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インディゴ  作者: 鼻息
1/5

 私は不思議なの。どうしてあの人がこの場に立っていられるのか。どうして、私が、こうして立てないでいるのか。

 母は、不気味なほど深く青い藍の目を細めた。

「ねぇ、テツ」


 どうして、魔法は禁忌なんだろうね。魔法を使えば、わたしは、あの人と同じように立つ事が出来るのに。


 あの人、父は、威厳漂う大柄な体躯に映える豪奢なローブを閃かせ、木陰に車椅子で佇む親子に気にも止めず(気付かなかったのかもしれないが)、新しい妃の愛らしい笑顔に寄っていった。

「めんどくさいわ」

 その言葉は、父の地位に関連したものかもしれないし、母の立場によるものかもしれなかった。

 テツは、ぼんやりと思った。母は、きっとこの恋に見切りをつけようとしているのだと。

 だから、ある夜、逃げしましょうと男装をした母が枕元に立ったとき、テツは、何の感慨も無く頷いたのだ。



 母は、魔法で自らの足を造り替えた。魔法を学んだことのないテツは、その理屈が理解出来ない。出来ないが、ああ良かったと覚束ない足取りの母を支えて思う。



 振り返れば、王宮が見えた。

「国境を越えるわ」

 母は、闇の中窪んだ穴のような目で遠くをみた。実際は、暗く濃い瞳の色のせいだと分かってはいたが、それは酷く不気味な顔だった。

 蚊がぶんぶんと暗闇に舞う。母の指先に灯った、小さな魔術の灯りのせいで、羽虫の招待には事欠かない。

「母上」

「なあに?」

「国境を越えたら、何するの?」

 母は笑った。困ったような笑みだった。もしかしたら、先のことなど考えていなかったのかもしれない。




 そんな、10年も前の記憶を近頃は良く思い出す。それは、予兆だったのだろう。

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