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アフター*ダーク  作者: えむ
第一章 日常茶飯/街の風景②
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11

 『知っている人が少ない』『自分だけが知っている』という秘密めいた事というのが好きな人間はたくさんいる。幼少期に誰しもが作った秘密基地などがいい例である。

 人間は群生する生物であるが、その実、プライバシーを保持したがる。

 名綱は幼児の言葉に共感できる部分があったので、軽く頷いて話を完結させた。

「それにしても、名綱の待ち人はいつまでたっても来んのう……」

「そういうあんたの待ち人も来ないじゃん」

「ふむ。まあ、なにぶん忙しいやつだからな」

「ねえ、あんたが待ち合わせしてる人ってどんな人?」

 会話の合間を縫って苺を頬張っていた幼児は咀嚼しながら、

「そうらなぁ……ごきゅん」

「同い年の子?」

「いや、たしか……にじゅうよん、とか言ってたぞ」

「────!?」

 予想もしていなかった回答に目を丸くする名綱。対する幼児はそんな様子は一切気にせず、待ち人の特徴を告げる。

「とうもろこしのふさのような長い金髪で、白い服で、いつも言葉遣いが変な感じだ」

「いや、あんたに言われたくないでしょーにフヒヒ。で、何してる人?」

「む。ちょっと待てよ。いま思い出すから。えーと……かい……かい…………うーん、かい何だったかのう」

 相手の年齢が二四という時点で、なんだか既に事件の匂いがする。

 とりあえず男性なのか女性なのか……恐らく女性だろうけれど、女性であって欲しいのだけれど。と思考しつつも男性だったらそれはそれで面白いなとニヤける名綱。

どちらにしてもショタ系のイケナイ妄想である事は間違いない。

「……おおそうだそうだ。思い出した!」

 思考を終えた幼児の声に、名綱の顔が更にニヤける。

「うむ。たしか──かいぞく。海賊だと言っておったぞ!」

 ポン、と手を叩きながら幼児は満足げな表情を浮かべた。それこそ悩みに悩んだ難解な数式の問題が、何かの弾みで一気に解読できたかのような爽快とした顔だった。

 この時、名綱の表情は一瞬にして凍り付いていたという。

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