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アフター*ダーク  作者: えむ
序章 青天霹靂/マ王降臨
7/48

05

 ある者は携帯片手に通話中。ある者はコンビニ前で仲間とたむろし、ある者は店の前でチラシを配りつつ呼び込み中か。

 夜も深まる時間帯だが終息の兆しは、無い。

 そんな街中――


「――――あ、あれ!」


 突如として響き渡る焦燥に満ちた女の声が、真夜中の喧騒をぶち抜いた。

 その隣に居た華やかなドレス姿の女は、虚空に向けて指を差す女につられて空を見上げる。

 近くを横切ったサラリーマン風の男は、車輪付きのスーツケースを両手で引きながら顔を上げ、交差点近くで看板持ちをしていた作業服の老人は空を仰ぐ。

 二人で談笑しながら交差点を渡っていた制服姿の女子高生たちは、立ち止まって空に視線を向けた。

 『空を見る』もしくは『視線を上げる』という挙動が瞬く間に伝染していく――

 スクランブル交差点の奔流が停止。

 信号は切り替わりの予兆を点滅で知らせる。

 夜道を照らすべき星の光は、人工灯で塗り潰されていて視覚できない。しかし、人々の目はハッキリとそれを捉えていた。

 天を衝くほど高く聳え、夜空を狭めている高層ビルの輪郭を。

 その真後ろで煌々と輝く満月に映った――――夜空を駆るバイクと操縦者の黒いシルエットを。


   *


『なるほど。つまりこの私様に、過去ログを漁って欲しいってワケね』

 サージタリウスの話を聞いたジュリアは、甘ったるい声でそう言った。

「そうなるな。出来るか?」

『愚問ね。もう始めてる。二分頂戴ねー』

 受話口からキーボードをリズミカルに叩く音がする。止まることのない音はジュリアの独り言と重なって加速。

 普段はアレだが、こんな時だけはやはり頼りになるなとサージタリウスは音を聞きながら思った。

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