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5-2「知るべき事と知りたい事」

 5線「臨む華へ望まぬ華を」の全体的な構成ブラッシュアップに伴い、こちら既に公開しておりました5-2を再構成版へ差し替えさせていただきました。(2024/5/21)

 つきましてはささやかながら補填といたしまして、5/24(金)公開予定の5-3を5/22(水)0時に前倒しで公開させていただき、さらに5/24(金)に5-4を公開する3本立てで今週はお送りいたします。

 変則的になってしまいご迷惑をおかけいたしますが、お楽しみいただければ幸いです。

「そして四鬼は、地獄の亡者の中から我が登用した精鋭です。『逢魔時』からしばらくして召喚されるようになったそなたたち稀人とともに、四鬼事変までよく戦ってくれました」

(イベントとかで四鬼と共闘できたってやつかな。村鞘が言ってた)

「そなたは……御魂の識別情報から読み解く限り、四鬼事変以前にはまだ召喚されていなかった稀人ですね。彼らと会えばきっと良い戦友になれるでしょう」

「戦友よりも闘ってみたいぐらいだけど。……ん、“なれる”? “なれた”じゃなくて?」


 四鬼は四鬼境の土地そのものになってしまったと村鞘から聞いたが、過去形ではないのは言葉の綾だろうか。


「まあとりあえず、あんたの素性の事はこれくらいでいいわ。ありがと」

「もういいのですか? 疑問があれば何なりとどうぞ」

「んーん、今はべつに」

「そう言わずに。我を見出だしたそなたは、他の稀人が求めてやまない世界の真実をも識ることが可能なのですよ」

「ははーん、さてはあんた語りたがりね?」

「否定。はしません」


 さてはこの籠被り女、むしろハナに質問してもらいたいのか。ナビ鬼火もとい千方火の正体なだけある。

 世界観考察も好む村鞘辺りならなるほど垂涎の情報源、まさに生き字引といったところだろう……けども……、


「あたしが知りたいのは、あたしが斬るべき相手と斬った相手の事だけよ。もちろん弱点とかのネタバレじゃなくて、刀を抜く相手への礼節として知っておきたい事だけね」

「具体的には?」

「名前ぐらいかな」

「千方火でも十分なことではないですか」

「そのとーり、あんたは何でも知ってそうだけど今までどおりでかまわないわ。せいぜい勿体つけて導きまわして、初見殺しで死ぬくらいあたしを驚かせて」


 ハナは、それだけで闘える。

 世界の真実なんか知らなくても、死闘へ向ける心意気は何一つ変わらないのだから。

 斬り合うべき者の名があって、斬り合いの中でこそ相手を識る。それだけでいい。

 そんな刹那の積み重ねの向こうにこそ……視えてくる世界があるから死にゲーは美しいのだ……。

 その果てに、いつか世界をも救って(壊して)しまうのならそれでいい。


「……面倒くさいと言われませんか、そなた」

「あたしの友達はそれでも付き合ってくれる連中だからいいの。あんたは?」

「そうですね、我を下したそなたがどうあれば往生するのか友として好奇心は尽きません。これからもよろしくお願いいたします」

「はいよろしく。それじゃとっとと、次に闘ってほしいって相手の居場所教えて」


 ーー ??? 『異聞四鬼伝 ーー簒奪の狂信者ーー』 ーー


 他でもない千方からまたまた依頼されたクエストは、どんな死闘との出逢いをもたらしてくれるのだろうか。


「それならばここで語るまでもありません。……足元に注意を」

「わっ、と?」


 と。下り階段を下っていたはずなのに、一瞬の船酔いじみた感覚とともにハナは下り階段を上っていた。

 そう遠くない階上から、いつの間にか現世らしき出口の光が射し込んできていた……。


「出口です。お先にどうぞ」

「まったく。この階段って無限に続くような気がして『アントニオ64』のトラウマ思い出すのよね、言っても分かんないだろうけど」


 ーー 頭装備変更 ーー

 ーー 無し→『逃亡姫の市女笠』 ーー


 千方火戦の余韻からまだ被らずにいた市女笠を装備し、剣士ハナは面頬に秘された風来姫へ。

 千方を追い越し、光の奥に見えた葛籠の縁を引っ掴んだ。


「さってと。とりあえず、下にいた変な人妻狐に…………って、あれ?」


 ひょいと飛び出したところ、東の空から燦々と降り注ぐ陽光にまばたきを繰り返した。

 そこは。四方八方の内側から封じられた、あの天守閣の祭壇の間ではなかったのだ。

 むしろ天守閣を彼方に見上げる、扶桑城郭の屋外だった。


 ーー 扶桑城 ーー


 本丸から張り出した御殿の御前、白石に(ござ)が敷かれたお白洲……謁見の場だった。

 御殿の広間と蓙とのちょうど間に割り込む形で、葛籠の“口”だけが虚空に出現していたのである。


「お主は……」


 広間には彼が座していた。

 扶桑城主、蓬莱 莢心である。


「き、きみは……!?」


 ……白石の蓙にはあいつが座していた。

 竹林、沼、そして地下牢で遭遇した蕗下族のからくり師少年である。


「よかった! きみに話したいことがあるんだ! ゲームマスターさんからは厳重注意で済んだけど、きみはあの時の地下牢にいたん……!」

「貴様ァ!! いかようにして『じあくほうと』をここへ繋げた!」


 ありがたいことに少年の言葉を遮って莢心が吼え、周囲に配されていた衛士たちも得物を構えるのだった。


「あたしは知らないわよ」


 またコレか。リアル時間ではたった数時間前にも同じように怒鳴られたが、ずいぶん過去の事のように感じる。

 あの時は、手が生えた千方火を見せたら急にブチギレられたものだ。


「このヒトが行きたがってたから」


 だからハナは、葛籠口から遅れて現れた彼女を指差した。


「おはようございます、莢心。ぴーすぴーす」


 褐色の手で城主へダブルピースを向けてみせた千方を。


「我が不在の間の長年に渡る務め、お疲れ様でした」

「……………………」


 そして一方、莢心は言葉を失っていた。

 むべなるかな。衛士たちも開いた口が塞がらない様子で、この籠被り女へ武器を構えるべきかどうか迷っていたから。

 それくらいの反応は千方も想定内だった様子で、とくに慌てることもなくハナを指差した。


「さて早速ですが、これより我が身はこちらの稀人ハナとともにある所存です。ついてはそなたが収蔵している我の……」

「…………もの」

「はい? ナニものですか?」

「この大うつけがぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッ!!」

(なんでこんなキレやすいの、このジジイ)


 二度目ともなるとハナもビックリしなかったし、千方も籠アタマの中の鬼火すらちっとも揺らがなかった。

 【『アントニオ64』】

 世界一有名な配管工レスラー、アントニオがシリーズ初の本格3Dフィールドを冒険するアクションゲーム。

 発見した隠し1UPエノキを取らずにいると、あらゆるオブジェクトをすり抜けながら自キャラを延々追い回す仕様がある。通称“ヤツ”に触れたら負けとし、極限のプレッシャーの中でクリアする死にゲー的遊戯が英子のお気に入り。

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