My Dearest One ~小さな姫君~
「さあ、オスカル。こちらがミリアムお嬢様だ。お前はこれよりこの姫君様にお仕えするのだぞ」
赤子用の寝台にそれは寝ていた。
紅色の頬、小さな薔薇の花弁のような口、信じられないほど小さな手。
城に住まう使用人の中で自分が一番年若であるため、赤子を見るのはこれが初めてであったが、何と小さく尊き生き物であるか、と、当年八つになったオスカルは思った。
「オスカル、抱っこしてみる?」
母となった伯爵夫人がオスカルに言った。
「え?よいのでございますか、奥方様!?」
「もちろんよ」
夫人が寝台より姫君を抱き上げ、抱き方を見せてくれた。そして、オスカルの腕の中に持たせてくれた。父パトリックが、姫君を落とさないよう隣で支えてくれる。自分の方へ移された拍子にうっすらと開いた瞳の色は若草のような緑色だった。
(うわぁー!)
姫君は乳の匂いがした。甘くまろやかな匂い。
(僕の、愛らしい、姫君様・・・)
とても柔らかく、脆く、愛すべきもの。
感動で心の臓が大きく膨らんだのを感じた。
(これから僕がこの姫君様をお守りするんだ)
目をきらきらと光らせたオスカル少年にとって、姫君との初対面は、胸に深く刻まれた日となったのであった。