反省しております
暴走しまくった結果か……。でも期待されてのものだし……いや、まぁ、クロ本人からしたら関係ないか。
めぐみんとかゆんゆんとか、ちゅんちゅん丸とかいう名前よりは良いと思う……なんて伝えたとしても、クロは何の事かわからないだろうし、何の慰めにもならないだろう。
それにしても九尾の狼って初めて聞いた。というか『九尾』というものが文字通りの九本の尻尾というより、『九尾の狐』の略称という認識だった。なので今までは『九尾』と聞いたら、完全に『狐』だけが思い浮かんでいた。
もしくは、宇宙からやって来たつぶらな瞳のよくわからないインキュベーターのあだ名(愛称?)の聞き間違いか。あの耳から出ている部分は引っ張ってみたくなる。いや、引き千切りたいわけじゃないよ?軽〜くだよ、軽〜く。
「九尾、と聞くと狐のイメージなんだけど、神域にはいろんな九尾が存在するの?」
「存在するというか、存在していた、じゃな。現在はタマモただ一人じゃ。」
「えっ!?」
ろっ!?
私はつい、ガバッと春姫ちゃん、というかタマモちゃんの身体を持ち上げる。
もふっ
勢い余ってタマモちゃんの尻尾に顔を埋めてしまう。
あぁ、幸せだぁ……。
じゃない!!!
これはいかんですぞ!神域的に完全にアウトじゃないだろうか。
違うんです!違うのです!私は確認したかっただけで、決して尻尾に顔面を埋めるつもりはなかったんです。
ちなみにタマモちゃんの尻尾は一本だった。
ん?あれ??そういえば、記憶を見て貰う前、春姫ちゃんはタマモちゃんの身体にいるときに尻尾が9本になったときあったよね?でもその後すぐ元にもどったよね。尻尾は出したり消したり出来るってことなのかな?
などと考え込んでいると……
「ケイよ、それはさすがに破廉恥が過ぎるのではないかえ?」
「あ!いや、そうだ、……ごめんなさい。」
私は思考と尻尾の海溝から緊急ブロー。大海原から顔を出す。
「おぬしの事だから、わざとしたわけではなく、そんなつもりはなかったというか、考えていた行動と結果が違ったとか、勢い余って、みたいな事なんじゃろう。」
「は、はい、その通りでございます。」
春姫ちゃんは私の事を解ってくれる。嬉しい。ありがとう。
ちなみにまだ春姫ちゃんを上に掲げたままである。
「じゃがの、そのまま続けてしまってはダメじゃぞ。それも人前じゃ絶対にダメじゃ。今のは完全にクロの目の前での行動じゃぞ?」
うわぁ、本当、やっちまった……。
私は掲げっぱなしだった春姫ちゃんを、また尻尾に顔面を埋めない様に細心の注意を払いながらもようやく降ろし、再び両手を春姫ちゃんのお腹に回してがっちりホールド。
「はい。反省しております。大変申し訳無い事をしてしまったと思っております。」
しかしながら、ふと思う。
もしも尻尾がなければ、お尻に顔を埋める事態となっていたのだ。
幼女のお尻に顔を埋めるおっさん。
しかも、その幼女は眠っているんだぜ。別の人が動かしているけど。
ヤバい、ヤバ過ぎる。
……もしかしたら、尻尾に顔を埋めるって、そのレベルでヤバいのではないだろうか。
ダメだと教えて貰ったので、その価値観に合わせたいと思っているのだが、どうもまだピンときていなくて、認識が甘くなってしまう。
相手の風習を舐めているつもりも、お前らが私に合わせろと思っているつもりもないのだ。
今のだってそのつもりもなく、ただの事故なのだ。
タマモちゃんは小さくて軽いが、それでも20kgくらいはあるだろう。それを肘を伸ばすくらいまで持ち上げたとき、腕を斜め前方へ出すよりも出来るだけ真上に方向にした方が、その体制を維持しやすいかと思ったのだ。ただその結果なのだ。
相手の文化風習を本当に尊重するならば、今回みたいな事故を回避する為にもっと耳や尻尾から距離を撮るべきか?物理的に。心の距離は離れることはないが。
私は混雑した電車に乗らざるをえない時は、両手を吊り革に伸ばすタイプだ。痴漢冤罪怖いもの。
つまりそういうことだなのだ。そうしなければならなかったのだ。
「ケイよ。今、おぬし、今後は耳や尻尾と距離を……物理的に距離をとろうと考えておるな?」
「えっ!?なぜ、それを……?」
いくらなんでもわかりて過ぎるよ!
「お腹に回った手に、わずかばかり力が入ったのじゃ。まるで、何か、耐え難いものを耐える決心をつけたかの様にの。」
な、何だそれは!?
……でも、うん、まさにその通リである。
「じゃがの、それじゃと今後ずっと近付く事ができぬぞ?ずっと他人行儀に離れている事になるぞ?」
「し、しかし……!」




