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ヒィッ!!

「ありがとう、ラスさん。」


 仰向けの状態から立ち上がる時、手を貸してくれたラスさんにお礼を言う。

 あ、今自然な流れでラスさんと身体的接触を果たした。残念ながら立ち上がったらすぐ手を離してしまったが。すべすべの素晴らしい手だった。

 というか、起き上がるときに女性に手を借りたのは初めてな気がする。

 あ、いや、母と妹には引っ張って起こしてもらったことがあるか。姉に手を借りようとしたら「うるせぇ!」と言われた事もある。あれだ、家族は除くって事です。


 ところで、イズナさんは……チラリ。

 あ、ばっちり目が合った。真っ直ぐにこちらを見つめて来ている。

 ……怒っているのかな?


 さっき抱きしめながらおっ立ててしまったし、それから料理を作ってから戻ってきたら三人が組んず解れつしていた様に見えてもおかしくない体制になっていたのだ。

 ついさっき、恋人だとか、フラれてはいないだとか考えたばかりだというのに、ここでフラれてしまってもおかしくはない。


 ただ、私は今回のは何も悪くないのだ。……悪くないよね?

 だから堂々としよう。狼狽えたり動揺したりは、やましい事があるのかと誤解を生むかもしれない。


「ケイさんは大丈夫でしたか?」


「は、はい!大丈夫であります!」


 「はい」の前に一回「は、」と入ってしまうあたり、動揺が隠しきれていない。「大丈夫であります!」とは何なのだ。軍隊か?ペコポン侵略に来たカエルか?

 落ち着くんだ、私。フラれるとは決まっていないんだ。


「先程の騒動は、一体何だったのですか?」


 こ、これは……!

 いや、大丈夫だ。落ち着いて、順序立てて説明すれば、ちゃんと解ってくれるはずだ。なんたって、イズナさんの方がクロとの付き合いは私よりもずっと長いわけだしね。


「春姫ちゃんから霊力の事とかいろいろ話を聞いてたんです。霊力が強くなると何かしらの特徴が出る場合があるって話や、霊力の器の変質の話とか。あと、クロの一子相伝の武術とか、気の話とかも。」


「そう、ですね。クロがケイさんを変質者なのかと大声で聞いていたのが台所へも聴こえてきましたよ。」


 と、イズナさんは苦笑いをみせてくれる。

 あぁ、怒っていて真顔だったわけではないのかも。ただの事情聴取をしているのかも。


「ラスが台所へ戻って来た後、事情を説明してくれました。春姫様から頂いた称号だと聞いたのですが……後で春姫様を注意しておきますね。」


「ヒィッ!!」


 苦笑いを浮かべていたイズナさんが真顔に戻ったと思ったら、ニッコリと作り笑いを浮かべた。

 それを見た春姫ちゃんが短い悲鳴の様な声を上げる。チラリとそちらを見ると……春姫ちゃん結構ガチでビビってるな、これ。


「あ、大丈夫ですよ!おかしな響きの称号ではありますが……いつか妖精の事を公表するときに、わかり易いかな、とも思います。」


 一応、助け舟を出しておく。春姫ちゃんは私の全てを見ても受け入れてくれるマブだもの。

 イズナさんは握った右手を口元へ、左手は右肘へと持っていき、目線は少し下へ。

 考えているイズナさんもとても良いものです。時折狐耳がピクんピクんと動くのも大変素晴らしい。


「確かに、一定の効果はあるかもしれません。ケイさんが妖精だと公表した後、大きな反響を呼ぶでしょう。そして各地でケイさんの噂が流布されることとなりましょう。その時、その称号も広まれば、ケイさんが妖精という世にも稀な存在へと至った経緯がある程度予測できます。最初にこちらから話の流れを提供することで、とんでもない噂や悪意ある噂などへの多少の抑止効果や、対策を立てやすくなるのではないかと思います。」


 あ、あれ?

 妖精公表した後に、会う人会う人全員に毎度妖精になった経緯とかを詳しく説明することになったら面倒だなぁと思ったから、変質の事を知られておけば説明が楽になるんじゃないかな?

 ってくらいの軽い考えだったのだが……。


「ただ、懸念すべき事もあります。『変質者』は生か負かといえば、やはり負のイメージが付きやすい言葉となります。神域では『変質』は珍しい事であり、『者』を繋げて『変質者』となれば……へ、へ、変態的な、イメージとなります。」


 『変態』で言い淀んでしまう姿が……非常にたまらん!顔を少し赤くして言い淀む姿を是非とも動画に残させてもらいたい。そして映画館の巨大スクリーンで観たい。何千回何万回と繰り返し堪能するんだ。

 折角の芸術鑑賞なのだ、最高の映像作品なのだ。雰囲気も大事だな。片手にワイングラスを装備しとくか。中身は、白ワインかな。イズナさんが白いし。だがいくら飲んでも酔う事はないのだ。すでにイズナさんでベロベロに酔っているからだ。

 ……いかんいかん、恥じらうイズナさんがあまりにも可愛かったのでトリップしてしまった。イズナさんの話を真剣に聞かなければ。


「なので、変質者の称号が本当であるが故に、他の負の噂などと混同させられてしまうのではないかとも思うのです。」


 あぁ、なんというか、あれか、嘘を付くときに真実も混ぜると信じてもらいやすくなる的なあれかな?


「なるほど……。」


「……あと、その、ケイさんと、妻である私は、その、本当に……変態なことばかりをしているのかと思われてしまうかもしれませんよ?」


 します!

 本当にします!!!

 何が何でも変質的行為をしまくります!!!!!

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