自由貿易という詐欺
少し過激な内容ですが、竹中平蔵氏をディスる気持ちは木星分くらいしかありません。
リカードについては彼が自身の才覚で富を築いたことは凄いことだと素直に思いますが、それと経済学者として、言っていることが正しいとイコールで考えてる方はどうかと思う筆者です。
さて、農業生産の一翼の端っこに関わるものとして、皆様に伝えたいことがあります。それがタイトルにある自由貿易という詐欺についてです。
もう少し詳しく言うのであればデイビッド リカードの比較優位論やそれを殊更に現代の貿易に当て嵌めようとする勢力です。
TPP締結に向けた論争が繰り広げられた当時、賛成派の経済学者や評論家が本気で
「反対派は比較優位論も知らんバカな愚民だ、意見を聞く価値もない」
てなことをメディアを通して発言していて、反対派には勿論知っているとわかる経済学者や社会学者もおりましたし、筆者の嘘偽りない当時の思いを叫ぶなら
「そんなもん、知っとって反対なんじゃ、あほ」
でした。口が汚くなってすいませんm(_ _)m
リカードの比較優位論って、200年前の経済理論な上に、リカードって産業革命で機械化する社会構造の変化に「機械化によって雇用が奪われることはない( ・`д・´)」とか言っといて、どう考えても雇用が奪われる現実に「た、短期的には奪われることもある( ;゜0゜)」なんて言い直した奴ですよ。古典経済学の巨人みたいな扱いだけど、同時代にはアダム スミスもいるので一概には言えませんけどね。
比較優位論は前述のアダム スミスの絶対優位論に対抗したものですが、簡単に言えば絶対優位論は独占禁止を唱えるものです。市場の自由に任せれば体力のある資本が産業を独占して価格操作や物流の操作を始めるのは当然ということを素直に認めたものですね。
だからこそ、この考えに従って国内では独占禁止法や財閥解体などが行われるわけです。
比較優位論は分業による効率化なんて言い訳した独占の容認に過ぎません、竹中平蔵氏が総務大臣当時、
「農業をやってる人が失業したら、みんなIT関連に転職すればいいんです。今はそこが好景気なんだから、成長産業に雇用が集中して、離職率は下がります」って、お前ホントに学者って、このような発言をしていてびっくりしました。
比較優位論では2国間でそれぞれが得意な産業に特化することで生産性が向上し、お互いに経済が好転すると主張しますが、この前提にあるのが、先の竹中平蔵氏の発言です。
その国の不利な産業にいる人は有利な産業に全員が転職した上でかつ、雇用条件は変わらないどころか向上しなければ、この理論は成り立ちません。小学生でも詭弁だとわかるでしょう。
リカードはイギリスの綿織物とポルトガルのワインを引き合いにこの理論を説明しました。
イギリスでは機械化された織物工場の技術が有利でポルトガルが職人のつくるワインの生産量、品質が有利だから、イギリスはワイン生産をやめ、ポルトガルは工場を閉鎖しようというわけです。
これをもう少し分かりやすくしてみましょう。
先進国AはIT関連技術の生産力があり、途上国Zはバナナの生産地としましょうか、先進国Aの担当者は必死に海外の技術を学び、国を発展、近代化させようとして技術供与や支援を頼む外交担当者にこう言うわけです。
「おたくの国は我が国よりはるかにバナナの生産に長けている。技術の必要な工業生産品は我が国に任せて貴国はバナナだけ作っていれば、生産量が増えたバナナの売上で我が国の高品質な製品を輸入出来るでしょう」
途上国Zの担当者はそれでは我が国の技術は向上せず、バナナを作り過ぎても価格が暴落するだけ、一方的に搾取されるだけだと訴えますが、先進国Aの担当者は「我が国のバナナ産業も打撃をうけるのですから」と取り合いません。そもそもバナナ産業なんてないのに。
これは極端な例ですが、逓増産業である工業生産品と逓減産業である農業生産品を同列に扱うことは自由貿易では良くありますし、相手国の安全保障上、必要な産業を壊滅させることもあります。
リカードが比較優位論に拘ったのは彼が経済学者である以前に投資家で商人だったからでしょう。自身の儲けのために必要な条件を揃える方便とすれば、巨万の富を築いたリカードらしいといえます。
TPP締結に向けた論争のさい、外圧により既得権益を壊すと言っていた方がいましたが、そんなもの新たな既得権益が産まれるだけです。
ガット ウルグアイラウンドにおいて米の自由貿易協定が結ばれたあと、日本はミニマムアクセスとして米を輸入していますが、輸入した米の保管、保管され消費されることなく、数年後に廃棄される処分施設、それら全て政府や官僚組織の外郭団体であり、天下り先ですよ。国際会議で先進国でありながら、自由貿易の名で不利益を押し付けられた上に、それを国内で既得権に変えている実例があるんですから。
WTOによる自由貿易のラウンドが開かれなくなったのも、結局のところ、国連において数では多数の途上国相手には結束されてしまい、先進国に有利な条件を引き出せず、先進国同士のパワーバランスによる痛み分けをしたものの、ミニマムアクセスを守っているのが日本だけという状態では開く意味がないからです。
本当に自由貿易がお互いに利益のあるものだと言うなら、このガット ラウンドが成功し、今でも継続されているはずですが、実際には2国間や多国間での話し合いによる協定に移りましたね。
貿易もようするに市場原理が働く経済活動ですから、全員が利益を得られるなんてことはあり得ません。
堂々とウィンウィンなんて言って、自由貿易こそが正義と言う方には不信感しかありません。
だからといってフェアトレードとかも胡散臭いと思ってる筆者ですが自由貿易よりはマシかと思ってはいます。
ご意見お待ちしていますm(_ _)m