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アフター*ダーク  作者: えむ
第一章 日常茶飯/街の風景
20/48

01

 新東京市西区・新東京駅前


 時刻は既にてっぺんを通り越し、深夜一時に差し掛かろうとしていた。

 全部で一〇本以上ある路線の各終電は三〇分程前に全て出払っており、本数の少ない深夜バスも既に営業を終了している。

 にも関わらず、道を行き交う人々の数は増えるばかりで減少する様子は無い。

 その原因として挙げられる理由の一つ。

 現実世界の人間が、この電脳世界にログインしているからだろう。そしてまた一人、真夜中の新東京市に現実世界の人間が降り立った。

「うわぁ…………」

 空を狭める高層ビルの群を見上げながら、ナイロンパーカーを着込んだ少年は呆けていた。

 と言ってもそれは別に、背の高いビルの存在が少年にとって物珍しかったからという訳ではない。少年は日常的に高層ビルを目の当たりにしているし、自身が住んでいるマンション自体も地上一〇階とそこそこ高い。

 それに、夜闇を空を飛び回っているヘリコプターだって別段珍しくもないし、先程真横を通り過ぎた高級車だってきょうび騒ぐほどのものでもない。人混みだって。

 そう。少年は、大都市の雑踏に、摩天楼に、風景に気を取られている訳ではなかった。

 ――こ、れがゲームの世界だって……?

 少年は、ただ単純に電脳世界のリアリティに圧倒されているだけだった。

 現状確認の意を込め、頬をつねってみれば、微弱ながら痛みが伝わってくる。しかしそれでもいまいち自分の感覚が信用できない。

 そこで少年は自分の頬をはたいてみようと腕を振ったのだが、直後に通行人の一人と衝突してしまい、手のひらは顔に届かず少年はそのまま盛大に転けた。

 ぶつかってしまった壮年の男に「す、すみません」とおどおどした様子で謝るも、相手は全く意に介していない様子ですたすたと喧騒の中に消えていった。

 NPCだろうか? 面倒な事にならなくて良かった。と安堵していると右手に痛覚。

 転倒の際についた手に、ジクリ、と染み渡るような感覚が走る。

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