の味覚を活性化させ、食欲をそそる。
唐揚げにレモンをかけるか否かは好みが分かれる問題である。通は素材の味を楽しむ。私は唐揚げとレモンを別に食べることが多い。
「なんでレモンを絞らないの?唐揚げにレモンは最高だよ!」
「それぞれの食べ物が、個別の美味しさを持っていると思うんだ。唐揚げはサクサクしてジューシーで、それだけで満足できる。そして、レモンは酸味が効いていて、口の中を活性化させる。両方を別々に楽しむことで、その特徴を最大限に引き立てることができるんだよ」
日本唐揚げ協会は「唐揚げを愛するカラアゲニストは、何も足さない純粋な唐揚げを最低でもまず一口目だけは外しません」と主張する。
小説には「あ、私唐揚げにレモン、無理だから」との台詞がある(中西鼎『東京湾の向こうにある世界は、すべて造り物だと思う』新潮文庫、2019年、14頁)。
千葉侑生『幼稚園WARS』の主人公リタは、から揚げは「レモンかけない派」である。しかし、シチューは「ごはんにかける派」である(第1話「黒髪イケメン」)。混ぜないのが常に好きというものでもないようである。リタにとってはシチューにごはんをかけることが、その料理の美味しさを引き立てる方法なのだろう。
アニメ『ちいかわ』では、ちいかわはレモンをかけない、うさぎはレモンをかける派である(第105話「ファンレター/からあげレモン」)。彼らはそれぞれのスタイルで唐揚げを楽しむ。
『銀河英雄伝説』の二次小説では「唐揚げにレモンをかける国」が自由な国を意味する慣用句になっているとの設定がある(甘蜜柑『銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)』「第123話:分断の式典、小物の意地、地球の夢 804年11月9日~11月10日 ボーナム総合防災公園~最高評議会別館~宿舎」)。
現代の日本はレモンをかけることが強制される風潮があり、レモンをかけず、素材を味わう自由が大切である。しかし、レモンをかけずに素材を味わうことを権力が正統的なものとして他者に強制する社会では「唐揚げにレモンをかける国」が自由な国を意味する慣用句になるのだろう。
私達はそれぞれのスタイルで、唐揚げとレモンを楽しみたい。料理についての考え方は人それぞれ異なり、その多様性が料理の楽しみである。食べ物の味わいは、人それぞれ異なる。でも、その違いこそが、私達の食事をより楽しく、特別なものにしてくれる。




