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おかわりー!

 本当はイズナさんもラスさんも、もっと早くクロにおめでとうと伝えたかったのかもしれない。

 さっきクロにおめでとう伝えているときの二人の笑顔、自分の事の様にとても嬉しそうだったもの。

 だが今後のクロの為を思って、反省の時間を取ったのではないだろうか。クロは失敗する事を恐れているところがあるから、なるべく繰り返す事のないように。


「じゃあ冷めてしまわないうちに、ご飯にするのじゃ。タマモは結局起きて来なかったが、今起こすのじゃ。」





「いただきます。」


 あれからすぐに夕ご飯となった。早く食べないと冷めちゃうからね。

 まぁイズナさんが予め時間減速の結界を張ってくれていたので、多少遅くとも大丈夫ではあったのだけど。イズナさんの隠れた好プレイだ。……隠れてない!


 夕ご飯は掘り炬燵の方で食べる事になった。こちらの方が置き炬燵よりサイズが一回り大きいからである。

 掘り炬燵は久しぶりだ。私の家には無かったが、友人の家にあった。しかしテレビゲームで遊ぶ部屋とは別の部屋にあったので、入った事は一、二回だけである。

 席順を時計で表すと、6時方向に私とタマモちゃん、3時方向の辺にイズナさん、12時方向にラスさん、9時方向にクロが座っている。最初、タマモちゃんが私に座ろうとしたが、イズナさんに止められていた。行儀が良くないから、それと私がご飯が食べにくくなっちゃうから、と。なのですぐ隣に座ることになったのだ。置き炬燵のままならば、私が胡座かいたら隣のタマモちゃんが座れなくなっちゃうし、正座したら私の足が痺れてしまうから、掘り炬燵に移ったのは結果的にこの点でも非常に助かった。


 だが、この時私は考えてしまったのだ。私にタマモちゃんが座った場合、確かに食べにくくなるだろう。しかしそれ以上に問題なのは、タマモちゃんの狐耳にご飯を落としてしまった場合である。その落としてしまった物を、箸を使って取ろうとしたら、タマモちゃんの狐耳を突っついちゃうかもしれないから危ないよね?だから口で直接摂取するのが望ましいのではないだろうか。それは、なんて素晴らしい事だろうか。術の効果を受けているのではなく、素面状態で、しかもタマモちゃんの狐耳を傷つけない様にという大義名分も持って事に臨めるのだ。もちろん食べ物を、しかもイズナさんが作ってくれた食べ物をワザと落とすつもりはない。だが、タマモちゃんを抱っこした状態で物を食べるならば、事故はどうしても起こってしまうのではないだろうか。『イズナさんが作ってくれたご飯〜タマモちゃんの狐耳を添えて〜』究極も至高も超えたメニュー、というか一品が出来ちゃうよ。これは是非―――


「ケイよ、遠慮しておらんで食べると良いのじゃ。」


 いかんいかんいかん!またトリップしてしまった。

 突然出てきた春姫ちゃんが注意してくれた。タマモちゃんを起こして入れ替わったのに、私の心を読んで妄想にストップをかけてくれたのだ。皆には気付かれない様に。ありがとう。春姫ちゃんありがとう。

 では、頂きます。まずはこの煮物を一口。


「……あぁ、美味しい。」


 最初に里芋っぽいものを食べたら思わず言葉がこぼれ出た。続けて二口目に人参、三口目にコンニャク……止まらない!でもこの煮物ばかり食べていても良くないだろう。

 白米も一口。あっ、これもうまい。多分新米だろうけど、それだけじゃない。噛むと微かにだが何か口の中に広がるのを感じる。……これは神域産の新米なのかな?続けてワカメの入った味噌汁をずずーっと飲む。ぷはーっ。


「あぁ、美味しい……!」


 さっきと同じ言葉が口から出たが、さっきよりも強く実感が籠もっている。


「イズナさん、すっっっごく美味しいです!食べるの止まらなくなります!」


「ありがとうございます。お口に合った様でホッとしました。」


 続いて焼き魚も食べよう。大根おろしも付いている。魚の身の色の境目らへんに箸を入れると奇麗に取れるよね。一口大にして、大根おろしをのっけて、ぱくり。あぁ、これも美味いなぁ。魚も美味いけれど、大根おろし自体もすごく良い。そういえば、この大根は収穫したてのやつかな?あっ、醤油……まぁいっか。私は大根おろしに醤油を垂らす派なのだが、この大根おろしはこのままが良い。


「おかわりー!」


 おおっ!さすがクロ!!もうおかわりいったよ。

 そういえばイズナさんがクロは良く食べると言っていたよね。


 あれ?食べるのに夢中になってしまったけど、特に会話がないな?食事中は黙って食べる感じかな?さっき美味しいですと伝えたのはマナー違反的になっちゃったかな?

 そう思って皆の様子を見渡してみる。

 クロはモリモリと食べている。今は会話よりも食欲といった感じだ。勢いは良いのだが、動きの一つ一つが洗練されている気がする。勢いがあってもガツガツといった感じは受けない。これも武術をしている賜物だろうか。

 ラスさんはゆっくりと味わいながら食べている。あっ、目が合った。ニコッ。

 イズナさんは……イズナさんとも目が合った。ニコッ。…………ずっと目が合ったままである。イズナさんは、食べないのかな?

 すると横から私の袖をクイックイッと引っ張るタマモちゃん。


「ねぇ、おにいちゃん。全部のお皿の物食べてみて。ここにあるのって神域で作ったものが多いから、苦手なのあったりしない?」

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