ボッチ学生のボッチ活動・ウザ絡み
突発的で原因不明なナニカによってTSしてしまった主人公。
主人公はボッチ気質で、TSしてしまっても変わらず、気ままなボッチ活動を続けている。
なお今回もボッチ活動は覗き見と盗み聞き。
この辺はボッチの基本スキルみたいなもの。
他人の会話を聞くともなしに何となく聞き取ってしまうし、ぼんやり眺めるのも暇つぶし。
寒風吹き荒ぶ校舎の外。
とは関係の無い、教室。
そう言えば、少し前や古い学校だと、エアコンが各教室に無かったってマジ?
学校のボイラー室で温めた空気を、ヒーターと偽って各教室へ送っていただけとか、マジ?
暖かいのはヒーター (偽)の周辺だけで、しかも温風の吹き出し口の側の席に座る奴は熱すぎて逆にキツいのに、ヒーター (偽)から遠い奴らには恨まれてたってマジ?
夏には扇風機すら無くて、団扇を持ち込んだり、下敷きでペコンペコン・クワンクワン扇いで凌いでたってマジ?
いやー、今の時代に生まれてきて良かったわー。
「ミキーお昼だよ!」
「お腹すいたねぇ、サキ」
なんてエアコンの有り難みを感じながらの昼休みだ。
……それとは別に、今日もミキサキコンビが百合百合しくて大変によろしいですな。
ちょっと向かい合って話すだけなのに、ほぼ毎回お互い胸の前で両手を恋人繋ぎで握り合う姿で、百合成分が急速充填されますわ。
「どこで食べよっかー? 食堂?」
「うぅん、教室が良いかなぁ」
この学校のお昼は、学食か学校と契約してるパン屋の持ち込み販売。 それと自前の弁当か登校中にコンビニへ寄って買ってくるか。
だからクラスメイトは思い思いに動く。
「どうしてー? あっちで食べた方が広くて気分が良いでしょ?」
「でも、廊下が寒いでしょ?」
「あー、分かる」
クラスの友達に声をかけて学食へ行く奴ら、他のクラスの友達に廊下から呼ばれて学食へ行く奴ら、何も言わずさっと席を立ちどこかへ行く……多分待ち合わせで決めた場所へ行く奴ら。
「ミキのお弁当は可愛いね?」
「ふふーん! 彩りには気を付けてます!」
「お母さんが、でしょ?」
「バレたー! で、今日のサキはコンビニのサンドイッチ?」
「時間が無かったからね。 あと文具で買っておきたいのも有ったから、元々コンビニへ行く予定だったの」
ミキサキを含めて教室に残る奴らも、適当にグループに別れて固まって弁当やパンやおにぎりを広げて、楽しくお喋りしながらお昼を過ごしている。
……僕?
訊くまでもないじゃん。 ボッチだよ? 僕は。
「何を買ったの?」
自分の席で、一人で、カバンから弁当を取り出している所だよ。
「ノート。 そろそろページが埋まりそうだったから」
僕は弁当が多く、親が朝ご飯のついでに作ってくれる。
まあ僕はそこらの男子じゃないですから? 弁当を作るのは朝でも、夜の内に仕込む手伝いをやってますよ?
あとは温めるだけとか焼くだけとか、仕上げの工程だけなら負担が大分変わるだろ?
ほら、僕はボッチでしょ? 家で特にする事無いし、将来で自活を考えるなら料理が出来た方が圧倒的に良いだろうし。
親に感謝しながら、弁当を広げる。
「へー、埋まったノートは後で見せて?」
僕の弁当は太い筒型の魔法瓶。 三段式で、一番下に温かい汁物を入れて、その熱を筒の中に閉じ込めて、真ん中の白飯や一番上のおかずを保温する良い奴。
「はいはい。 テスト勉強の時に、出そうな場所もチェックしておけばいい?」
危険でも……いや、だから? ヤンチャ者が遊びで、電子レンジを爆発させる事件を繰り返してね、危険だからって回収されて職員室にしか使える電子レンジが無いんだよ。
「あざーっす!」
そんな学校で、学食ランチ以外で暖かい弁当を食べられるコレは、本当に凄いんだ。
さあ、まったりとランチを楽しむか!
