やってみる!!
まずは、クロの一族の器の変質がどういったものなのか聞こう。春姫ちゃんも知ってたら教えてね。
「ねぇクロ、クロは器の一部を変質させてるって事だけど、それってどういう事なの?生まれつきとか?」
「ううん。何かね、修行させられたの。ちっちゃい時に。修行はね、こう、ハッてやってた。毎日繰り返しやってたら、気を使える様になったの。それからは、いつ何があってもいいように、いつもそうしとけって言われた。ずっとこれにしとくの、最初は難しかったけど、すぐ慣れた。寝ててもこのままだよ。」
「つまり、クロは器の一部が変質している状態と、どこも変質していない状態を自由に切り替えられるって事なの?」
「うん。」
器の一部を自由に変質させる事が出来るって、もはや新時代の変質者と言えるのかもしれない!!!
などと叫んでみたくなる。クロは喜んでくれるだろう。ただ、それだけでは終わらず、クロは各所で自分は変質者だなどと言ってしまうかもしれない。……うん、クロには伝えられない。いや、神域でなら、変質者はおかしく思われずに済む……?
眼の前で春姫ちゃんが首を左右に振る。
「説明すれば通じるじゃろうが、まずはおぬしと同じ意味で受け取られるじゃろう。器に変質が起こり得る事は知っておっても、日常的に意識する事ではないからの。」
そっか、うん、クロに変質者と伝えるのはやめよう。
まぁそれはそれとして……
「ねぇねぇ、春姫ちゃん。クロに、器の一部の変質化を解いて貰うのって、大丈夫なのかなぁ?」
もしかしたら、クロの心の持ちようが変化しちゃうかもしれない。
絶えず器を変質させ続けるのが当たり前として過ごしてきた状態と、変質を解いてみてくれと言われて解いた事がある状態。この違いがクロに影響を与えてしまわないだろうか。
すでに提案をしてしまったので、それだけでもクロの心情に影響を及ぼしてしまっているかもしれない。
「ヒトカゲの話を聞いた限りじゃが、大きな問題はないじゃろうのう。のう、クロよ。器の変質化を解いた場合、後でまた変質させるわけじゃ。また日常的に変質させ続けないといけなくなるわけじゃが、問題ないと思うかの?」
「うん、大丈夫。じつはたまにこっそり解いてたりするの。ハッてして変質させる為に。」
あっ……。たまにやってたのか。じゃあ今更心配することでもないのか。
変質させる為に変質を解くって事を言ってるんだと思うけど、変わる瞬間が快感だったりとかあるのかな?……変質者をカッコいいとか言ってたし、変質を変身シーンに見立てているとかあるのかも?仮面のバイク乗りの変身シーンみたいな。……ないか。
「じゃあ、もう試してあるんだね。」
わざわざ今解かなくてもすでに解っている事なのか。
「ううん、いつもは解いてもすぐまた変質してたの。だから解いた時に何も調べてないの。」
「じゃあ、今やってみたらどうじゃ?妾たちも確認するぞ?」
私も、うんと頷く。
「うん!やってみる!!」
そう言うとクロは立ち上がった。私と春姫ちゃんも立ち上がる。皆立ち上がったのだから、炬燵じゃなくてもうちょい広い場所へ行こう。こっちこっち、こっちでやろう、と2mくらいだが移動する。
「じゃあいくよー!にゅっ!」
ハッじゃなくて、にゅっだったのは変質じゃなくて元に戻したからだろうか。
……あっ!!!!!!
「ふむ……、色も変わっておらぬし、手脚も増えておらぬし……残念ながら変わってはおらぬ様じゃのぅ……。」
春姫ちゃんはクロの上から下まで視線を動かしそう言った。それを聞き「そっかぁ……。」と少ししょぼんとするクロ。
「変わってる!変わってるよ!!クロ、変わってるよ!」
クロはガバっとこちらを向き、距離を詰めてくる。
「どこ!?どこ!?」
近い近い、クロ近い!その距離3cmほど。
春姫ちゃんは、どこじゃ?どこが違うんじゃ?と間違い探しをするかの様にクロの全身あちこちに視線を走らせている。
春姫ちゃんがまだ探している状態だが、クロが知りたがっているから答えてしまおう。というか、クロ自身は気が付かないんだね。
「あのね、尻尾が大きくなっているよ。」
……今の台詞、言い間違えそうでちょっと緊張した。
『シッポ』の『ポ』以外の二文字を言い間違えて(つまり○○ポ)ドセクハラな事を言ってしまったらどうしようかと一瞬頭によぎってしまった。くっだらないとは思うのだが一度頭によぎってしまうと後の祭り状態で、言い間違えてはダメだと思えば思うほど、逆に意識してしまうのだ。
春姫ちゃんに、またコイツ何か変な事考えてんな?という顔をされたが、今は近くに立っているだけで接触はしていないので、詳細までは伝わっていないはずである。
「本当っ!?クロの尻尾大きくなってる?」
クロは自分の尻尾を良く見ようとして、その場でグルグルと回りだしてしまった。
犬がこれやってる動画見たことあるーーー!
ここだ!ガシッ!
五回転ほどした所でクロの肩をキャッチ。尻尾を掴んだわけではないよ。ミスってクロの胸にタッチするなんて事にもなってないよ。
「クロ、ストップ!落ち着いて。」
「あっ、えへへ、回っちゃった。」
照れ笑いを見せてくれるクロ。照れ笑い、良いものです。
「ひゃんっ!?」
突然クロが変な声を上げる。
いや、今回は私じゃないよ!?両手でクロの両肩を触っているけど、それだけだよ!私じゃないよ!回復術もどきも発動させてないよ!!
クロは後ろを振り返る。
「春姫様……。」
私もそちらに視線を移すと……春姫ちゃんがクロの尻尾を持って撫でていた。
これは……百合というやつか!?




