異世界転移
続いたから、ここに ” 初投稿 “ を宣言しよう。
某月某日その同日
先述した手記を読み返して見た。
実際に記した私ですら、内容が理解しがたい駄文であった。
諸兄にはすまないことをしたと思っている。本当に申し訳ない。
そこで、話を整理すべく、今朝、私の身に起きたことを、ここに記したい。
それは、6時間前のことだった……。
私のセカイは暗闇に閉ざされていた。
だが、私の眼に下されていた両方の瞼がゆっくりと持ち上がる。
それが上がるにつれて、視界いっぱいに白光が満ち満ちたーー。
ーーそこは灰空の下。
道往く人々は厚手のコートを着込み、黙々と歩いて現れては瞬く間に過ぎゆく。
肌を刺す外気の冷たさと薄明るい空色から、今が早朝の時間帯ではないかと、あまり物分かりがよろしくない我が灰色の脳味噌が計算して弾き出していく。
白いTシャツにGパンだけの軽装で早朝の路上にて空を仰ぎ臥せていた私を、
何人もの男女が怪訝そうに見下しながら通り過ぎて往った。
掌を置いたところは、赤い煉瓦に覆われ、その角ばった縁が指に刺さり、鈍い痛みを返してきた。
透きとおった空気が鼻腔を突き抜けていく清涼感。
深海から浮上してきたような深い呼吸を繰り返した私に、
計算を終えた我が脳は温もりを持たない現実を突きつけた。
私が目覚めた場所。
そこは聞き覚えすらない名前を冠した駅が目の前にある階段通路の踊り場であった。
記憶にない駅名、
記憶にない駅と周辺のビル、
記憶にない顔たちが構成する雑踏。
それらが視野いっぱいを占めるその光景には、
最後に見た馴染みのある住処に似ても似つかない光景には、
この平穏な日々と決して揺るがぬ共通観念に凝り固まった青銅の頭を撃ち抜かれるような衝撃を覚えた。
ふと、手の感触に違和感を覚えて確かめると空瓶が握られていた__
__それは安物の発泡酒であった。
その瞬間に私はすべてを察し、絶望した。
どうやらわたしは、低級の魔法薬による暴走で異世界に転移したらしい。
その状況は、あまりにも絶望の限りを突き抜けていて__
__むしろ気持ちよかった……。
金銭が欲しいか。
金銭は、他人の住処に置いてきた。
欲しければ、手に入れろ……ただし、可能であるとは言及しない。
この世は “大後悔時代” の幕開けであった……。
たぶん続かないから安心してほしい。