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ショートショート1 ルサンチマン

 今夜は流星群が来るそうだ。幸い今日の天気は晴れだったので、安心して見られるだろう。ベランダから閑散な私の町を眺める。田舎じみた所ではあるが、澄んだ空気と穏やかな町並みが私の肌に合っている。

 町から目を離し、空を見上げる。雲が一つも無いおかげで、多くの星が煌々と輝いていた。私は密かに高揚感を覚える。

 流星に何をお願いするかはもう決まっている。心に刻むかのように、その願い事を無言で復唱する。私の脳裏には、片想い中の彼の顔が浮かぶ。



 同じクラスの彼は、いつも人に囲まれていた。見た目は爽やかで成績は優秀、スポーツは何でもできるという万能なイケメン。さらに人柄も良くて、男女ともに人気があった。だから行事がある度に周りから注目を集めていた。生徒中の誰もが彼を羨望の眼差しで見ていた。かくいう私もその一人だ。これほどまでに理想的な男子は、この世界にどれだけいるだろうか。私は彼の一挙一動を目で追ってきた。どう足掻いても釣り合わないことは分かりきっていたのに、気がつけば恋心が芽生えていた。

 ある日の放課後。私は下校する途中で、彼が一人の女子と話しているのを見かけた。その女子は私の知らない子だった。いつも彼が一緒にいるグループの中には、あんな子はいなかったはずだ。

 二人は校庭の隅っこで仲良さげに話している。あんなにも楽しそうに笑う彼を今まで見たことがなかった。ふと、女子の方から彼に手を伸ばした。その手は馴れ馴れしく彼の肩に触れる。触られた彼は照れ臭そうに頬をかく。とても微笑ましいそのやり取りは、まさに恋人同士のようだった。傍目から見ても、とても和やかな雰囲気が漂っているのが感じられる。それを見て、無性に苛立ってしまった。

 何であの女子は平然と彼の隣で笑っているの? 何で気安く彼の体に触っているの? 何で彼の笑顔を独り占めしているの? 羨ましい、妬ましい、憎たらしい、許せない、許せない、許せない──────



「あ、来た」


 夜空を駆け抜ける一筋の光が見えた。いよいよ流星群が現れた。続々と流れていく星々。それらの軌跡が奏でる旋律に、私は心打たれた。

 早くお願いをしなければ。私は目を閉じて手を組む。そして、ありったけの想いを込めて願った。




「どうかあの笑顔が私だけのモノになりますように────」

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