03
ある程度名の知れた高校を卒業。都内の大学に通い、居酒屋でバイトをして、父親と母親と姉が一人いて。就職も無事に決まり、人並みの幸せが滞りなく展開されていた。
はずだったのだが、
皮肉にも、その就職先である大手電子機器メーカーGUILDから届いた通知が、青年の運命をねじ曲げた。
青年の脳内に、あの日の出来事がフラッシュバックする。
「ようこそGUILDへ、新入社員の諸君」
「面倒くせえよなあまったく」 「ああ暇だなあ」
「これからエージェントの適性を計る」 「ちょっと痺れるわよー」
driveモードに移行中_
「う、qnwああbh、ああああああああe!!!!」 「ホワイトコーヒー?」
「次。新採番号四番、■■■■」――
映像は唐突にそこで途切れた。
どこに向かうでもなくデタラメに歩みを進めながら、青年は思考する。
何が原因で自分は電脳世界に幽閉されることになったのか。今も昔も分からずじまいだが、現実世界からの救援が無いのは何故だ?
普通に考えて、もともと現実世界にいた人間がいなくなったともなれば、家族が警察に捜査願いを出していたり、いなくなった人間が最後にどこで何をしていたかぐらいは調べるはずだ。
もしかすればこれは何かの策略で、もしかすれば誰かの思惑なのでは?
いや、これはもっと別の、そう。実は長い長い夢か何かで、そのうち目が覚めれば終わってしまう幻想で。
と、いくら考えたところで憶測は憶測に過ぎず、思考回路はやはり生身の人間であるから現実逃避をしてしまうのが関の山。
しかしながら、青年は何も四年もの間、黙って閉じ込められていた訳ではなかった。