「河谷君のお弁当は、いつ見ても温かそうで美味しそうだよねえ」
うぎゃっ!!?
何だよ! いきなり僕に話しかけてくる奴は!
僕はいつも“こっちくんなオーラ”を出してヒト除けしてるはずなのに、それを突破してくる奴は!
「あっ……ねーねーミキ、あっち見て?」
「どうしたの? ……あぁ、仲屋君が………………えぇと、誰だったかな」
仲屋かよ……。
僕が原因不明の性転換現象を食らったのを隠して男装しているのに、コイツは少し前に怪しみだして以降、妙に僕と関わろうとしてくるんだよね。
「ほらー、ボッチ……じゃない。 川渡温泉クンだよ」
言い切りおった。
僕は確かにボッチだけど、言い切りおったよあの子。
「温泉……入りたいの?」
「ミキと一緒に行きたいねー♪」
ミキサキは脱線してるけど、河谷ねー?
……げふん。 仲屋が話しかけてくる度に「女の子の臭いがする」って言ってきて、しつこくて気持ち悪くて堪らないんだよ。
僕が女子になろうと、仲屋には何の関係もないだろうに。
じゃない。
僕は仲屋とは関わりたくないんだ。 そして弁当を食べるんだよ。
「お? 今日のメインおかずは鶏の照り焼き。 男子ならやっぱり肉だよね」
知らねえよ。
お前にやる為に仕込んだんじゃないから。
「おお、汁物はけんちん汁かな? いいね、暖まりそうだね。」
やらねえよ。
お前に飲ませる為に昨日多めに作ったんじゃないから。
「……ははは、やっぱりダメか」
ダメに決まってるだろ。
「そうだ。 話は変わるけど、古い漫画で駅の伝言板に後がないと書くと助けてくれる、街の狩人は知ってる?」
そりゃあ知ってるよ。
アレは男子なら一度は、漫画かアニメで見るだろ。
中学でも高校でも、その漫画を持ち込んで回し読みする男子を見たことがあるし。
「仲屋クンが一方的に話しかけてるよー」
「最近仲が良いよねぇ」
良くねぇですよ。 勘弁して欲しいですよ。
「あの作品に出てきて現実でも人気が出た車とさ、ヒロインの女の子に共通点が有るって、知ってるかなあ?」
いや、知らねえよ。
「話が少し変わるけど、女の子のおっ○いの張りを支えてる物の名前を知ってる?」
話が飛びすぎだろ。 それと本当に気持ち悪いよ。 なんでいきなりセクハラ発言してくるんだよ。
そしてこの癖でクラス内での評判があまり落ちないのは、なんでだよ。
「女の子にしかしないセクハラトークを、川渡温泉クンにしてるねー」
「サキ、それで名前を固定しちゃったんだ……」
外野の怖い指摘は、聞こえません。
「クーパー靭帯って言うらしいよ」
どうでもいいよ。
「それで話を戻して、あの作品の主人公の車で人気になった車はミニクー○ー。 両方にクーパーって付いてるんだよね」
いやマジでどうでもいいよ。
こんなのに注意を向け続けていられない。 弁当を食べよっと。
「川渡温泉君が仲屋君を無視して、ご飯を食べ始めたね?」
「これはアレだよー、キザなナンパ師をスルーする、真面目っ子みたいなのー」
ミキサキは完全に観戦モードですね?
いつもは他のクラスメイト達から観察されている側なのに、逆転されてますね?
「だから、街の狩人の主人公は大きなおっぱ○が好きに見えて、小さい○ーパーを愛用していた理由が分かるね?」
どうでもいいよ。
ああ……照り焼きのこのタレの味を出すのに苦労した分、本当に美味い。 白飯が進む。
「川渡温泉クンのトリテリが美味しそー!」
「あぁ、うん。 確かにカロリーとか気にせず欲しいかも」
しっかり一晩漬け込んで、味を染み込ませてるからね!
