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アフター*ダーク  作者: えむ
第一章 日常茶飯/街の風景②
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15

 ――あの人が何をした? あの人は普段通り世話を焼いただけじゃねえか。それが何だこりゃあ……あの人は、俺の名前なんぞのせいでリスクだけを背負う羽目になったっつうのか?

 善行をする人間が馬鹿を見る構図が、皮肉にも出来つつある。

 テンチョーがマ王に向けた慈悲は、言ってしまえばただの身勝手だ。自分自身が起こしたアクションだ。他人が止める権限も否定する余地も、そこには存在しない。

 しかし、だからこそ、だからこそマ王は憤る。

 ――あの人が自分で決めた行動には、少なくとも悪意は無え。あったとすればそれはあの人の中にある条件反射だ。

 では、悪意が有ればそれは止めなければならなかったのか?

 始めから恩を売るのが目的であり、何か裏があったのか?

 その行動が正義であれば、それは必ず受け止めなければならないのか?

 ――違う……! 正義だ悪だなんて話は言い始めたら埒が明かねえ。だけどあの人は何か人道に背く事をしたのか? 道義に反する事をしたのかっつう話なんだよ!

 例えば道端に空き缶が落ちているとしよう。誰が捨てたのかは分からない。その道を通る人々は皆、空き缶の存在を無視する。

 それは何故か?

 答は単純。自分の捨てたゴミでは無いからだ。

 そして通行人の心理は得てして同じだ。

 拾ったら、自分のモノだと認めた事になる。拾っているところ誰かに見られたら、自分が捨てたと思われるかもしれない。

 自分はゴミを捨てるような人間ではないという証明において、道端の誰の物とも知れないゴミを拾う行為というのは大義名分として『都合が悪い』という事。

 ――要するに、GUILDの奴らは都合が悪いんだ。わざわざ俺の頭から消した名前についてのデータを保持する人間が存在する事が。

 邪魔ならば消す。という身勝手極まりない振る舞い。

 まだまだ確証はないし断言もできないが、GUILD側が振りかざすであろうアクションには、道義から踏み外れた裏がある可能性が高い。

 それと併せてマ王は自分が立てた仮説に確信めいたものを感じた。

 GUILDが名に関してそれほどまで過剰に反応するのであれば、裏を返せば本当の名を取り戻す事が何かに繋がる可能性があるという事なのだから。

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