06 ゴブリンに負ける弱いパーティ
「じゃあなにか? お前は、俺たちがゴブリンにも負けるような弱いパーティだって言いたいのか?」
ボクの言葉が気に障ったのか、アベルがボクをギラついた目で睨んできた。
「そうじゃないよ。でも、本当に強いゴブリンはいるんだ。それこそ、『タイタンの拳』でも苦戦するようなゴブリンもいるんだよ」
「嘘だろ。『タイタンの拳』がゴブリンに苦戦したとか聞いたことないぞ?」
「まあまあ、アベル。実際に『タイタンの拳』にいたペペもこう言ってるんだし。それに、経験者の言葉は聞くべきだよ」
「でもよー」
納得がいかなそうなアベルだったが、クレトがやんわりと収めてくれる。
正直、助かった。ボクだって好きで喧嘩したいわけじゃないんだ。ゴブリンを甘く見ていそうだったから釘を刺したかっただけで……。
「私も経験者であるペペさんの言葉を重く見た方がいいと思います。たしか、これから行くのはすぐ東の森でしたよね? そこではどんなゴブリンに気を付ければいいでしょうか?」
「そうだなぁ……」
ボクはセシリアの質問に対して、三年前の『タイタンの拳』結成直後のことを思い出していた。あの頃苦労したのは……。
「ゴブリンアーチャーとゴブリンメイジかな……? 名前の通り、弓を持ってるゴブリンと魔法を使うゴブリンなんだけど、どちらも飛び道具だから対処が難しいんだ。特に、ゴブリンメイジの魔法は威力があるからね。下手すると怪我人、最悪の場合、死人も出る」
「死……」
そう呟いたのは誰だっただろう。
さすがに死ぬ場合もあると聞けば緊張するものなのか、部屋の中がピリッとした緊張感に満ちた。いい傾向だ。
「対処法はあるのですか?」
「うん。あるよ」
ボクはセシリアに頷くと、ダリアの方を向く。
すると、ボクが言わんとしていることがわかったのか、みんながダリアの方を向いた。
「え? あたし!?」
「そうだよ。同じ飛び道具が使えるダリアが対処するのが一番かな」
「対処ってどうすればいいの!?」
ダリアがテーブルに身を乗り出して訊いてくる。
「最初は相手のゴブリンの構成をよく見るんだ。ゴブリンの中にゴブリンメイジやゴブリンアーチャーがいたら、優先的に狙う。優先順位としては、ゴブリンメイジが一番、ゴブリンアーチャーが二番、その他のゴブリンは三番だよ」
「んー? メイジ、アーチャー、その他ね? え? 矢を撃てばいいの?」
「そうだよ。それで倒せれば理想だけど、ゴブリンの攻撃を止められたらいいね」
「ふーん?」
頭の中でシミュレーションしているのか、ダリアが上を見ながら難しい顔をしている。
そして、ボクを見ると真剣な表情で口を開く。
「そのメイジとアーチャーって見ればわかるの?」
「メイジは杖を持ってるし、アーチャーは弓を持ってる。最初は普通のゴブリンと見分けられないかもしれないけど、たいていメイジもアーチャーも普通のゴブリンの後ろにいることが多いから注意してみて」
「んー? あたしにできるかなー?」
「最初はゴブリンを見てもすぐに矢を撃たずに、メイジとアーチャーを探すようにしたらいいと思うよ」
このあたりは実際に経験しないとわからないだろうな。
失敗することも加味して、撤退の合図も決めておいた方がいいかもしれない。
「あとは撤退の合図を決めておいた方がいいかな」
「ゴブリン相手に逃げるのか?」
またアベルが険しい目でボクを見てくる。
「うん。場合によっては逃げた方がいい。相手のゴブリンが五匹くらいまでならいいけど、百匹とかいたらさすがに逃げないと死んじゃうよ」
百匹のゴブリンを想像したのか、アベルが苦い顔を浮かべている。
「それに、相手がゴブリンだけとは限らないしね」
「それはどういうことでしょうか?」
セシリアが首を傾げてボクを見ていた。
「例えば、オーク。オークとゴブリンは不思議な共生関係を作っていて、ゴブリンの用心棒にオークが付いていることがあるんだ。それに、東の森にいるモンスターはゴブリンとオークだけじゃない。ジャイアントスパイダーやジャイアントセンチピードとか昆虫系のモンスターもいるよ。こいつらはゴブリンよりも強いから逃げた方がいい」
昆虫系のモンスターの存在を初めて聞いたのか、セシリアとダリアは青い顔をしていた。
「昆虫系のモンスターは硬い外骨格が厄介だね。まぁ、昆虫系のモンスターは森の奥に行かないと普通はいないから、心配しなくてもいいよ。でも、モンスターの行動は予想不可能だから、見つけたらすぐに逃げた方がいい。そこで、逃げる合図を決めておきたいんだ」
「そういうことでしたか。私はペペさんの意見に賛成です」
「僕もやっぱり撤退の合図はあった方がいいと思うな。今回使わなくても、いつか使うことになりそうだし。ね? アベル」
「あたしもさんせー!」
「わーったよ。戦闘の開始前に戦うか逃げるか、俺が決める。それでどうだ?」
自分以外が賛成しているので渋々といった感じでアベルが頷いた。
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