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アフター*ダーク  作者: えむ
introduction
1/48

01

 腕時計を見ると、時刻は既に二十一時を回っていた。

 ノー残業デーとは名ばかりで、蓋を開けるといつも通りの帰宅時間。

 ふと考えてみれば、終業定時時刻にオフィスから出られていたのは、入社してから一週間の間だけだったような気がする。

 仕事に就いてから約四年。

 さかき 柊介しゅうすけは、「大学生だった頃は楽だったな」と昔を思い出しながら帰宅の途に着いていた。

 就職一年目の時は新鮮に感じていた通勤経路の風景も、今では通い慣れて見飽きている。

 ましてやここは都心から少し離れた閑静な住宅街。

 新旧混在、多種多様なホームデザインが並ぶ街はさながら家のカタログだが、突飛な物は何もない。だからといって仕事場の近くにある高層ビルや電波塔が住宅街のど真ん中にもあればいいとは思っていない。

 何事もメリハリが大事だ──柊介の信条である。

 物には物の最適な存在理由と場所があり、そして人には人の最適な存在理由と場所がある。

 オンとオフの切り替え。それが物事を楽しむために大切な行動だ。

 住宅街の端、緩やかな坂に差し掛かった所に柊介の自宅はある。自宅といっても一戸建てではなく、二階建てのアパートだが。

 入居時に差し替えた二重ロック扉の鍵を解除し、部屋に上がりこむ。柊介の部屋はアパートではあるが築一年とまだ新しい

 柊介は仕事用のバッグと総菜が入ったコンビニ袋をロフトベット下のデスクに置き、ノートパソコンに電源を入れた。着替えを済ませる頃にはセットアップは終わっていて、柊介はマウスをさっと動かして通話機能付チャットアプリケーションを立ち上げた。

 ポン、と気の抜けた音が鳴り、チャットログの蓄積を知らせる。

 グループチャットのアイコンをクリックして画面を展開するとログが三百近く溜まっていた。

 もうこんなに溜まっているのか、と思いながらマウスホイールで下にスクロールしていると再び気の抜けた音が。


   シューちゃん、おかえりー

   私たち、もう入ろうと思うんだけど、シューちゃんどうする?


 一番下に表示された最新のチャットログ。

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