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「さて……」


 冒険者ギルドで持っていた素材やアイテムを換金したボクは、いよいよ『タイタンの拳』のメンバーが拠点にしている一軒家の前まで来ていた。


 これから、ボクはイグナシオたちに会うことになる。気は重たいけど、気負ってはいない。強いて言うなら面倒くさい。そんな不思議な気分だった。


 ガツガツとドアノッカーを鳴らすと、ブルーブラックの髪と鋭い視線が出迎えてくれる。『タイタンの拳』の斥候であるルチアだ。


「約束にはまだ時間があるはず。泣き言を言いに来たのなら帰って」


 相変わらず、ボクを嫌っていることを隠しもしない物言いだね。


「たしかに約束には早いけど、ちゃんとお金は用意したよ。イグナシオたちはいる?」

「……少し待て」


 ボクの言葉に少しだけ驚くような様子を見せると、ルチアは引っ込んでいった。


 しかし、こういった雑用はボクの仕事だったけど、ルチアの仕事になったんだね。まぁ、ルチアなら斥候だし、こういうことには慣れているだろうけど。


「入っていい」


 それからしばらくすると、ルチアから拠点に入る許可が出た。


「じゃあ、お邪魔するよ」

「……あなた、少し変わった?」

「そうかな?」


 そんなことを話しながら、ボクが案内されたのはイグナシオの部屋だった。


 サンドバッグが吊るされ、多数のナックルダスターなどが壁に飾られた部屋の中。その中心に位置する大きなテーブルの向こうにイグナシオが腕を組んで立っていた。


 他のメンバーはテーブルの横にあるソファーでくつろいでいる。


「ルチアから聞いたが、お前、本当に金貨百枚集めたんだろうな? この俺が貴重な時間を割いてやってるんだ。嘘だったら承知しねえぞ?」


 のっけから高圧的な態度のイグナシオ。まるでボクを値踏みするかのように見ていた。


「嘘じゃないよ。金貨百枚ずつ払うのも面倒だから、五千枚用意してきたんだ」

「ごせッ!?」


 さすがに予想外だったのか、イグナシオが噴き出す。他のメンバーも信じられないとばかりに目を見開いていた。


「お前は何を言ってるんだ? 金貨五千枚だぞ? それを二日で用意したってのか?」

「そうだよ」

「嘘じゃないってんなら見せてみろよ」

「いいよ」


 ボクは時空間をテーブルの上に展開すると、そこから金貨の入った革袋をどんどん落としていく。部屋にはジャラジャラと金貨の溢れる音が鳴り響いて止まらない。


「おいおい、マジかよ……」

「こりゃたまげたわい……」

「驚きましたね……」


 イグナシオ、パウリノ、ロレンソがまるで今にも口から魂が出てしまいそうな顔をしているのが印象的だった。彼らのこんなアホ面を見れただけでも五千枚の金貨を払った価値があると思えるほどだ。


「でも、本当に全部金貨なのかしら?」

「そうだな。確認しろ!」


 マルティーナの言葉で、ふと我に返るイグナシオ。すぐに金貨が本物かどうか確かめ始めた。


 そうして出た結論が……。


「本物じゃねえか。いったいどうなってやがる……?」


 イグナシオがわななくように呟く。


「ペペ、いったいどうやってこんな大金を――――」

「それより、これでボクへの借金は帳消しでいいでしょう? だから、これでキミたちとボクにはなんの関係もない。それでいいかな?」

「いえ、足りませんね」


 そう言ったのは僧侶のロレンソだった。


「私は、今まであなたに無償で治癒を施してきました。その代金をいただきたい」

「そうだな。そりゃもっともだ。金貨二千枚は欲しいところだな」


 ロレンソの言葉に深く頷くイグナシオ。


 彼らはどこまで貪欲なのだろう?


「はぁ……。二千枚だね? これ以上は受け付けないよ?」

「あん?」


 ボクは再度、時空間を展開すると、追加で金貨の入った袋をテーブルの上にぶちまける。


「これで借金はゼロでいいね?」

「マジかよ……。こんな大金があれば、なんでもできるぜ! それこそ、武器の新調だってできる! ドラゴン退治に良い弾みがついたぜ!」


 ドラゴン退治? イグナシオは何を言ってるんだろう?


 ボクが不思議そうな顔をしていたからか、イグナシオは訊いてもいないのにペラペラ語り出す。


「なんだ? 知らねえのか? 俺たちはドラゴンを退治するんだ。ドラゴンを倒したなんて、末代までの語り草になるぜ! ペペ、お前は確かに金貨七千枚稼いだかもしれねえけどよ? 俺たちはお前では望むことすら許されないような栄光と富を手に入れるんだ! これが、俺たちとお前との決定的な格の違いってやつだ!」


 イグナシオは欲望にとろんとした目で叫ぶ。『タイタンの拳』のパーティメンバーたちもドラゴンを退治した後を想像しているのか、ご機嫌そうだった。


「それはすごいね。ところで、もう帰っていいかな?」

「おう! 帰れ帰れ!」


 ボクはそのまま『タイタンの拳』の拠点を後にする。


 ドラゴンか……。まさか、本当にそんなモンスターいるんだ……。



 ◇



「イグナシオ、よかったのですか、ペペを解放して? もっと金貨を吐き出しそうでしたが……」

「わかってねえなあ、ロレンソ。あのペペが、まともに金なんて稼げるわけないだろ?」

「どういうことだ?」

「パウリノもわかんねえのか? ペペは、絶対に法を犯している。商人かなんかに騙されてるんだろ。そうじゃなきゃ、この金貨は説明できねえ。犯罪を犯している奴とは縁を切るに限る。俺たちの汚点になるからな」

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