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「ろぐpa、アウトおおオおおおオオオ!!!!」
眼前で絶叫しながらのたうち回るサージタリウスを見下ろしながら、青年は口元を僅かに吊り上げた。そして心底楽しそうに言葉を紡いだ。
「回線は接続した。ほら、思い出したろ? 痛みってやつをよ」
返答は、無い。
叫び続ける男を支配するのは、最早まともな思考ではなかった。ただただ湧き上がってくる飽くなきまでの痛みだった。
痙攣したように男の身体が跳ねる。
「――がガガが、ろ、ぐあウ、と……!!」
「無駄無駄。忘れた訳じゃねえだろ? テメエの体の基本性能。痛みを感じない代わりに許容量を超えた時の強制終了は無い。あん? じゃあ、なんで痛みを感じんのかって? さっき言っただろうが。だから、痛みの回線を繋いでやったんだよ」
青年は「まあ」と一拍置いて、
「聞いちゃいねえか。それじゃあそろそろ終わらせようか?」
吐き捨てた直後、右手に黒い光を集束させ始めた。
徐々に加速していく黒の集束は掌大にサイズを留め、握ると同時に拳に馴染む。拳そのものを覆うように揺らめく漆黒のそれは、闇より黒く夜より深かった。
「痛みの先にご招待」
そう言って青年は駆け出す。
もがき苦しむサージタリウスに向かって奔る青年は、凶悪な笑みを浮かべていた。
そして数瞬の後、解き放たれた黒が──炸裂する。
*
『――佐山ちゃーんお待たせ。GUILDのBBSの過去ログ引っ張ってきたよ』
路上に転がったイヤフォンから声がする。
『どうやら人型らしいんだよねー、マ王って。佐山ちゃんが殺ったのって獣型って言ってたでしょ? だから本体じゃ無かったのかも』




