02
「……………………………………血だ」
不思議な感覚だった。
痛みを感じる。
血が出る。
この瞬間、肉体的苦痛であるはずのそれらに、少年はある種の興奮を覚えた。
それは勿論、変態的な意味合いではなく、ゲームのプレイヤーとして、である。
――はは、は。これがバーチャルリアリティだなんて。
横スクロールアクションで蔓延していた単三電池四本で動くポータブルゲーム。
映像が立体になり、操作性が一気に向上したDISCリード型ハード。
画質の向上に加え、登場人物のアクションに合わせ、コントローラーが振動する機能が付随された次世代DISCリード型ハード。
これまで発表、発売されてきたゲームを列挙しても、このアフター*ダークには遠く及ばない。
いくらオンラインが普及して世界中の人々と一緒にプレイできるシステムを組み上げても、
いくら画質の向上を追い求め、臨場感、リアリティを突き詰めても、
――なんだこれは……比較にもならない。自分自身の意識を投影するゲームだって? 僕は今、超絶に感動している!!
飛躍的革新など生温い。超越的革命とでも呼ぶべき現代ゲーム集大成の真っ只中にいる少年は、心底楽しそうな顔をしながら小刻みに震えた。そして両腕を空に向けて突き上げながら、
「ゲームGJビバGUILD!!」
ついに爆発した。
周りの視線が一斉に少年へと向けられる。
「ひっ! ご、ごめんなさい」
反射的に膝を抱えて縮こまる少年。
人々の目は一瞬で少年から逸らされ、再びそれぞれの行動へと戻っていく。
それでも少年は小さくなり続けていたのだが、ズボンの右ポケットに突っ込んでいたスマートフォンが突然鳴り響いた。
一体何事かと思いつつもスマートフォンを手に取り、画面をのぞき込んでみれば、メールが一件届いている。そのまま内容を確認すると圧縮された添付ファイルがポツリ。




