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序章 第1章 救出

主人公設定

シャルロット

ナイトメア(人間)女 16歳

魔動機師

器用 19+3

敏捷 20+3

筋力 10+1

生命力13+2

知力 25+4

生命力19+3

HP:25 生命抵抗力:6

MP:31 精神抵抗力:7

魔物知識 4、先制 4

命中 3(シューター)+3=6

回避 0(該当技能なし)+3=3+1(ポイントガード)

魔力 8+1(ジェザイルにより加点)

防御点 0


経験値:1000 レベル4

マギテック 4

シューター 3

スカウト  1


スキル

異貌、弱点(土属性)

マギテック技能(レベル4まで)

精密射撃、鷹の目


言語

交易共通語 会話◯ 読む◯

出身の地元語  ◯   ×

魔動機文明語  ◯   ◯


武器:ジェザイル(ガン、両手持ち、装弾数3、Bクラス、射程50m)

防具:ポイントアーマー

マギテック小×2、中×1、大×1


所持金1000Gガメル




序章「出会い」

 人間から生まれたナイトメアの少女。人間に限らず、リルドラケン以外から生まれるナイトメアは、頭に角があることも相まって、忌み嫌われる。

 それはシャルロットも同様であった。彼女の家は貧しく、4歳の時に奴隷商に売られることになる。

 しかし、その独特の綺麗な容貌、色白い肌、希少性などから中流貴族であるジョシュア・ハルバート伯爵は、売られて数ヶ月も経たないうちにシャルロットを引き取ることとなる。

 しかし、貴族らしい傲慢で強欲な出世心も強いジョシュア伯爵は、シャルロットが失敗をするか、いらだちが募ったときには、シャルロットをしばく、蹴るなどの暴行を加えることが続いていた。

 いつのころだったか。もはや記憶も定かではない、自分のような人間の成り損ないである、卑しい生まれである自分は、このような境遇であったとしても幸せなのだと諦めていたあの夏のあの日、あの青年はやってきた。

 そう、あれはたしか彼、エリオス・ルスキウラ公爵が公務の遠征で、ハルバート伯爵邸に宿泊した日の事だった。彼は、皇帝の第5男であり、当時王位継承権第6位という貴族の中でも頂点にあたる人だった。

 当時、10歳になろうかとしていた私は、ナイトメアの種族であること、暴力を悟られないためなどの理由から、最奥の離れから出ないよう命じられていた。

 埃っぽい物置の隅に、私はうずくまっていたように思う。外は信じられないほどの青空で、私は夏の日差しに伴う室内の異様な暑さに朦朧としていた。ご主人様、いや、ジョシュアは私がどうなろうと知ったことではないのだろう。なんたって今日は将来、国の極めて最上に近い位置に君臨するであろう、紛れもなく伯爵といえども雲の上の存在なのだから。

 死んでもいいかもしれないと思った。でも、暑さ、喉の渇き等の苦しみは嫌だと思った。

 私は朦朧とする意識の中、禁じられている室内唯一の窓を開いた。涼しい風が頬を撫でる。

 しかし、もう限界だった。私は無意識のうちに外へと身を乗り出し、鈍い音とともに外へと崩れ落ち、意識を失った。

 どれほどの時間がたっただろうか。頬に生暖かいような、くすぐったいような不思議な感触が何度も繰り返される。

目を開けると、犬、いや狼のほうが適切だろう。大きな獣が、何度も私の頬を舐めていた。

 ああ、私はこの狼に食べられるのだろうか。でもそれでもいいかもしれない。だって、私でも狼の命を繋ぎ止める事ができるのだから。もう諦めた命ならば、せめて無駄ではないと思いたかった。

 私の意識は、ゆっくりと深いまどろみに包まれていった。


 幸せ、人は無意識の夢のなかでも相応の確立で、幸せな夢をみる。例えばそれが苦悩に満ちた苦々しいものであっても、それが幻だと分かっていても、幸せを感じてしまう。

私は、温かな布に包まれていた。目を開くと、それに気づいた母が、優しく頭を撫でる。母だけは、ナイトメアという差別対象の証である角に何の嫌悪もいだかなかった。

 しかし、急激な展開を見せ、夢は悲壮な色彩を帯びる。

 私はもう何も見たくない。感じたくない。拒絶したいという思いにかられる。私を見下すたくさんの眼が、卑下する雑音が、私を傷つける無数の苦痛が、思考を停止する方向へと導く。

 もう嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

 た、すけ、て……。


 その時、また温かな感触が私を包む。布などではない、そのもの自体が温かさを持っているような。そしてくすぐったい。


 私がゆっくりと目を開けると、そこは見知らぬ天井だった。しかし、思わず目を奪われるほどに細かく、優美な装飾が施されている。

 ふと、頬を一定の間隔で、生暖かい感触が繰り返される。

 私はゆっくりとその方向を見つめる。そこには巨大な狼が横たわっていた。私と目があったにも関わらず、彼?は行動をやめなかった。その目は優しいように思えたから、怖くはなかった。

