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第3回:お題「砂」「終末」「最高の目的」  作者: 読メ版創作深夜の文字書き60分一本勝負
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砂の国の外交官 ヤギ郎

使用お題:「砂」

在サブレー王国日本領事館発

本国担当局宛:公電

 サブレー王国初代国王ザヘル・デュ・パザール陛下が危篤状態にあり。現在サブレー王国と紛争状態にあるマリィナ共和国及び周辺諸国の情勢に注視されたい。

※サブレー王国:立憲君主国。首都はテリュート。元首はサブレー王国初代国王ザヘル・デュ・パザール陛下、首相はナザリアル・カールド閣下。国土の半分以上は砂地が占めており、主要産業は鉱業である。現在マリィナ共和国と紛争状態にある。在留邦人は約20名。

※サブレー王国初代国王ザヘル・デュ・パザール陛下:サブレー王国建国の父。


――――


 サブレー王国に赴任してから三日目で、この国での生活のコツを掴んだ。領事館を保証人にして借りたアパートを出る時、全ての窓が“しっかり”と閉まっていることを確認してから、玄関を出た。もちろん玄関の扉もしっかりと閉める。顔を覆うように長いスカーフを巻いてから、アパートの入っている建物を出る。

「今日も風が強いな」

 サブレー王国の首都テリュートは別名「砂嵐の街」と言われている。アパートの前の通りは、強風で砂が舞い上がっていて小さな渦をつくっている。サブレー王国は砂地にできた国である。サブレーの語源は現地語の「砂」に由来するらしい。街のどこを見ても砂がある。風で舞った砂はどんな隙間にも入り込むので、家を出る時“しっかり”と窓と扉が閉まっていることを確認しないと、帰宅した頃には家の中が砂だらけで大惨事になっている。

 首のところへずり落ちるスカーフを口と鼻を覆うようにして引き上げる。テリュートで三日間生活してもう一つ学んだことと言えば、肌の露出をできるだけ避けること。なぜなら、飛んできた砂が肌に付くとチクチクして落ち着かないからである。

 自宅から領事館までの5分の道のりを早足で移動する。この国には露店というものがない。砂が吹き荒れるこの地に出店を立てた瞬間、たちまち風で飛ばされるからである。そのせいか、道を歩く人もできるだけ砂を被らないように素早く移動している。

 

 領事館に着くと玄関口で手際よく上着についた砂を落とす。この国には、玄関口で砂を落とすための小箒が売られていて、着任祝いに領事館で勤務していた一等書記官から渡された。

「おはよう」

 奥の執務スペースへ入るとサブレー人のスタッフが近づいてきた。

「おはようございます。領事、王室庁から宮殿へ参るように連絡をいただいています」

 王室庁は王室の身辺業務を行う行政機関である。

 スタッフが手渡した書類に素早く目を通してから、外したばかりスカーフを巻いて領事館を後にした。


 宮殿に到着すると、すぐさま侍従が現れた。彼の案内に従いながら、応接室やダイニングルームを過ぎ、どんどん建物の奥へ進む。

 たどり着いた場所は寝室だった。室内に一人の老人が体を休めていた。

「お、おー、やっと来てくれた」

 聞き取りづらい掠れ声が老人の口から発された。

 後ろから侍従に促され、老人に近づく。

「あ、あなたに私の最後の言葉を聞いてもらいたい」

「よろしいのですか、パザール国王陛下?」

 現在王室内では皇位継承争いが展開されている。これにわが国が巻き込まれるのはよろしくない。

「私には目的があった」

 国王は構わずに話を続けた。

「それは、戦争を終わりにすることだ。貴国、いや、貴殿にはその力がある」

 外交官としてのアンテナがピンと張った。この情報は聞き漏らしてはならない。

「タヘミナ地域だ。手筈は整っているよ。頼む、わが国のために、頼む……」


――――


在サブレー王国日本領事館発

本国担当局宛:極秘電報

 サブレー王国タヘミナ地域に金鉱山が存在することを確認した。サブレー王国政府は、タヘミナ地域をマリィナ共和国及びわが国と開発すること希望している。また、当地域の開発事業を通して、サブレー王国政府はマリィナ共和国との和平を実現する足掛かりとしたい。タヘミナ地域の資源情報及び治安状況について別添資料に記載した。なお、別添資料は極秘扱いとする。

 現在サブレー王国国王パザール陛下の病状は安定し、王室内の皇位継承争いが沈静化されている。

※タヘミナ地域:サブレー王国東部に位置し、マリィナ共和国に隣接している。アル・ベナーレ合意に基づく戦闘地域にしてされておらず、治安は安定している。


――――


本国担当局発

在サブレー王国日本領事館宛:極秘電報

 情報について確認した。当地域の開発について、本省は政府開発援助を検討中である。

 担当領事は和平交渉のための情報収集を開始されたい。


実在の国や組織、人物と一切関係ありません。全て執筆者によるフィクションです。

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