合宿×試験
多少のトラブルの後、なんとか陸上部全員が合宿場に集まれた。我心は結局、先生の車に乗っけてもらった。
「十五分の遅刻だぞー。ま、俺はお前に陸上部に入ってもらうために、俺の点数を上げてもらおうと思っただけで、何のメリットも無しに待ってたわけじゃないからな」と、言いながら乗せた顧問に、笑いを噛み殺した柘榴。お前ツンデレだったのかよ!本当に点数上げたいのなら言わなければいいものを。分かりやすい性格だぜと、柘榴でさえ思っていた。当の我心は笑うでもなく、起こされたことをまだ根に思っているのか仏頂面のままだった。
まず合宿参加者がグラウンドに集合。周りは木で囲まれているというのに、驚くほどの広さ。
屋内プールやテニスコート、体育館など設備も充実。そのためか、合宿参加者も多かった。
「皆さんこんにちは。この合宿の……」と、1番偉そうな先生が話した後、設備の管理人やら何やらが話し、やっと合宿本体についての話が始まった。その頃には、我心だけでなく、隼都や柘榴も寝ていたために、慌てて先輩が起こす。
「まず始めに行うことですが、今から一人一人タイムを測り、速さごとにチーム分けをします」いかにも体育会系の教師が淡々とした口調で話す。
「速い順にA、Bとグループに分けていって計二十三チームに分けます。参加者が四百八十七人なので一チーム大体二十人だと思っていて下さい。いわゆる試験です。
皆さん頑張って下さい。チーム替えは今日、明日、明後日の三回です。今日は夕方タイムを測ります。上を目指していって下さい」
そうして合宿の説明は終わった。燃える者や緊張している者、ハイテンションになってる者など反応はまちまちだったが、もちろん柘榴ははりきる側だった。
「絶対A行くぜ」
「ざっくん流石やなぁ。俺はどこいくんやろ?宮城は……て宮城は見学か。つい宮城見ると、ざっくんと走ってるイメージあるから忘れてまうわ」
「順応すれば?ってか見学って何すんのって感じ」
「そりゃあ決まってんだろ」柘榴がにやっと笑って顧問を指さす。
「アイツの奴隷☆」
「は?っていうか随分愉快そうだけど」
「さぁね~」嫌みったらしく隼都と顔を見合わせにやにや笑いを続ける柘榴。
「こうしてると柘榴と我心って似たもん同士やなぁ。と、いうより柘榴が我心に近づいてるんやないの?そんなニヤニヤ笑い、前はせぇへんかったの…いてっ」隼都が最後まで言い終わる前に柘榴が隼都の頭をはたく。
「知るか。コイツにはなりたくねーよ」
「俺に似るとか百年早いから」互いに嫌味を言っている時点で、もう似ている……というのはあえて言わなかった。