 何か声をかけようと思ったが、かすれた音がでるだけだった。身体もとても気怠い。なんとか、腕を動かし、狼を撫でると、彼は自分の頬を私の顔にこすりつけ、クーンと鳴いた。

 狼はそのうち、ゆっくりとした動作で立ち上がり、のそのそと部屋を出て行った。


 しばらくして、シャルロットの意識がはっきりとしてきたころ、ゆっくりと扉が開き、先ほどの狼、続いて金髪の男性、その後から男女が続いて入ってきた。金髪の男性の服装は遠目からでも上質のものであることが伺われた。その後に入室した男性は鎧を着ており、女性の方はメイド服に身を包んでいる。

 金髪の男性が私の横たわっている寝台の前に腰をかがめ、狼がその脇に伏せた。

 「目が覚めてよかった。気分はどうかな?」

 金髪の青年が柔らかな笑顔をこちらに向ける。

「ぁぅ……」

 返事をしようとするが、のどが渇いているらしく、かすれた音しか発することができない。

「のどが渇いているのかな? ナターシャ、水を……」

 背後に控えていたメイド服の女性が瓶に入った水を小皿に移し、私の口元に当ててくれた。冷ややかな心地良い感覚と共にあっという間に飲み干すと、なんとか声を出すことができるようになった。

「ここはどこでしょう。私はどうしたのでしょうか」

 私の問いかけに、金髪の男性が表情を崩さず話す。

「君はハルバート伯爵邸の庭の隅に倒れていたんだ」

 そうだった。私は言いつけを破ってしまったのだ。自然と身体に震えが走る。他者からは分からないはずだったが、狼は雰囲気を察したのか、ペロペロと顔を舐めてくれる。

 男性が狼を撫でながら続ける。

「この狼はロイと言うんだ。こいつが君を見つけたんだよ」

「助けていただき、ありがとうございました。あの、貴方様はどなたでございましょう」

 その問には、背後の鎧の男性が、厳つい口調で答えた。

「この方はエリオス・ルスキウラ公爵であらせられます。貴公は皇帝陛下のご子孫と話しているのだぞ」

(皇帝のご子息!!!)

 反射的に自分がふかふかの布団に、しかも横たわったまま話してしまっていることに気づいた。

 私は、動かぬままの身体を無理やり動かし、床にひざまずこうとした。

 しかし、思い通りに動かない。身を起こすだけで結構な時間がかかってしまい、公爵様が慌てて肩を支えてくださった。

「無理して起きなくていい。君は今は体調を回復することだけを考えるんだ」

 そして、鎧の男性に振り向く。

「ザルディン、彼女が怖がってしまうじゃないか。言葉を選びなさい」

「はっ、申し訳ありません」

 ザルディンと呼ばれた鎧の男性が頭を下げる。

 私は、まさか公爵様とは知らず、しかも自分がなんの礼も取れない事態に申し訳なさでいっぱいになった。

 公爵様やザルディンらが一様に驚きの表情を浮かべる。

公爵様が私の目元に手を伸ばし、優しく拭ってくれた。

 ……どうやら私は泣いていたらしい。

「そんなに緊張しなくてもいいんだよ」

 そう言いながら、エリオス様は私の頭を撫でてくれた。本来なら、娘は頬を染める場面かもしれないが、私は青ざめた。私は人間と大差ない容姿をしているが、ナイトメアだ。頭にはその生まれを証明する角が2本生えている。

 しかし、公爵様のご好意を無下にするわけにいかず、私は固まるしかなかった。

 手が角に当たる感触がある。

だが、エリオス様は、気にすることなく、表情も柔らかなままだ。

「公爵様、そろそろ次のご公務のお時間でございます」

 ナターシャと呼ばれたメイドが、穏やかな口調で告げる。

「そうか。それでは、彼女の介抱は君に任せてもいいかな?」

「はい。仰せのままに」

 その時、ロイがクーンと鳴き声をあげた。

「ロイも彼女のそばに居てくれるのかい?」

「ワン」

 公爵様は頷くと再びこちらを向いた。

「君は何も気に病むことはない。今は体調を回復することに専念するんだ。いいね?」

「はい」

 返事をすることが精一杯だったが、公爵様は気に留めることなく、部屋を出て行った。続いてザルディンも退室する。

「さて、それじゃあ貴方のお名前を教えてもらえる?」

 ナターシャの明るい声に先ほどの貞淑な印象とのギャップに驚きながらもしっかりとした口調で名乗る。

「私の名前は、シャルロットです」


第1章 救出

 私が、休養させていただいている間、私の周りの環境は急展開をみせていた。ハルバート伯爵は人権保護に関する法律に違反したとして、男爵に降格された。後ほど聞いた話だが、私がナイトメアという事態が論議されもしたが、エリオス公爵が反対派をねじ伏せ、私を擁護してくださったようである。

