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アフター*ダーク  作者: えむ
序章 青天霹靂/マ王降臨
6/48

04


   *


 ループする電子音は、五度目に差し掛かったところで唐突に途切れた。

『はいはいはいはい。お待たせお待たせ。ええと…………どちら様? 私、いま取り込み中ですごく忙しくて、すごく大変なんだけれど。そんな中わざわざ私の時間を割いてまで電話してくるなんて一体どこのイイ男かしら?』

 怒涛の様に捲し立ててくる女の声が、男の聴覚を刺激する。

 並べられる言葉には少し棘がある。しかし甘ったるい声がそれらの印象をがらりと変えていた。

 ――誰から着信があったのか……画面の確認もしないのか。

 電話の向こうの女性は、オフィスに籠もりっきりのハードデスクワーカーであるため、機械には滅法強いはずなのだが、彼女が言う通りよほど忙しいのだろうか。

 男は三日ぶりに聞いた声に対し、若干うんざりした表情を浮かべて言葉を返した。

「ああ、すまない。私だ。サージタリウスだ」

『あーはいはい佐山ちゃんね。お疲れ様』

「その名で呼ぶな。業務規定違反にあたるぞ」

『あーそうだったわね。はいはいごめんなさいごめんなさい。で? どうしたの?』

 ジュリアの軽口を聞き、更にうんざりするスーツの男ことサージタリウス。彼女の挙動や所作に一々口出しをしていては前に進まない事を思い出し、割り切って言葉を紡ぐ。

「ああ、ミッションが終わったものでな」

『そう。戻るの?』

「いや、少し気になる事がある。そこで頼みたい事があるんだ。喜べ。お前の得意な検索の時間だ」


       *


 人通りの少ない裏通りから少し離れた大通り。赤と黄色のテールランプがずらりと連なり、大規模な渋滞が起こっていた。

 片側二車線の道路を車が埋め尽くす。

 歩道と車道が入り混じる交差点は、行き交う人々でざわめくスクランブル。

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