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そのエージェントが保有する能力の機能性を頼りに、マ王は立ち向かい、あっさりと屠ったわけなのだが。
実際問題、そう簡単にものごとは進展しないという事なのだろう。
ふう、と小さく息を吐き出しながら、マ王は夜道をデタラメに歩く。
ひとしきり思考し、暫定的ではあるが簡潔に纏めてみたものの、納得する気など更々ない。この四年間そうだったように。
何故、自分は幽閉されなければならなかったのか。
何故、名は失われたのか。
理由を求める日々は、忘却した名を取り戻す日々は、まだ続く。
ふと空を見上げてみれば、煌々と輝く満月とその端々を侵食する摩天楼が視界に映る。
――名前を探す旅、か。
思わず頭に浮かんだ言葉に、どこぞの主役気取りだと思いつつも、四年も掛かって答え一つ見いだせない自分に不甲斐無さを感じながら、マ王はデタラメに足を進めるのだった。




