接吻
他の奴らは知らないが、俺は餌さえ貰えれば簡単に身を渡してやる。
おっと、勘違いしちゃあいけねぇよ?
あくまでも遊びに付き合ってるだけで、一度も本気になんてなっちゃあいねぇ。
相手が本気になったら、後はただ逃げるだけ……自分以外に良い思いはさせねぇんだ。
だけどなぁ、今……俺は本気を出してるんだ。
何故かって?
そりゃあ勿論、気になる女が出来たからさ。
そいつの名前は『いずみ』ってんだ。
なぁに、俺が直接聞いた訳じゃねぇ。
他の奴らがそう呼んでたのさ。
初めていずみに会った時の事は、今でも覚えてる。
懐かしいぜ。
「勝手に俺に触るんじゃねぇっ!」
俺は体が暑くて怒っていた。
「だって、もう求めた物はあげたでしょう? これからも色々あげるのに、なんで触ったらいけないの?」
いずみは何にも分かっちゃいねぇ。
「お前みたいな素人がなぁ、プロにいちゃもんつけるたぁいい度胸だなぁ、あぁん!?」
「な、何よ! こっちだって、好きで来た訳じゃないんだから……夫が無理やり連れてきたのよ!!」
なんでぇ既婚者か。
「だったらさっさと帰んな。旦那に見せるもんがあんだろ?」
「あ、ありがとう。夫くーん! 見て見てぇっ!!」
「どうしたいずみ?……って凄いじゃないか!」
「でしょでしょ?」
ふんっ、目の前でひっつきやがって。
俺を一度でも捕まえたんだ、誇りに思ってくれて構わないぜ。
で、今にいたる訳だ。
「夫くーん! 息子くんをちゃんと見ててねー!」
「分かってるよぉー!」
この夫婦、子供までいやがった。
ちくしょお、子供も喜ばせてやりな。
お前の接吻は格別だからな。
「さてと、下ごしらえ下ごしらえ! えぇぇーい!!」
お前の接吻は、本当に旨いんだよ。
「今からあげてあげるーっ!!」
ったく、ハイテンションな女だぜ。
……今日1日、ありがとうな。
あばよ。
ジュワァッ
「夫くん、息子くん、私の釣ったキスの天ぷらよー!!」
ー終ー