現実×A
「半日も練習すれば分かる。奴らBグループなんざ見ちゃいない。なぁ柘榴」俺の隣の奴が遠くのAを見ながら文句を言う。我心とは真逆の顔立ちで、日に焼けた異国風の肌をしている。目も奥に深い感じで髪も短い。確か樺戸とかいう名字だった気がする。決勝戦にいつもいるから何となく覚えていた。ちなみに奴というのは、今Aグループにこれでもかというほどアドバイスを与えている指導者のこと。今は自由練習のため、一グループに一人ずつついているわけではなく散らばってアドバイスを送っている。樺戸はその指導者がAグループに集まりすぎていると言いたいのだろう。
「そうか?」そうとも思えない……いや、そう思いたくないだけか。 本当は俺だってあの集団の中にいたはずなんだ。
「お前明るいな!てっきり俺は落ち込んでると思ったのに。なんたって桐生柘榴といえば英雄だもんな」そう思うならその言葉を使わないで欲しい。だからと言って、俺だって落ち込んでるなんて堂々と言えないけど。
「お前は?」
「聞くなよ。それより聞いたか?四時からAと合同練習だってよ」初耳だ。でも、チャンスであることには違いない。AとBに何の差があるのかはっきり見せてもらおうか。
「今からA・Bの合同練習を始める。礼!!」A担当の指導者が号令をかける。合同練習だというにも関わらず一人しか指導者はいない。B担当の指導者も近くにいなかった。そのAの担当者も、雰囲気やその太った体型から陸上のコーチとはとても思えない。対してBの生徒はそんなことも気にせず、体操をもう一度してみたり、跳ねてみたりして今か今かと自分の出番を待っている。しかし、そうして始まった合同練習が思わぬ結果を招こうと、Bの誰もが予想できなかった。
「嘘だろ……はっ」乱れた息、Bの誰もが目を疑った。AとBの差。それは比べられるものではなかった。
「柘榴、お……前抜けると思っ……たろ……」樺戸が声を絞り出すように言う。Aは未だに練習しているし、指導者も絶え間なく悪い点を指摘している。Bで立っているのは柘榴と樺戸と数人の男子だけだった。
「よくBもここまでついてこれた!!アドバイスすることは何もない!!これで合同練習を終わりとする!!」
「アドバイスすることは……何もないだと?」柘榴が拳をわなわなと震えさせて呟いた。
「そうだ!!ついてこれただけでも凄いと褒めている!!」
「どこがだよ!!褒められるもんじゃねーだろ!!現実見ろよ!!」樺戸も吠える。
「現実見るのはお前だ!!AとBの差が明らかに分かるだろう」指導者は鬱陶しいとでも言っているような目を向けた。Bのために時間なんて使えないと言わんばかりの視線を。
「樺戸……」樺戸の近くで倒れている生徒が微かに声を上げた。
「一緒に練習できただけでも良かったと思おうよ……」その言葉に、樺戸は何か言い返そうとしたが、何を思ったのかクルリと来た道を戻っていった。倒れている生徒たちも徐々に立ち上がる。
「ほら、お前も戻れ」柘榴に向かって厳しく言い放つ指導者。 柘榴は何も言い返せないまま立ち去るしか術がなかった。自分ができないのが問題なのだ、指導者に何を言っても仕方がないという想いを残してー
お待たせしました。ついにAグループとBグループの差がはっきりしましたね。これからが本番ですね。ついに我心兄が出る……かも!?
ちなみに私は8月のはじめに合宿があります。陸上部とは全然関係ない部活ですが楽しんで行きたいです☆