05 臆病者は必要ない
「とにかく! 俺のパーティにそんな臆病者は必要ない!」
そう言ってボクを睨んでくるアベル。
悲しいけど、このアベルが特別なんじゃない。冒険者のほとんどがボクを嫌う理由。それはボクが戦闘をしないからだ。
もちろん、ボクとしては荷物持ちに特化した結果であって、前衛の邪魔をしないために行動したら、いつの間にかそうなってしまったというだけだ。
でも、冒険者はみんな命を懸けてモンスターと戦っている。そんな冒険者にとって、ボクのような存在は許すことができないようだ。だから、ボクの二つ名は『荷物持ち』であり、『腰巾着』なんだ。
「まあまあアベル、そんなに結論を急がなくてもいいんじゃないかな。荷物を持ってくれるんでしょう? それはありがたいよ」
気心の知れた仲なのか、ボクを睨みつけるアベルの肩を叩いてクレトが言う。
「そっちのセシリアとダリアだっけ? 二人はどう思う?」
「私は一度もペペさんの能力を見ずに決めるのは早いと思います」
「あたしもセシリアと一緒かなー。それに、荷物持ってくれるのってかなり便利じゃない? そういう人が一人くらいいてもいいと思うんだけど?」
「ね? 彼女たちもこう言ってるし」
「でもよー……。ったく、わかったよ」
渋々とだが、クレトの言葉にアベルが頷いてくれた。
「ありがとう。ボクもできる限りがんばるよ」
せっかくクレトがくれたチャンスだ。ボクもがんばりたい。
「じゃあ、次はパーティでの役割を決めよう。あとギフトの開示ね。僕は見ての通り、鎧を着てるし盾も持ってる。【強固】のギフトも持っているから、モンスターの注意を引き付けるよ。防御力には自信があるけど、攻撃力に関しては自信がないかな。そのあたりは助けてくれると嬉しい」
「俺はクレトと逆だな。攻撃力には自信があるが、防御力がない。俺のギフトは【大剣使い】だ。大剣の攻撃力アップと大剣のスキルを覚えるみたいだ」
そう言って自分の大剣の柄を自慢げに叩くアベル。ボクも冒険者として他の人のギフトを聞く機会がそれなりにあったけど、【大剣使い】などの○○使い系のギフトは特定の武器に成長ボーナスが付くギフトとしては下の方だ。でも、そこには不満などなさそうだった。
それがボクにはとても眩しく見えた。
「私は【治癒】のギフトを持っています。使える治癒魔法はヒールだけです」
「あたしは【弓聖】よ!」
「えぇ!?」
「マジかよ!?」
「すごい……!」
「ふふん!」
クレトもアベルも、そしてボクも驚きの声をあげてしまった。
その声が気持ちよかったのか、ダリアは胸を張って誇らしげにしている。
まぁ、ダリアが誇らしげになるのも仕方がない。彼女はそれだけすごいギフトを持っているのだ。【弓聖】をはじめ、○○聖のギフトはそれほど珍しく、かつ強力なギフトとして知られている。
そのすごさをボクは間近で見てきた一人だ。『タイタンの拳』のリーダー、イグナシオ。彼は【拳聖】のギフトを持っていた。その圧倒的な成長速度と攻撃力は『タイタンの拳』を一躍若手のナンバーワンに引き上げていった。
まさか、ダリアのギフトが【弓聖】だったとは。これは他のパーティが知ったら黙ってないんじゃなかろうか。なんなら、その成長速度を期待されて、誰もが知ってるような上級の冒険者パーティからスカウトが来るかもしれない。
「でも、あたしのギフトが【弓聖】ってことは内緒ね? あたしにとって強い冒険者パーティに所属するよりセシリアと一緒にいることの方が重要だから!」
ダリアにとって、セシリアと一緒にいることの方が大事らしい。それで有名冒険者への特急券を捨てられるのか。これが本当の友情なんだろうなぁ。
ボクはあまりに純粋な友情になんだか打ちのめされたような気分がした。
「まあ、俺としてもダリアにはパーティにいてほしいから誰にも言わねえよ」
「そうだね」
アベルの言っているように、ダリアを逃す手はないね。
でも、なんとなくボクとの扱いの差を感じて辛くなるよ。
まぁ、仕方ないんだけどさ。
「じゃ、そろそろ行こうぜ? 最初の獲物はゴブリンなんてどうだ? あいつら弱いらしいからな。俺たちでも大丈夫だろ」
「まってよ、アベル。まだパーティのフォーメーションとか決めてないよ?」
「そういうのは考えるものじゃねえだろ? 感じるものだ!」
「そうかなあ……?」
「前衛は俺たちだけなんだぜ? いつも通りでいいだろ?」
「それもそっか。じゃあ、いいのかな?」
アベルに押されるような形でクレトが頷く。
まぁ、前衛の二人がそれでいいならいいんだろうけど、ちょっと不安だな。たしかにゴブリンは弱いモンスターの代表と言ってもいいくらい弱いけど、たまに強い個体もいる。
「ゴブリンと一口に言っても、弱いのから強いのまでいるよ。例えば、ゴブリンシャーマンは魔法を使うし、中にはゴブリンチャンピオンなんてバケモノみたいに強いゴブリンもいるんだ」
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