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12 真価の発揮

「ゴブリン袋?」

「それって何なの?」


 ゴブリン袋のことを知らないのだろう。アベルもクレトも不思議な顔をしてボクの掴んだ袋を見ていた。


「その小汚い袋のことか?」

「うん。アタリハズレはあるんだけど、中にいろいろ入ってるんだ」


 そう言って、ボクはゴブリン袋をひっくり返して中身を腐葉土の上にぶちまけた。


 袋から飛び出してきたのは、控えめに言ってもゴミばかりだった。食べかけの木の実や光る石、中には黄ばんだゴブリンの歯まで入っている。その中から有用な物を見つけるのだ。


「ゴミばっかじゃねえか」

「でも、見て。これって銀貨じゃない?」


 クレトがゴミの中から銀色に光る硬貨を見つけたようだ。その手の中には、土に汚れているが、確かに銀貨が摘ままれていた。


「いいね! 今回はアタリみたいだ」

「マジかよ!?」


 クレトが銀貨を見つけたからか、アベルも真剣にゴミの山を見つめ始めた。


「ゴブリンは光るものを集める習性があるのか、たまに銅貨や銀貨、鉱石なんかを持ってるんだよ。ちなみに、これはたぶん銅鉱石だね。これも冒険者ギルドに持って行くと売れるよ」

「マジか! ゴミかと思ったらお宝じゃねえか!」

「だから、ゴブリンが袋を持ってる時は積極的に中身を確認した方がいいね」


 ゴブリン袋は大した収入にならないけど、初心者冒険者にとっては大事な収入源だ。これからも見つけ次第確認していかないとね。


 その時、森の奥の方から走る音が聞こえてきた。たぶん、ダリアが戻ってきたのだろう。


「さあ、戦闘の時間だよ」

「やったらあ!」

「そうだね!」


 銀貨を見つけてテンションが上がったのか、アベルもクレトも即座に立ち上がって武器を構える。


 ガサガサと揺れる藪を突き破ってダリアが現れる。その顔は必死という表現がよく似合う。何か問題があったのだろうか?


「にげ、逃げてー!」

「あん?」


 きょとんとした顔をさらしたアベルを誰が責めることができるだろう。


「撤退が必要なんだね?」


 ボクが問うと、ダリアはガクガクと高速で頷いた。


「逃げよう!」

「逃げて! あいつが、オークが来ちゃう!」

「オーク!?」

「そんな!?」


 オークと聞いてアベルとクレトも事の深刻さに気が付いたようだ。


 しかし、ようやく事態の深刻さに気付いたところで時間は待ってくれない。


「あ……ッ!」


 ダリアを追って来たのだろう。藪を突き破ってゴブリンたちが現れる。


 そして、ボクは気が付いてしまった。ダリアとゴブリンが現れた藪。その藪に隠れきれないほどの巨大なモンスターがボクたちに迫ってきていた。


 大きな体を覆うのは、意外なほどかわいらしいピンクの短い毛だ。その顔はたしかに豚に似ている。まるで豚と巨人のハーフのような姿。そんなバケモノが丸太のような棍棒を持ってノッシノッシと歩いてくる。


 オーク。まさか、こんなに浅い森で出会うだなんて!


「に、にげ……」


 あの気の強いアベルの声が震えている。その視線はボクと同じくオークに釘付けだ。オークの巨体に驚いているのかもしれない。


「マズい……」


 まだオークとの邂逅は想定していなかった。


 実はオークはそんなに強いモンスターではない。実際、オークのことをのろまな豚だと揶揄する冒険者も大勢いる。でも、最初に見た時のインパクトはかなり強い。人間よりも大きな体は、それだけの威圧感があるのだ。


 アベルもクレトもその威圧感に呑まれてしまって、ロクに動けていない。このままでは撤退の指示を出すこともできずにオークに蹂躙されてしまう。


 もしくは、今から逃げ出したとしてもオークに追いつかれてしまうかもしれない。


 どちらにしても最悪だ。


「ッ!」


 ボクは歯を食いしばると一歩前に出る。


「お、おい、ペペ……」


 背後からアベルの動揺する声が聞こえた。


 でも、ボクは敢えてそれを無視してオークと対峙する。


 みんなが無事に生き残るには、これしかないんだ!


 ボクは覚悟を決めると、魔法を使う。もちろん【時空魔法】だ。ボクにはそれしか選択肢がない。


『ペペさん、この力を攻撃に転用すれば――――』


 セシリアがボクに気付かせてくれたこと。それを無駄にしたくはなかった。


「ボクの【時空魔法】はなんでも斬れるんだ!」


 ボクは祈るような気持ちでそう叫ぶと、魔法を発動する。


 目の前に現れるのは慣れ親しんだ真っ黒な空間だ。それを矢のように高速でオークへと飛ばす。


 あの大きな木の幹もくり貫けたんだ。オークぐらい簡単に斬れるはず!


 次の瞬間、オークの首がズルリとズレて地面に落ちる。


 そして、まるで鼓動を打つようにオークの断たれた首から青い血が噴き出していた。まるでオークの噴水だ。


「へ……」


 こうなることを願っていた。でも、実際になると驚いてしまう。


 ボクは、オークを倒せたのか。しかも、一撃で。まるで夢みたいだ。


 ズシンとオークが地面に倒れる音がまるでこれが現実だと言わんばかりに聞こえた。

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