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LOWDIT ONLINE  作者: 芳右
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2-07 狂戦士VS虐殺の悪魔

お待たせしました決着です。短めです。

 アノダさんとタロットさんの戦闘は堅実だった。

 マッサークルに一撃を入れては距離を取り、注意を引くだけに留め、決して無理をしない。既にマッサークルを相手にしているというだけでかなりの無茶なのだが、それはこの際横に置いておこう。


 メインはリーチの長いタロットさんが担当し、危うくなればアノダさんが接近して、攻撃の邪魔をする。あの二人もだいぶん戦いなれてるな。さすがエルトールが固定パーティを組むだけの事はある。


 だが、相手はあのマッサークルだ。ヤツはすぐに対応し、アノダさんの攻撃を無視してタロットさんの槍を掴みにかかった。それに気づいたタロットさんが慌てて槍を引っ込めるが、マッサークルが一歩踏み込むことで、一気に距離が潰された。


 マッサークルの左手が、タロットさんを捕えようと伸びるが、まぁそんな事をやらせる訳がない。


 強化された脚力で、すぐ近くまで迫っていた俺が短剣を振るう。脚力から短剣攻撃へとブーストを切り替え、マッサークルの指を切り飛ばした。


 そのまま左腕を掴んで急停止し、振り上げた短剣を振り下ろす。さすがに連続でブーストは成功しないが、傷口を狙う分には問題ない。

 短剣が抜けなくなっても困るので、嫌がらせ程度の意味合いしかないが、俺に敵意ヘイトを向けさせるには十分だ。


 即座に腕から離れ、アノダさんとタロットさんにも下がってもらう。二人はすでに疲労困憊といった表情で、これ以上戦えそうにない。……あれ?戦闘時間で言えば俺の方が圧倒的に長いよな?


 おかしいとは思うが、今はそれに構っている暇も無い。


「さて……いい加減、決着をつけようか」


 そう言ってマッサークルを正面から睨みつける。一瞬敵が怯んだように見えたのは俺の自惚れだろうか?


「ガァァァァァァァ!!」


 雄叫びを上げて、マッサークルが拳を振るう。それを難なく躱してその腕を切り付ける。脚力と攻撃力へのブーストをタイミングよく切り替え、ヤツの体にどんどん傷を増やしていった。


 数回切りつけたところで、短剣にヒビが入ったのが見えた。やはりコイツ相手に初期武器レベルの短剣じゃ荷が重いか。


 本来ダメージも与えられるような物では無い事を考えれば、耐えた方だろう。ほんと嫌になる。


 短剣での攻撃は最終手段にした方がいい。……殴るか?いや、蹴ろう。


 相変わらず殴る蹴るくらいしか攻撃方法の無いマッサークルの攻撃を躱し、おもむろに左腕を掴むと、思い切り膝蹴りを食らわせた。

 ミシリと嫌な音がしたのを確認して、手を放し、距離を取る。折れてはいないだろうが、アザくらいはできたかもしれない。……というか膝めっちゃ痛い。攻撃した俺までダメージがあるのは頂けない。


 まぁ与えたはずのダメージを考えれば微々たる損害だろう。どうせ一撃食らえば終わりなのだ。いまさら気にするほどでもない。


 マッサークルの拳を避け、左足にローキックを食らわせる。


(そういえば、足の腱に残した短剣ってそのままだっけ?)


 それを思い出して確認してみれば、引きずっている右足に剣の柄が見えた。思わず笑ってしまいそうになって、既に口元が笑っていることに今更気づいた。我ながら怖い。


 マッサークルの攻撃を避けながら、背後に回ろうと試みるが、さすがに易々とそれを許してくれるほど甘くは無く、上手く回り込めない。


 股下を潜ってもいいが、それはさすがに警戒しているだろう。避けている最中にふと閃いたので即実行に移してみた。

 マッサークルが殴り掛かってきたのを避け、腕を掴んでそのまま飛び乗る。驚いた様子のマッサークルが俺を腕から振り落とそうともがくが、その反動を利用して飛び上がり、一気に背後へと降り立つ。


 上手い具合に右足付近に下りられたため、ブーストを使用して短剣の柄を思い切り蹴り抜いた。

 ザシュッという効果音でも聞こえそうなほどに、刺さっていた短剣が内側から敵の足を切り裂き食い破った。


「ギャァァァァァァァァ?!!」


 マッサークルの悲鳴を無視して、血まみれの短剣を回収し、その場から離れる。これでまた二刀流だ。と思ったが、回収した短剣もすでにボロボロだった、残念。


 マッサークルが俺の方を睨んでくるが、なぜか襲ってこない。面倒なので俺の方から攻撃を仕掛けようと一歩踏み出した瞬間。


「っ?!」


 マッサークルが一歩退いた。その一歩が結構デカいため、当初より俺とマッサークルの間には距離があく。俺がもう一歩踏み出すと、痛めた足を引きずって下がる。


(なにこれ面白い)


 調子に乗った俺は、一気に距離を詰めるべく走り出す。マッサークルも下がろうとするが、片足が上手く動かせないようで距離はどんどん縮まっている。


「ガァァァァッァァァァァァァ!!」


 まるで己を鼓舞するかのような方向を上げ、マッサークルが両腕を振り上げた。

 片手が無いにも関わらず、そんなことはお構いなしに振り上げた腕を振り下ろす。さすがにその中に突っ込むわけにもいかず、巻き上がる土煙を避けるように後退する。


 この土煙に乗じて攻撃してくるかと身構えるが、その気配は一向に無い。不審に思うが、無暗に突っ込むこともできず、ただ土煙が治まるのを待っていたのだが……


「あっ……」


 俺はその光景に驚愕した。ありえない、そんなことあっていいはずがない。これでは、もうどうしようもないじゃないか……。


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!あの野郎逃げやがった!!」


 既にやつの姿は見当たらない。あれだけの傷を負ってよく動けたものだと感心もするが、今は苛立ちの方が大きい。


(ふざげるなよ?!もう少しだったんだぞ?!)


 見れば血の跡が点々と森の奥へ続いている。今追いかければあの傷だ、まだ追いつけるかもしれない……が、


「……さすがにもう無理か」


 呟く。現実的に考えれば無理な話だった。

 なんだかんだ言って俺はもう限界ギリギリだし、マッサークルを追えば他の敵に遭遇する可能性もある。帰還する体力があるかどうかも怪しいのだ。


 結論として、これ以上の戦闘は不可能と判断し、マッサークルの追撃をあきらめる。「けど次あったら絶対殺す」と心のメモに書き留めておくのを忘れない。


「よし!手土産に切り落としたアイツの右手と、放り投げて行った棍棒回収して帰ろう!」



 そう言ったはいいものの、それらはあり得ない程重く、重量制限オーバーのペナルティを食らい、あり得ない程苦労する帰り道になったのは言うまでもない。


 こうして俺たちのキリングモブ討伐戦はひとまず幕を閉じた。


次回からは日常編を書いていこうかなと思っております。

少し書き溜めてから投稿するつもりですので、次回更新は未定です。

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