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アフター*ダーク  作者: えむ
序章 青天霹靂/マ王降臨
11/48

09

 青年の黒髪が風に揺れる。

 ――何処から、現れた……!?

 燃え盛るビルを背に立ち尽くす青年は、黒いパーカー、ワークパンツと思しき黒いそれを着用しており全身黒に染まっているのだが、唯一、足元の茶色いショートブーツだけがその統一感を打ち消していた。

 彼は空から降り立った。それは分かる。

 ここは電脳世界。

 身体的な制約からある程度解放されるこの世界では、ビルやマンションから飛び降りたくらいでどうにかなる事などまず無い。

 ――何故、

 例え地上二〇階のビルから窓を突き破っても、着地ぐらいならば簡単にできる。例え車に轢かれたとしても、死にはしない。

 エージェントであるサージタリウスはそんな事など百も承知だった。百も承知だったからこそ、

 ――何故、サーチに反応が無いのだ……!?

 エージェントのみに許された《人物自動マーキング機能》の不発に動揺していた。脳内に浮かぶマップと人物の立ち位置が一致しない。

 有り得ない。おかしい。

 脳を掻き乱され、眼前で起きている事の処理が追いつかない。思考が、迷いが。

 刹那、それまで立ち尽くしていた青年の姿が消え、サージタリウスの右側頭部に強烈な蹴りが叩き込まれた。

 ガードは──間に合わない。身体を旋回させて受け流し──遅い。しかしダメージは。

 取り付けたワイヤレスイヤホンが耳から外れてアスファルト上を跳ね転がる。

 脳髄に走る激震。

 まるで高速で走る車同士が衝突したかのような鈍い音が響くと同時、サージタリウスの身体が宙を舞い、ツーバウンド、スリーバウンドしてそのまま三〇メートル程吹き飛んだ。

 扇型のブロックが敷き詰められた道路に横たわるサージタリウス。

 仰向けの格好からすぐさま跳ね起き、態勢を整える。ダメージは、無い。

 彼はエージェントと呼ばれるゲームの監視官。

 この世界における、あらゆる痛みを感じない。

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