あたしはこれが一番大好きなの
「あぁ、そっか、そう言えばそう聞いてた。他のもいただいてみます。」
タマモちゃん、イズナさん、ラスさんが見守る中、一人で食べる……いや、クロが美味しそうにご飯食べ続けているから助かる。
あぁ、もしかして、ラスさんと目が合ったり、イズナさんがずっと見つめてくるのって、私が神域の食べ物大丈夫かな?と心配してくれていたのかも。会話がなかったのも、それかな?
それでは、まずはこの一口大の煮た鶏肉っぽいやつを。ぐほっ、噛んだら肉汁が溢れ出てきた!?小籠包かよとツッコミたくなる様な量の肉汁が口の中で弾け出てきた。煮込まれた肉からこんなに肉汁が出てくるの意味が分からない。味付けは優しいのに溢れ出る肉汁とうまみが物理的に暴力的な爆弾肉だよ。
「うっま!!溢れてくる!」
この小鉢の和え物は何だろう?ゼンマイに少し似ているが別物だ。歯ごたえがグニュっとシャクっの中間の様な不思議な感じ。ほのかな苦味が良い感じである。
「これも美味しい。」
こっちの皿の油炒めは、人参の葉っぱの部分っぽく見える。人参や大根のこの部分ってスーパーで買うとついてこないけれど、私としてはこの菜っ葉こそが本体と言っても良いくらい好きである。根の部分も好きだけどね。一口食べると、やっぱりそうだ。
「これすごく好きだなぁ。美味い。」
この小皿のは、ふき味噌かな?うん、やっぱりそうだ。
「これご飯が無限に進んでしまうやつだ……!」
最後に味噌汁をズズーっと吸い、具も食べる。中からミョウガが出てきた。
「ミョウガの味噌汁大好物です。美味い。」
これで一通り食べたかな。全部美味しかった。
「どの料理もすごく美味しいです。どの品も一品あればご飯が止まらなくなるのに、それがこんなにも並んでるなんて、今すごく幸せだなぁ。」
「良かったぁ……!頑張って作ったかいがありました。」
イズナさんは安心した様でようやく自身もご飯を食べ始めた。
やっぱり神域の物を私が食べられるのか気にしてくれてたんだ。
「ね!ね!その鶏肉の、びっくりしたでしょ!?それ普通の鶏肉なんだよ!!」
話しかけてきたタマモちゃんのらんらんと輝く目が「ずっと言いたかったんだけど、私が食べて驚くのを待っていたんだ!やっと言えるよ!」と物語っている。
「えっ?口の中で大爆発するこの鶏肉が!?」
どれも美味しかったけど、インパクトというか、驚きはこれが圧倒していた。普通のってことは、神域産じゃないって事だよね?心の中でビッグバン鶏肉と命名しちゃおう。
「うん!あたしはこれが一番大好きなの!爆発チキンっていうの。」
タマモちゃんはそういうと爆発チキンを口に入れて、幸せそうな顔になる。
こっそり命名した途端にちゃんとした名前を教えてもらっちゃった。爆発チキン、わかり易いけどちょっと物騒な名前。
「この料理はイズナの卓越した結界術を料理に組み込んだ、イズナのオリジナル料理なのですよ。料理名はタマモ様の命名でしたね。」
今度はラスさんが教えてくれた。そしてラスさんも爆発チキンを口に入れて幸せそうな顔になる。
オリジナル料理か!しかも結界を料理に使うなんて!!結界の条件設定で肉汁閉じ込めるとか、高圧力をかけるとか、何かそういった事をするのかな?
爆発チキンはタマモちゃん命名か、なるほど。
「お姉ちゃんのご飯は世界一美味しいの!」
タマモちゃんは満面の笑顔で私に伝えてくる。
そしてイズナさんの狐耳がピクピクピクピク動いている。
これは……!乗るっきゃない、このビッグウェーブに!!!
「うん!これは絶対世界一だよね!!この肉はもちろんだけど、他の料理も全部美味しいもんね。」
私はそう言ってタマモちゃんと笑顔で頷き合う。
もっと何か言葉を並べて褒め称えたいけれど、私の語彙力じゃ言葉を並べれば並べるほど薄っぺらい美辞麗句となってしまうので残念である。
そして……イズナさんをチラッと見ると、顔面が固まっている、というか力を入れている。これは、褒められて嬉しいのと、照れているのを我慢しているのだろう。本人はたぶん気付いていない様だけど、狐耳が頭の上で大暴れしている。飛びつきたい。
ラスさんも私の視線からイズナさんの狐耳の状態に気付き、そして一瞬吹き出しそうになっていたが、流れる様な動作で何事も無かったかの様に食事を続けている。
クロは相変わらず美味しそうに食べている。
イズナさんの狐耳をいつまでも鑑賞していたいが、そうも言っていられない。せっかくのご馳走が目の前に広がっているのだから、そちらもいただかなければ。
いや、イズナさんの狐耳もご馳走といえばご馳走なのだが、食べる事の出来ないご馳走なのだ。なぞなぞみたいな事言ってるな。
あぁ、しかし、ご飯が美味い。
そしてまた口の中で爆発が起こった。




