美女とゴリマッチョ
女は誰しも女優だ。
大粒の涙を流しながら魔王にすがり付いて懇願する演技をしながら、グレイスはデヴァイン・ウィンドを発動させた。
結果は成功だ。
魔王の甲冑の内側で小型の水爆が爆発したのだ。
「ぐふっ・・・」
しかし、さすがは魔王だ。
全ての魔力を消費したとは言え、少しのダメージを受けただけで水爆の効果を封じ込めてしまったのだ。
突っ込んできたアーノルドの首を刎ねる事は不可能になったが、あとは最後の一撃を再び甲冑で受け止めるだけで勝利は揺るがない。
「どっせい!」
しかし、最後の一撃はこれまでとは違った。
浸透勁だ。
これまで馬鹿の一つ覚えのように同じ場所を殴り続けていたのは、甲冑と魔王の体の隙間を無くす為だったのだ。
アーノルドの放った浸透勁は甲冑を貫通し、全てのエネルギーを魔王の体内へと解き放った。
そして、魔力の尽きた魔王は、為す術もなくミンチとなったのだった。
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「はぁはぁ・・・やったか?」
フラグでは無い。
「はい!でも、念のために焼いておきましょう」
グレイスは甲冑を無造作に掴むと、燃え盛る炎へと魔王の遺骸を放り投げた。
どうやら魔王を油断させる為に力尽きた演技をしていたらしい。
そして魔王の剣を拾い上げ、折られた三日月の代わりに腰に差した。
「お前のおかげで命拾いしたぜ。さっきのは何だったんだ?」
「アーノルドさんの故郷の村で見つけた魔法ですよ」
「へぇ、すげぇ威力だったな」
「でも、指輪が壊れちゃいました・・・」
「魔力ブーストか・・・」
アーノルドがプレゼントした指輪の効果は、宝石が砕け散る代わりに一度だけ魔力をブーストさせるものだった。
普段の戦闘力は申し分ないレベルだったので、非常用のアクセサリーを選んでいたのだ。
「せっかくアーノルドさんからプレゼントしてもらったのに・・・」
「ま、役に立ったんだし、いいじゃねぇか。助けてもらった礼に何でも言う事聞いてやるから元気出せ」
「本当ですか!」
「あぁ、男に二言は無ぇ!」
「じゃあ、わたしをお嫁さんにして下さい」
「いいぜ・・・ってなにぃ!」
「約束ですからね?それとも嫌なんですか?」
「い、いや・・・まぁ、いいか。俺は細かい事は気にしねぇ!」
「うふふ。じゃあ、モンスター駆除に出かけましょうか!」
「お、おう・・・」
「もちろん一緒にですよ?新婚なんですからね!」
「それもそうだな!」
こうして二人は誰に見送られる事も無く、王都を旅立った。
その後の足取りはようとして知れず、いつしか人々に忘れ去られたのだった。




