快適な悪夢、或いはTutorial
気が付けば世界は真っ暗だった。
何故こんな場所にいるのか。
何故こんな事になっているのか。
何も判らない。
―― ようこそ我が世界へ
―― 異界異相の者たちよ
―― 我が、神だ
語りかけてくる声、見れば真っ暗な闇の中、人型をした光がある。
否、人の形をした空洞から光が溢れている ―― そんな相手だ。
―― 見えるかね、世界が?
世界が見える。
巨大な、巨大と呼ぶのは余りにも小さいと呼べる、そんな重なり合った世界が見える。
―― 汝らにはこの世界を登ってもらう
―― 塔の最上段では我が汝らを待つ
―― 登りきった者には、我が名、我が力において望む全てを与えよう
極彩色の夢が見えた。
甘美なる夢が見えた。
果てぬ野望が見えた。
自分の夢が見えた。
他人の夢が見えた。
皆が皆、後に言う。
あれこそが甘言であった、と。
だが、今はまだその事に気付く者は居ない。
―― 理解したな?
―― 無論、望むならば世界へ戻してもやろう
―― だがその為には、登れ
幾重にも重なった塔は、果てしなく高い。
山があり谷があり平地があり砂漠があり森林があり川がある。
無いのは人の営み。
―― 戦え
そして世界もう1つ、化け物がうようよしているのが見えた。
―― それ以外は自由だ
―― 我が汝らに望む事は只1つ
―― 儘にあれ
―― 儘に絶望せよ
―― 儘に歓喜せよ
―― 儘に敗北せよ
―― 儘に勝利せよ
―― それらは全て我が糧、我が愉悦
誰しもが理解する。
自分たちが召ばれた理由は、神の娯楽である事を。
―― 好きにやりたまえ
―― 我は塔の果てにて汝らを見ている
―― 汝らの健闘を期待する