ドレスアップには時間が必要です
化け物、いや、ミチオとアーノルドの話し合いが決着した頃、服飾ギルドの奥の扉が開き若い女子特有の騒がしさが広がった。
「羨ましいわぁ、わたしもこんなに大きくなりたい!」
「そうそう!大きさだけじゃなくて形もすっごく綺麗だったよね!」
「うぅ・・・重くて邪魔になりますよ?下も見にくいし、食べこぼしたら引っ掛かって落ちないし、汗かいたら谷間に集まって流れるから気持ち悪いし・・・」
「はぁ・・・リアルな悩みだねぇ・・・」
「定番の肩こりくらいしか思い浮かばなかったよ・・・」
「一度でいいから悩んでみたいわ・・・」
「で、でも皆さん、スリムだから色んなお洋服が似合いますよ!」
「こんな手足の長い人に言われてもねぇ・・・」
「しかも健康的に引き締まってるしねぇ・・・」
「下腹から太る悲しさ・・・」
「あうあう・・・」
「ちょっとみんな!まだ営業中よ、おしゃべりは控えなさい!」
「は、はい!」
ミチオの野太い声で注意され、女子会ムードは消え去った。
「じゃあ、モモちゃんは採寸表の控えを取ってから鍛冶ギルドに届けに行って頂戴。ラム、スウ、ミニはちょっと手伝ってほしい事があるの」
「分かりました!」
「はい、何でしょうか?」
「グレイスちゃんにあのお洋服をプレゼントしようと思うの。その代わり、街に居る間は着てもらう事になるけどね」
「すごくいいアイデアです!」
「えぇっ!」
「待ってる間にその話をしていた。機能的には問題ないようだから、お前さえよければ俺は構わん」
「え、でも・・・」
「とりあえず試着だけでもしてくれないかしら?」
「そんな・・・女の子みたいな服なんて・・・」
「あたしからのお願い!試着して嫌だったら諦めるから!」
「うぅ・・・わ、分かりました・・・」
「きっと気に入るわよ!さぁ、みんな、グレイスちゃんをドレスアップしてちょうだい!」
「はいっ!」
グレイスは周囲をラム、スウ、ミニに固められ店の奥へと連行されていった。
「あなたは目を瞑っていてくれるかしら?」
「妙な気配を感じたらフルスイングするが、いいか?」
「あら、バレてたのね。せっかく熱いベーゼを交わそうとおもってたのに」
「駆除されたいか?」
「もう・・・害虫みたいに言わないでよ」
「どっちかって言うと害獣だろ?」
「あたしの魅力が通じないなんて、ストイックでス・テ・キ!」
「話の通じない奴だな・・・あとどれくらい掛かるんだ?」
「30分くらいかしらね?」
「なげぇよ!」
「せっかく来たんだから、プレゼントでも探してあげたらどうかしら?」
「はぁ?」
「あの子って魔導剣士でしょ?」
「なんでそう思う?」
「このあたしが舐めるように見たんだもの、あの子の身体つきは完全に覚えたわ。間違いなく魔導剣士よ」
こんな化け物とは言え、さすがは服飾ギルド長という事だ。
顧客の細かいサイズと最適なファッションを瞬時に見抜くスキルは持っているようだ。
「まぁ、正解だが、それとプレゼントがどう結びつく?」
「うちは服飾ギルドよ。アクセサリーも一通り揃えてるのよ」
「で?」
「魔法を使うならアクセサリーで強化するのが普通でしょう?それなのに、あの子ったら何にも付けてないじゃない」
「欲しけりゃ自分で買うだろ。あいつはそれなりに金持ってるからな」
「しょうがない人ねぇ。じゃあ、手伝って下さる?」
「何をだ?」
「あの子に合うデザインは分かるけど、どんな性能がいいのかまでは分からないの。そのアドバイスを頂けないかしら?」
「売り付ける気か?」
「安心してちょうだい。ここは押し売りするようなギルドじゃないわ」
「しょうがねぇな。どうせ暇だから、ちっとは売上に協力してやるか・・・」
「よろしくお願いね」