 その後、公爵様は私をメイドとして採用くださり、12歳までは、ナターシャ様のもとでご指導をうけることととなる。

 だが、唐突に事態は変化する。ジェラルド・ルスキウラ王子(次期国王候補第1位が急死したのである。毒殺を疑われたが、確たる証拠があがらなかった。事故だと主張する声も多く、その争議は半年以上続くこととなる。

 争議が落ち着いた頃、今度は第2王女が馬車で移動中事故死。第3王位継承者である皇帝の3男、ラルク公爵が殺害される。暗殺犯はすぐに捕まったが、その背後関係は不明のまま。穏健派で非常に人気があった王位後継者の死は非常に国内を揺るがせた。近隣諸国の中でも、非常に安定した国家で知られていたルスキーラ公国は、変動の時代に突入していく。

 私は、以前との環境の変化を感じ取っていた。エリオス様はご公務が以前の3倍以上忙しくなる。さらに、護衛の数も明らかに増加し、ロイはもちろんだが、エリオス様も不快そうな一面も垣間見せていた。

 私は、このまま安穏とメイドの仕事をしていて良いのだろうかといつしか考えるようになった。今の私の周りの環境は非常に恵まれたものだということは理解している。自分がナイトメアだということは、エリオス様、騎士筆頭のザルディン様以下数名の騎士、ナターシャ様を始めとする数名の同僚は理解し、他の人間と変わらず接してくれている。

 だが、だがそれでも、他の王族の方々のようにエリオス様が命を落とすかもしれないと思うと、非常に胸騒ぎを覚えてどうしようもなくなるのだ。それは、恐れ多いことだが、おそらくエリオス様に特別な感情をいだいてしまっているのだろう。

 身分が違いすぎる身勝手な感情は、私だけの問題で済むことではない。決して、明かしてはいけない感情なのだ。

 私は非力な女だが、幸いナイトメアは戦闘力に優れ、冒険者になるものも男女ともに多い。私もいざというときに、大切な人を護れるようになりたい。それは、私がこれまでの人生でいだいた欲求の中で最も強いものであり、だんだんと日々強くなっていくことに抗うことはできなかった。

 私が、戦闘術を身につけたいのだと発言すると身近な人々は揃って反対した。ナイトメアでしかも戦闘力があるということになれば、それはなんの根拠もなしに誤解を生むことが容易に予想されるからだ。

 エリオス様は私に問われた。何のために力を欲するのかと。

 私は、守られるばかりではなく、大切な人々を護れるようになりたいからですと述べた。エリオス様の表情は今まで拝見した中で一番怖いものだったが、なんとか了承を得ることができた。

 条件としては、女性として特別な扱いはしないこと。

 騎士団全員にナイトメアであることを明かした上で、全員に了承をとること。そして、騎士団に所属すること。

 なんとか許諾条件を得るのに3つの月を要したが、私はなんとか新人騎士の要件を満たす事ができたのだった。

 騎士の体系は各自治領ごとに独立している。領主ごとの騎士たちは国を守る同志であると同時に、ライバルでもあるのだ。

 エリオス様のかかえる騎士団は、堅実な気風で有名だ。噂や容貌で判断はしない。彼らが重要視するのは騎士の誇り、強さ、何よりエリオス様への忠誠心だ。

 それから厳しい訓練は、ついていくのがやっとだったが、私はエリオス様への想いが私を支えていた。

 私は、マギテックという古代文明時代に作成された宝石のような物質を活用し弾丸で攻撃したり、バイクを作成する魔動機師(技能名:マギテック)を選択した。後方からの支援や情報の伝達、時には狙撃による暗殺を行う。万能なサポートタイプだ。

 私は筋力は普通の娘程度しかなかったが、幸いマギテックとしての適正は十分だったようだった。

 偶然エリオス様とすれ違う機会があった。私は騎士の礼に従い、頭を下げ、視線を避ける。彼はすれ違う際、足を止め声をかけてくださった。

「頑張っているようだね。期待しているよ」

 去っていく足音を聞きながら、出会った頃の優しい言葉に私は必死で涙をこらえていた。その言葉を糧に、どんな困難にも挑んでいけそうな、そんな気分だった。



 3年と少し後、私は16になった。ナイトメアの慣習では、15で成人扱いされるが、騎士団の中でも、なんとか一人前と認められるようになっていた。いくつかの戦いも経験し、魔動バイクも作成することができるようになったことから、迅速さを要求される任務の適用も増えてきていた。

