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ショートショート8 投獄

 目が覚めると牢屋の中にいた。なぜ俺が逮捕されたのか。看守の話によると、道端に落ちていた十円玉をネコババしたところを通行人に通報され、なんやかんやで逮捕に至ったらしい。なんやかんや、てなんだ。通るべき過程をすっ飛ばしてんじゃねえ。しかも懲役三年の実刑判決、てあまりにも慈悲がない。

 たかが十円玉で人生を狂わされたなんて、とんだ笑い話だ。脱獄をしようかとも思ったが、そんな知略も勇気も持ち合わせていないので、理不尽ながらも三年耐え忍ぶことにした。

 俺がブチ込まれた刑務所は、なかなか充実していた。食事は質素ながらも栄養のバランスを考えたラインナップ。味はそこそこだ。

 昼の労働は過酷ではあるが、昼休憩と水分補給のための小休憩を取らせてくれる。看守の見張りはとても厳しいものだが、囚人の体調までしっかりと見てくれているので、大事に至ることはない。

 さらには囚人のために、卓球場やテニス場に図書室などの娯楽施設が設けられている。そのおかげで、刑務所生活が苦にならなかった。


 そんなこんなで三年の月日が流れた。いよいよ出所できる。思えば、この三年はとても濃いものだった。突然、脱獄をすると言い放った丸坊主の囚人がその日のうちに刑期が二十年延びたことがあった。女看守とイケメン囚人が一時期ラブロマンスな展開に陥ったことは所内の伝説として語り継がれていくだろう。

 俺は刑務所を後にした。娑婆の空気というのはどうしてこんなに美味いのか。それは、俺という存在が三年の刑期を経て心身ともに浄化されたからなのかもしれない。

 これからの人生、どうしよう。まずは迷惑をかけた人たちに謝りに行かないといけない。両親の呆れ顔が目に浮かぶようだ。その後は、地域のボランティアに参加しよう。一度は罪を犯した俺でも、人のために何かできることがあるはずだ。

 実家へ赴く道すがら、道端に十円玉が落ちていた。なんというデジャヴ。だが、同じ轍は踏まない。俺は十円玉を警察へ届けるべく、それを拾い上げる。

「あ、ネコババだ!」

 結果。俺が十円玉をネコババしたと勘違いした通行人の通報により、あえなく再逮捕となった。神様は俺のことが嫌いなのかもしれない。

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