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03 ギフトと冒険者ギルド

 成人の儀の時、人は神よりギフトと呼ばれる不思議な力を賜る。


 ボクが賜ったのは時空魔法のギフトだった。


 最初は大きな鞄くらいの容量しかなかったけど、今なら小さな家くらいならそのまま収納できるくらいまで成長した。


 それを考えれば、たぶん冒険者じゃなくて商人向きの魔法なのだろう。


 でも、ボクは商人にはなれない。商人になるには圧倒的に知識が足りない。


 例えば、行商人。彼らは土地によって物の値段が違うことを利用してお金を稼いでいる。


 しかし、ボクには何がどこでいくらで売れるかなどの知識がまるでない。


 こういう知識は、たいてい行商人の中で親から子に伝えられる。


 商売のタネだからね。絶対に他人に話したりしないだろう。


 親がいない孤児の自分には誰も教えてくれないし、自分で調べるには莫大な時間が必要だろう。


 それに、商人になるには最初に商品となるものを買わないといけないのだけど、ボクには元になるお金がない。


 じゃあ、商人に雇われるのはどうだろう?


 自分で言うことじゃないだろうけど、ボクのギフトは商人なら誰もが欲しがるような魔法だと思う。


 でも、商人の世界はとにかくコネと信頼だ。どちらも持っていないボクはたぶん使い捨てられるだけである。


 例えば、抜け荷。


 ボクの魔法を使えば、街に入る時の検問をスルーできる。商人の中には、ボクに違法な物を街に持ち込ませようとするかもしれない。


 もしそれがバレた時、トカゲの尻尾のように切り捨てられるのはボクだ。


 だから、ボクは商人の道ではなく冒険者の道を選んだ。


 選んだんだけど……。


「はぁ……」


 城塞都市エスピノサの大通りにある無骨な石造りの大きな建物。ここが冒険者ギルドだ。


 初心者歓迎とか、優しく指導とか書いてあるけど、全部嘘である。ボクはハゲた鬼教官のことを未だに夢に見るんだ。トラウマものである。


 まぁ、あれでお遊び気分や変な英雄願望は抜けたけどね。そういう意味では感謝してるよ。


 冒険者はとにかく死にやすい。同期がいつの間にか自分一人とかよくあることらしい。


 そういう意味では、三年も生き残っているボクは運がいい方かもしれない。


「最近、ゴブリンどもが騒がしいな」

「初心者どもが手間取ってるんだろうぜ」

「しっかりしてほしいもんだ」

「知ってるか? 教会がモンスター退治に本腰入れたようだぜ?」

「マジか。これで治癒魔法使いが増えると良いな」

「聞いたかよ? 東の森にドラゴンが出るって噂」

「ドラゴン? 見間違いじゃねえのか?」


 冒険者ギルドの中に入ると、ガヤガヤとした冒険者たちの声が聞こえてくる。


 冒険者ギルドの中には、酒場も併設されているから、みんな陽気でその声は大きい。


 昼間から酒を飲んでいる冒険者。まともに働いてる人から見れば眉を顰めるかもしれないけど、彼らは実はある程度成功した冒険者である。


 だって、働かずに飲み食いできてるんだ。十分成功者だろう。


「おい見ろよ、『腰巾着』様の登場だぜ」


 その中の誰かがボクのことを見てそう言った。


「あれが『タイタンの拳』の『荷物持ち』か……」

「あいつ自身がお荷物だっていつ気が付くんだろうなぁ」

「『荷物持ち』ってそういう意味かよ!」

「なんか見すぼらしくねえか?」

「覇気がないよな。他のメンバーはあんなに輝いてるってのに」

「仕方ねえだろ。『荷物持ち』に何期待してるんだよ?」

「ちげえねえ!」


 なんだかひどいこと言われている気がするが、それも仕方がない。ボクは新進気鋭冒険者パーティ『タイタンの拳』の唯一の汚点。『タイタンの拳』の『腰巾着』なんだから……。


 ボクは溜息を堪えると、冒険者ギルドにあるカウンターテーブルの方に歩き出した。


 カウンターテーブルには、三人の受付嬢さんが待機している。ボクはそのうちの一人に話しかけた。


「あの、すみません……」

「ペペさんですね? 『タイタンの拳』のリーダー、イグナシオ様からお話は聞いています」


 イグナシオはもう冒険者ギルドに報告したんだ。きっとボクが部屋の片づけをしている間に報告したのだろう。ボクを追放にしてあんなに嬉しそうにしていたし……。


 少し心が痛むけど、この痛みにも慣れていかないとな。


 逆に考えよう。イグナシオが報告してくれたということは、ボクから改めて報告する必要もないだろう。情けない報告する手間が省けてラッキーだ。


「そうですか。そういうわけですので、新たなパーティを紹介していただけると助かります」

「そのことなのですが、冒険者ギルドは今回のことを勘案し、ペペさんの冒険者ランクを十等級に下げることに決定しました」

「えっ!?」


 十等級といえば、初心者に与えられる等級じゃないか!


 ボクはこれでも三年も冒険者をしているし、冒険者ランクも八等級になっていたはずだ。


「ど、どうして……」

「ペペさん個人の能力を鑑みて、冒険者ギルドで判断を下しました」

「そんな……。十等級だとまともにクエストも受けられないんですよ!?」


 冒険者ギルドからの依頼であるクエストは、受けるのに実行可能であるという実力を示さなければいけない。それが冒険者ランクだ。


 それが十等級では実力も信頼もないも同然。そんな冒険者はまともなクエストを受けられるわけがない。

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