 時代は、私が騎士を志した時代よりもさらに悪化している。皇帝は死去し、第2王子であるラルカスが王位を継承。一連の王族の不幸の裏には東の隣国、ダーナイト連合国が糸を引いているとして、宣戦布告。一気に臨戦態勢に突入した。


 私はダーナイト連合国の密偵が城下に入り込んだとして、その排除を目的とした任務のサポート役として参加していた。敵は2人。室内に私がスモークボムを発射し、視界を奪った隙に、騎士ファイター2名と騎士(グラップラー(格闘家))が突入し、制圧は完了した。

 スパイの一人は死亡、もう一人は行動不能だがなんとか一命を取り留めた。

私は犯人の護送に伴い、事態をザルディン様に報告すべく、魔動バイクを走らせる。

 任務の成功を報告する。いつもの簡単な任務のはずだった。

 異変に気づいたのは、城門に近づいたときだ。いつもは複数人の見張りが立っているのに、誰の姿も確認できない。

 バイクに乗ったまま近づくとライトの先に見慣れない物体が浮かび上がる。

「キャッ!」

 そこにあったのは死体だった。複数の死体が、目立たないよう端に寄せられている。

 明らかな事態だ。私はバイクを降りることなく、バイクを走らせる。

 城の入り口には、人が複数人立っていた。


魔物知識判定(目標値5)

シャルロット:4(初期値)+8(六面ダイス×2)=12(達成値)>5 成功!


 私は、入口の前にいる者達が、ダーナイト連合国の軍服を着ていることに気がつく。

 兵士たちはこちらに気がつくと、ある者は剣を抜き、ある者は弓を構えた。

「突っ切る!!」


兵士C 弓兵

命中判定(-6):9

回避判定:7+1 失敗…

ダメージ判定:5+4=9

シャルロットHP(16/25)


 兵士A,Bは、バイクの勢いで怯んだ。

 兵士Cの矢が右腕に命中する。服を容易く貫通し、右腕に深く突き刺さる。

「クッ!」

 こんなところで止まる訳にはいかない。エリオス様を、エリオス様をお助けしなければ。

 バイクは速度を落とすことなく、城内へと突入する。

 この時間は玉座におられる。玉座は2階正面奥!

 バイクはまっすぐ階段を駆け上がり、正面の扉をぶち開けた。

 豪華な装飾が隅々まで施された広い空間。その奥に玉座が鎮座している。何度か入室したことはあったが、今は荘厳さに違和感を感じる。

 部屋の中には十数人の兵士が、玉座を取り巻いていたが、シャルロットのバイクに驚き、慌てて道を開けた。走り抜けたその先にはエリオス、至る所から血を流し、うずくまっているザルディン騎士隊長。その後ろにナターシャ様を始めとした顔見知りのメイド数名が震えながら立っていた。

 バイクは後輪を滑らせ、敵と向き合うようにして停止した。

 崩れた隊列は、あっという間に修復され、彼らに戸惑いは見られない。

「貴様は、何者だ」

 兵士の最前列にいた、他とは少し服装が異なる男が口を開いた。司令官だろうか。

「貴方が司令官ね。こんなまねをよくも!」

 私は愛銃のジェザイルを男に向ける。

「やれやれ。年端のいかない娘を徴兵するとは。この国はよほど人材不足とみえる」

 私が反論する前に、ザルディン様が立ち上がりながら大声で話す

「こんなヤツに構うな。シャルロット! 貴様は騎士として自分のやるべきことを全うしろ!!」

 背後に視線を向けると、ナターシャ様が無理やりエリオス様をバイクの後方に乗せる。

「エリオス様。今はどうか、脱出を! 必ず勝機はありましょう」

 エリオスは苦渋の表情で渋っていたが、シャルロットの腰に手を回した。

「行けーーー-!!!」

 ザルディンが兵士の隊列に攻め込んでいく。一振りで二人を斬り殺し、返す刃でもう二斬り裂く。

 その瞬間、ザルディンの横に隙が生じた。

 私は一気にためらうことなくアクセルを全開にし急加速する。

 ザルディンが振りぬいた直後にその脇をバイクが来るとは予想できなかったようで、敵は何も対策が取れないようであった。兵士たちの怒声と悲鳴の合間から、確かに、いきろ、という声を聞いたような気がした。

 バイクはあっという間に城内を駆け抜け、闇夜に紛れた。エリオス様は、何も発することなく、私は淡々とバイクを走らせた。ただ、私の腰に手を回された感触だけが、エリオス様のご無事を確認する術であり、私は、騎士として、女として、愛おしく想い、焦がれている人を助けられた喜びを味わっていた。正直、私もそう思わなければ、崩れ落ちてしまいそうだったのだ。


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