ブルースカイ
君がこの世に別れを告げることを決めたのはほんの数時間前。
この世界は君には窮屈すぎて生きにくいことを知っていたから反対はしなかった。
君はとても安らかな顔をしていて安心したんだけど、煙草を吹かしたままその背中を見つめる僕は見送る人としてどうなんだろう。
そうは思っても僕を選んだのは他でもない君だからちゃんと見届けなくちゃね。
君は一度振り返って笑った。
小さく手を振る君に僕は片手をあげてみせる。
澄んだ青に感謝する。
せめて晴れていてよかった。
ぼんやりした空気も泣いてるような空も君には似合わない。
細い体がゆっくりと傾いでいく。
足が宙に浮く。
瞬間。
「またね」
そのときの君の顔と言ったら。
君はこの世界に絶望していた。
全てのものが嫌いで、全てのものが君を嫌ってると思ってた。
僕を選んだのだって僕がその筆頭だとそう思っていたからなんだろう?
だけどどうだ。
君が選んだ僕はあろうことか笑った。君の未来を望んだ。
そのときの、君の、顔と言ったら。
あぁ、ほんとうに。
澄んだ青に感謝した。
落ちていく君の絶望さえ過ぎた表情をはっきりと見ることが出来たんだから。
ばいばい。
さよなら。
なんでもいい。
今は別れの言葉をあげよう。
君はただ後悔すればいい。
君が消えたところで世界は今日も穏やかだ。