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LOWDIT ONLINE  作者: 芳右
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1-01 ロウジット

 程々に自由で、程々に不自由なこの世界。

 それなりに平穏で、それなりに気苦労も多い今の生活。その中で俺は生きている。


 そんな俺の唯一の趣味はゲームであり、VR技術がゲーム企業にまで普及してからは、さらに症状は悪化した。……というのは当然の結果だったのだろう。


 誰もが一度は夢想した非現実。魔法が飛び交うファンタジー世界。様々な国の戦乱時代を駆ける戦士の物語。単純な運動系からパズルゲームのような脳トレ系まであらゆるジャンルがVRゲーム化した。


 俺は金が許す限り、ジャンルを問わず、気になったゲームは片端からプレイした。得手不得手関係なく、ただひたすら自分のすべてを駆使してプレイできるVRゲームに心底ハマった。


 その中でも俺はプレイヤースキルが大きく影響するゲームを好んだ。

 特に才能に恵まれているわけでも無く、ゲーム内でトップになれるとも思わない。それでも自身の力で何かを成す爽快感は俺を魅了するには十分だった。


 ある日、暇つぶしに読んでいた週刊誌に載っていた、最新ゲーム情報ページに気になるものがあった。


『あの超問題作 ロウジットがVRゲームで復活?!』


「……ロウジット?」


 聞いたことの無いタイトルだった。どんなゲームなのか調べてみると「キリング・モブ」や「ハイ・デスペナルティ」と呼ばれるシステムを指して「クソゲー」、「鬼畜運営」の文字が躍っている。

 ほとんどの意見がこのゲームの貶めるものだった。それこそ、敢えてVRゲーム化する意味があるのかと、疑問に思うほどに……。

 だが悪評だけではなかった。RPGにありがちな魔法や技能、職業補正などが存在しない、そのシビアさと、それに見合うだけの自由度こそが魅力だ、という人間もごく少数だが確かに存在していたようだ。

 

 レベル上昇による身体能力の強化はあるものの、武器の扱いや戦闘技能に関しては完全にプレイヤースキルに依存したものだ。

 戦闘だけではない。鍛冶や調合、建築や造船など多くの生産系技能に関しても同じだと言うのだから相当なものなのだろう。


 こんなゲームを好きこのんで遊ぶ奴は相当な変わり者だ。


 だが、なぜか俺はこの『ロウジット』というゲームにとても惹かれていた。多くのゲーマーが匙を投げるほどの高難易度ゲーム。

 もしそれをプレイし尽くすことが出来たら、どれほどの達成感を得られるのだろう?

 魔法のような不思議な力を持たない自分が、怪物相手にどれだけ戦うことができるのだろう?


――試してみたい。


 そんな欲求が確かに芽生えた。正式サービス開始まであとわずかしかない。

 基本プレイは……無料か……よし!


 この日、俺はこの鬼畜と言われるゲーム『LOWDIT』をプレイしようと決めた。



 それからの行動は早かった。ロウジットに関する情報をかき集め、それを基に自分のプレイスタイルを考える。VRゲームとなったロウジットでは役に立たない可能性もあるが、これは何も考えていないよりはマシ程度の認識だ。

 予想以上にゲーム内容の情報が少ない。おおまかなストーリー設定やプレイヤーが使える魔法が存在しない、というのは間違いないようだが、VR化以前のロウジットから変更された点というのがまったくの不明なのはおかしい。開発者側が意図的に隠しているとしか思えないが、理由がわからない。


 情報を少なくすることで好奇心を煽り、興味を引く手法もあるにはあるが、これに関しては逆効果だろう。前評価が低い以上、ある程度の情報は公開すべきだ。会社側がどういう意図で情報の制限を行っているのか知らないが……まぁ考えても仕方がない。

 一度やると決めたからには、全力でゲームを楽しむだけだ。


 そして数日後、ロウジットの正式サービスが開始された。


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