本当に美味いよ! 親には感謝だよ!
「小さいク○パーを愛用する事で、短いなクーパー靭帯を持つヒロインが好きだよって、口に出さず伝えていたんじゃないかって」
知らねえよ。
いや、なんか今日はよく喋るな。 このチャラ男は。
「あの大きいトリテリが有ったらなー」
「なに? むね肉?もも肉?」
「きゃー、ミキにセクハラ発言されたー♪」
「サキにはどっちもしっかり有るじゃない」
「もっと欲しいもーん!」
「……うん。 否定しない」
…………うん。 目を離せない。
あの素敵百合空間をスルー出来ない。
むしろスルーする方が難しくは有るんだけど。
「うりゃー! お望みに応えまして、ミキの胸を大きくしてやるー!」
「ちょっとサキ!? 今は食事中っ!」
………………堪らんです。 あのコンビがついに、公衆の面前で豊胸マッサージを始めおったとです。
こんなの凝視するしかないじゃないか。
「あはは。 ミキサキちゃん達は、今日も可愛いねえ」
ああ、仲屋もあの百合ップルに、注意を全部奪われたんだな?
分かる。 分かるぞ。
あれは現代の癒しだ。
「なんかミキサキちゃん達に全部持ってかれちゃったね。 また話しに来るよ」
おう。
二 度 と 来 ん な 。
蛇足
河谷
今日もボッチで気ままが良い。
のんびりボッチでノンストレス。
……のはずだったのに、前回以降からやたらと仲屋から絡まれる機会が増えてきた。
河谷は仲屋のセクハラトークを本気で嫌っているので、関わりたくはないと願っているし、河谷と仲屋の精神的BL展開には絶対にならない。
TSしてから、性別の象徴くらいしか明確な変化が無かったのに、最近は胸の先がむずむずし始めていて戸惑っている。
ミキサキ
控えめな言動がミキ。
ちょっとアレめな言動で語尾を伸ばしがちなのがサキ。
ショートカットかミキ。
肩甲骨より下に髪が伸びてるのがサキ。
可愛い顔立ちがミキ。
どちらかと言えばキレイ系のサキ。
両手の指を絡ませるのは、なんだか恋人みたいと顔を赤くするのがミキ。
両手の指を絡ませる位は親友なら当然だと思ってるサキ。
サキの積極性にたじたじなのがミキ。
ミキが引き気味だから、積極的に関わりたいサキ。
サキの弁当にヒヨコの形したスライスチーズがあって、可愛らしい弁当がうらやましいと思うミキ。
弁当も良いけど、ミキのかじったサンドイッチもかじりたいなーと狙うサキ。
仲屋が河谷に話しかけていて、しかも女子にするセクハラトークをしているのを見て、実は仲屋は男の子が好きな男の子なのかも? と思っているミキ。
仲屋が川渡温泉に話しかけているから、ふたりで温泉に行きたいのかなー? と思っているサキ。
サキのスタイルに憧れがあるミキ。
ミキにスタイルをあげられないから、代わりに改善する手助けをしてしんぜよう。 と調子に乗っているサキ。
こいつらがあれだけイチャついてて、それでも何も無いふたりだってのが、どうしても信じられない周囲。
けんちん汁
個人の認識では、肉無し豚汁。
醤油のスープと味噌のスープがあるけど、どっちかは読者様方のお好みで。
戦争になるのは勘弁ですので。
仲屋
河谷からやっぱり女子っぽいカホリがしていて、それを確かめたがっている。
その確かめ方が、仲屋定番のセクハラトークなので、嫌がられているのに気付いてない。
周囲への気配りはそれなりに出来るのに、なぜかセクハラトークだけは、気配りできるのに止められないチャラ男。