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11 久しぶりの実戦

「ゴブリン五匹!」


 ボクとダリアはゴブリンを釣ってキャンプ地へと走って戻ってきた。


 いつもなら、そのまま後衛のセシリアの所まで走るのだけど、ボクはアベルの横で足を止め、森の方向へと振り返る。そして、両手の先に短剣サイズの真っ黒な空間を生成した。


 真っ黒な空間。ボクは収納空間と呼んでいるんだけど、この空間の境目は非常に鋭利な刃物のように物が切れる。それを利用して双剣士の真似事をしようというのがボクの第一目標だ。


「はぁ……、はぁ……」


 久しぶりの実戦に緊張して鼓動も呼吸も荒くなる。


「大丈夫?」

「え?」


 横を見ると、いつの間にかクレトがいた。


「大丈夫。失敗しても僕たちが付いてるしね」

「そうだぞ! ぶちかましてやれ!」

「うん!」


 クレトとアベルに励まされ、ボクは決意を固める。


 ここで逃げちゃいけない。ボクは変わるんだ。みんなの役に立つんだ!


「来たぞ!」


 アベルの言葉と共に木陰からゴブリンが飛び出してくる。その数は五。いずれも棍棒を持った普通のゴブリンだ。


 その瞬間、後方からビィンと弦の鳴る音が聞こえる。一番前を走っていたゴブリンが後方に吹っ飛ぶように倒れた。


 よく見れば、ダリアの放った矢が額を貫いている。即死だ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 温厚そうな性格のクレトが大声を出す。戦闘の開始を告げ、ゴブリンたちの意識を自身に集めるためのウォークライだ。


 ボクはクレトのウォークライに背中を押されるように一歩前に出た。


 途端に棍棒を振り上げて襲ってくる二匹のゴブリン。


 大丈夫だ。ゴブリンの武器は棍棒でしかない。たとえ攻撃を貰ったとしても痛いだけで終わり。


 そう自分に言い聞かせてボクは二体のゴブリンを迎え撃つ。


「やああ! せあっ!」


 恐怖に閉じそうになる目をカッと広げ、さらに一歩踏み出し、腕を振るう。


 二匹のゴブリンが棍棒を振り上げたままボクを通り過ぎた。


 だが、ボクは慌てない。


 二匹のゴブリンは二、三歩走った所で急に糸の切れた人形のようにバタリを倒れた。その衝撃で二体のゴブリンの頭がゴロリと転がる。


 手応えのようなものはなかった。でも、確実に斬ったという確信はあった。


「ふぅー……」


 なんとかなってよかった。


 そうだ。落ち着いている場合じゃない。ゴブリンは五匹。ダリアが一匹仕留めたのを合わせてもまだ二匹残っているはずだ。


 振り返ると、アベルはもうゴブリンを倒したようだけど、クレトはまだゴブリンと戦闘していた。


 クレトを援護しようと近づくと、アベルが手を上げてボクを止めた。


「どうしたの?」

「手を出しちゃいけねえ。クレトのギフトを知ってるだろ?」

「たしか【強固】だよね?」


 それが何の関係があるのだろう?


「クレトも武術系のギフトを持ってねえ。だから、自分で自分を鍛えるしかねえ。今、クレトはいろいろ試してるんだ。邪魔しないでやってくれ」

「そっか……」


 アベルの言葉はボクには痛いほどよくわかった。ボクも武術系のギフトを持ってない。ギフトを持っていないということは、スキルを覚えることができない。スキルはギフトを持っている者の特権なのだ。


 もちろん、スキルを模倣することはできる。でも、スキルの威力や効果範囲には遠く及ばないのが現状だ。


 クレトのギフトは【強固】。たぶん防御力が上がるスキルが使えるようになるだろうけど、攻撃系のスキルを覚えられる可能性は低い。


 だから、クレトは自分を鍛えているわけだ。


 偉いなぁ。


 ボクは心からそう思った。


 ボクがクレトの立場だったら、あんなにがんばることができただろうか?


 ちょっと難しい気がする。そして諦めてしまうのだ。


 でも、クレトは諦めることはないのだろう。


「すごいなぁ……」


 ボクにとって、クレトは眩しすぎた。


「ふんっ!」


 そして、ついにクレトがゴブリンを倒した。その瞬間、ボクは拍手していた。


「おつかれさま、クレト」

「よくやったな!」

「え? ああ、僕が最後だったんだ。悪いね」

「いいんだぜ? クレトのがんばりは俺が一番知ってるからな!」


 そう言ってクレトの鎧の背中をバシバシ叩くアベル。そこにもボクはたしかな友情を感じていた。


 ちょっと羨ましい。


「んじゃ、おかわりだ! ダリア! ゴブリン連れてこい!」

「OK!」

「付いていこうか?」

「大丈夫! 一人でやってみる!」

「わかった。気を付けてね」


 そうして一人で森の奥に入っていくダリア。ボクはちょっと寂しいものを感じながらそれを見送る。


「にしてもすげーよな!」

「え?」

「え? じゃねえよ。お前だ、ペペ。一瞬でゴブリン二匹を斬っちまったしよ。見ろよ、この切り口。俺の大剣でもこんなに綺麗に斬れねえぜ?」

「ありがとう」


 人に褒められることなんて久しくなかったから、なんだかこそばゆい。


「あ、ボク、右耳集めるね」

「俺も手伝う」

「僕も」

「ありがとう!」


 前衛のみんなで一斉にゴブリンの右耳を集める。


 その時、ボクは一匹のゴブリンが腰に麻袋を吊っていることを発見した。


「ゴブリン袋だ!」

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