08 いざ森へ
ボクたちは壁の外に出た恐怖を感じながら、東の森を目指す。ここが今回の狩場である。
森の外観は鬱蒼としており、森の中は整備された様子がない。腐葉土で足が取られるし、まだ昼前だというのに薄暗い。
「行くぞ……!」
まるで自分に言い聞かせるようにアベルが言うと、クレトを先頭に森の中に入っていく。
そして、少し開けた所に出ると、ボクたちはここはキャンプ地として狩りを始めることにした。
獲物を求めて集団で森を移動すると、どうしてもモンスターにバレてしまうことが多い。それに、森の奥に入るということは、それだけモンスターとの遭遇率も上がる。モンスターと戦っているのに、違うモンスター集団に襲われる危険もある。
そこで、森の浅い場所に安全なキャンプ地を決め、そこにモンスターを連れてくるという算段だ。これならみんなで森の中を練り歩くよりも安全だろう。先人の知恵だ。
モンスターをキャンプ地に連れてくる役、釣り役はダリアに決まった。たしかに彼女は遠距離攻撃ができるし適任だろう。
でも、さすがに初めて街を出た少女にモンスターの蠢く森の奥に一人で行けというのは酷だ。
「ボクも付いていっていいかな?」
「お前が?」
アベルが訝しげにボクを見ていた。
「ボクも釣り役の経験があるし、少しなら役に立てるかもしれない。もちろん、ダリアが必要ないって言うなら残ってるけど……」
「ううん! 一緒に来て! お願い!」
ダリアも不安だったのか、ボクの提案を受け入れてくれた。
「ダリアの邪魔するんじゃねえぞ?」
「気を付けてね」
「二人とも、無事に帰ってきてくださいね」
ボクとダリアはみんなに見送られる形で森の奥へと入っていった。足元はふかふかした腐葉土で頼りなく、視界は薄暗い上に木に邪魔されて遠くまで見渡せない。率直に言って、かなり怖い。いきなりモンスターに出会う可能性もあるからね。
しかも、周りに気を付ければいいというわけじゃない。
「周りだけじゃなくて、木の上なんかも注意するんだ」
「木の上?」
「そう。ゴブリンが木に登っている可能性もあるし、ジャイアントスパイダーが木の上から降って襲ってくるかもしれないからね」
「うげぇ……」
ダリアが心底嫌そうな声を出す。
「でも、ありがとね。付いて来てくれて。あたし一人じゃたぶん不安に押し潰されてたと思う……」
「気にしないで。最初はだれでも不安を感じるものだし」
「はぁー……。こんなんで冒険者続けられるのかなぁ……」
「そういえば、ダリアは何で冒険者になったの?」
少しでもダリアの緊張を解そうと小声で話しながら森を散策する。森の中は空気の通りがなく、ムシッとしていた。
「もちろん、セシリアと一緒にいるためよ。あたしん家はちっちゃな商会なんだけど、教会の孤児院に出資してるの。それで、あたしはそこでセシリアに出会ったの。もう運命だと感じたわ。でも、セシリアは仕事が見つからないし、ウチもそこまで裕福じゃないから、セシリアを雇ってあげることもできないのよね。だから、二人で冒険者をやろうかなって」
「へー。それは……すごい覚悟だね」
冒険者は死と隣り合わせの職業だ。孤児だったらしいセシリアは仕方がないとしても、自分まで冒険者になるダリアの覚悟は相当なものだ。これが本当の友情の姿なのかもしれない。
ボクが『タイタンの拳』のメンバーに感じていた友情なんて、セシリアとダリアの前では薄っぺらすぎて恥ずかしいくらいだ。
それにしてもそうか。セシリアも孤児院の出だったんだ。なんだか親近感が湧くな。でも、セシリアみたいな綺麗な子いたかな?
まぁ、入れ違いの可能性もあるし、エスピノサの街にも孤児院はいくつかあるから、別の孤児院だったのかもしれない。
「まあ、パパとママには反対されたけどね。でも、あたしにとってセシリアは何より大事だったの。それに、冒険者といえばエスピノサの花形じゃない? どうせやるなら冒険者かなって。【弓聖】のギフトもあるしね。それで、二人して大金持ちになるの。夢があるでしょ?」
そう言ってニカッと屈託のない笑みを見せるダリア。
この妙に擦れたところを感じないのは、ダリアの両親が大事に育てた証なのかもしれない。それを思うと、ダリアの両親がかわいそうにはなる。
もしかしたら、冒険者にならない方がダリアも幸せだったかもしれない。
もうすでに怖い思いをしているのだろう。足を細かく震えさせながらも、でも弱音を吐かないダリアを見ていると応援したくなった。
「いい夢だね。叶うようにがんばろう。ボクも応援するよ」
「ありがと。ペペって優しいね」
その後、二人で森の中を移動していると、なにやら話し声のような音が聞こえてきた。
「これって……」
何かを言い出そうとするダリアに静かにとジェスチャーする。
耳を澄ませると、さっきよりもはっきりと声が聞こえてきた。
でも、話している言語がわからない。言語というより鳴き声に近い。ボクの勘が間違っていなければ、たぶんゴブリンの声だ。
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