04 自己紹介
「どうしてこんなことに……」
八等級ならば、同じような冒険者ランクの人々とパーティを組むことができ、上手くやればあと五日で金貨百枚を稼ぐのは可能かもしれない。
冒険者は強くなればなるほど報酬が多くなる傾向があるからね。
でも十等級じゃどうやったって無理だ。
「ペペさん個人の能力を勘案した結果としか」
そう言って含み笑いを見せる受付嬢さん。
それを見て確信した。ボクは冒険者ギルドに評価されていない。
少なくとも、荷物を持つ能力だけは評価されていると思っていた。でも、それもなさそうだ。だからこその十等級なのだろう。ボクの能力は初心者冒険者と変わらない。そういう判断がなされたのだ。
悔しかった。ボクの三年間はいったい何だったんだ……。
「同じ十等級の冒険者がパーティメンバーを募集しています。そこに行ってみるのはどうでしょうか?」
「はい……」
「こちらです」
不本意ではあるけど、騒ぎ立てても怖い警備員の人が出てきて叩き出されるだけだ。ボクは渋々受付嬢さんの後を付いていく。
案内されたのは、冒険者パーティがミーティングに使う小部屋だった。部屋の真ん中には長テーブルがあり、会話できるスペースとなっている。
部屋の中には、既に四人の人影があった。
茶髪の体の大きな少年。金髪の大剣を背負った少年。そして――――!
「あ!」
「え?」
ボクと銀髪の少女が同時に声を出す。まさかこんな所で再び出会えるなんて思ってもみなかった。
「あ! さっき死にかけてた人じゃん! 冒険者だったんだ」
よく見れば、銀髪の少女の隣には、さっきの赤髪の少女もいた。
「改めて、さっきはありがとう」
「いえいえ、お気になさらず」
頭を下げるボクと、応じるように頭を下げる銀髪の少女。
「あんた、どっかで見たことあるな……?」
金髪の少年がボクをジロジロと見ていた。自己紹介した方がいいかな?
「あれじゃない? 『タイタンの拳』の――――」
「あ! お前! 『タイタンの拳』の『荷物持ち』じゃないか! どうしてこんな所にいるんだ!?」
茶髪の少年が言いかけた言葉を遮って、金髪の少年が叫ぶ。
どうやら少年二人はボクのことを知っているみたいだ。
「それは――――」
「ペペさんは『タイタンの拳』をクビになり、冒険者ランクも十等級に落ちました。ですが、三年は冒険者をしていますし、経験と知識はあります。皆さんの良きパーティメンバーになってくれるでしょう。では、私は仕事がありますので、これで」
ボクの言葉を遮って受付嬢さんが言うべきことは言ったとばかりに部屋を後にする。
部屋には沈黙が降り立った。
この暗い雰囲気、どうすればいいんだろう?
「まずは皆さん自己紹介はどうでしょう?」
その時、銀髪の少女が提案する。
「さんせー! あたしたち、今日会ったばっかりだしねー」
銀髪の少女を援護するように赤髪の少女が賛成する。
「まあ、そうだな」
「うん。そうしようか」
二人の少年も異存はないようだ。
「では、まずは言い出した私から。名前はセシリア。見ての通り治癒魔法を使います」
「あたしはダリア! 弓を使うよ!」
神官服の銀髪の少女がセシリアで、弓を持った赤髪の少女がダリアか。
「俺はアベル。大剣使いだ」
「僕はクレト。盾と片手剣を使うよ」
波に乗るように二人の少年も自己紹介する。金髪の気の強そうな少年がアベルで、茶髪ののんびりした雰囲気の少年がクレトらしい。
次はボクの番かな。
「ボクの名前はペペ。魔法使いだ。使える魔法は――――」
「知ってるよ! 『荷物持ち』だろ?」
アベルが吐き捨てるように言う。ボクは何か彼の気に障るようなことをしてしまっただろうか?
「そのさっきから言ってる『荷物持ち』って何なの?」
少女二人はボクのことを知らないのだろう。不思議そうな顔をしてダリアが質問する。
「知らねえのかよ? こいつは荷物持ちしかしない、戦闘に参加しない臆病者だぜ?」
そこには明確にボクを蔑む意図があった。
そう。ボクが戦闘に参加したことは数えるほどしかない。『タイタンの拳』では、ボクの戦闘力よりもアイテムバックの模倣をすることが求められたからだ。
それに、ボクのギフトは時空魔法。時空魔法はとにかく燃費が悪い。攻撃手段としては不向きだ。
だからボクは武器を持って戦おうとしたんだけど、それは前衛の人たちの邪魔にしかならなかった。
この世界は、とくに冒険者はギフトがすべてだ。みんなギフトの力を使って戦っている。冒険者で前衛を張る人々は特にその傾向が強い。みんなギフトの力で強化された攻撃ができる。そんなところに戦闘向きのギフトを持たないボクが出て行ったところで邪魔にしかならない。
だから、ボクは自分のできること。荷物持ちに特化していった。それを臆病者と言われても、ボクにはこれしかできないんだ。
それに、ボクが荷物を持てば、その分みんなは身軽でいることができる。それがボクのできることだ。
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