……カッコいいのだそうじゃ
「一子相伝の武術ってすごいなぁ。どんな技があるんだろう。」
パッと思い浮かぶのは、やっぱりあの北斗七星の暗殺拳だ。
……って、あ、一子相伝って事だから、軽々しくどんな技があるとか聞いちゃまずいかもしれない。
「クロごめん。気になっただけで、別に秘密を教えて欲しいとか思ったわけじゃないんだ。」
「ん?いいよ?別に秘密じゃないよ。あのね、内側からパーンってするの。」
ん?それは……北斗七星のやつで見たことあるアレか!?
「う〜んとの、対象の内部に『気』を送りこむんじゃ。そして内側からポンっじゃ。まぁそれだけじゃなくての、自分の内部で気を一気に燃やし、瞬間的にじゃが爆発的な力を生み出す事もできるのじゃ。」
「おおっ!!」
「さらにすごいのはの、対象の内部に気を送ると言ったじゃろ?それをポンっと爆発させるだけじゃなく、回復にも使えるのじゃ。内部からの回復じゃからの、場合によっては土地神級の霊力を持った者の回復術すら上回るのじゃ!」
「めちゃくちゃすごい!!クロ、すごいよ!!!」
「えへへへ。クロ、毎日頑張ってる。」
これは、頭を撫でたくなる。だが、我慢だ、我慢。
と思っていたのだが、クロがこっちに頭を差し出してくる。これは……撫でてってことでいいのかな?そう言えば、お墓参りのときに、すでにクロの頭撫でていたな。……じゃあ撫で撫でしてもいいか。うん、そうだ、いいんだ。
撫で撫で。
「えへへへ。」
狼耳に触れてしまわないように、撫で撫で。
「ふふふふ。」
撫で撫で、あっ、ちょっと狼耳触っちゃった。
「そういえば、気って何だろう?」
なでなで。
「そこも面白いんじゃ。一般的にはの、気、オーラ、念、チャクラ、霊力、これらは全部同じものじゃ。団体や流派によって呼び方が違うだけなんじゃ。蹴りとキックみたいなもんじゃ。」
つまり、胸だったりおっぱいだったりバストだったりするみたいな感じか。ナデナテ。いや、クロの胸を撫でたわけじゃないよ。
「じゃがの、クロの武術の『気』はの、それらとは違い、別物なのじゃ。それぞれに一長一短あるものじゃし、これを状況によって使い分けることに利点があるのじゃ。さらにそれだけじゃなく、重ねがけも容易ときたもんじゃ。」
撫で撫で。あ、クロの頭を撫でている方じゃない、春姫ちゃんのお腹に回している手を動かして、春姫ちゃんのお腹を撫でてしまった。
「すごい、すご過ぎるよ!警邏隊の総隊長さんもクロの入隊を懇願するわけだ。しかし、それにしても春姫ちゃん詳しいね。」
撫で撫で。クロの狼耳をがっちり掴んでしまった。いや、痛くはしていないはずである。
……うん、セーフ!
「ヒトカゲのやつにアドバイスしたのは妾じゃからの!」
えっ、御三家?撫でるのを止めてしまったが、クロもヒトカゲに興味がある様子。頭を起こしてしまった。
撫で撫で終了のお知らせ。残念。
「ヒトカゲって?」
「クロの武術の始祖の、九尾の狼じゃった火十影の名前じゃ。心に『火』を『十』持つ『影』の如きとかそんな感じの名前じゃったの。火には勇気の火と希望の火と….あと8個なんじゃったかの?そういった意味があったはずじゃ。本人は人影に隠れていそうな名前だと言って嫌じゃった様じゃがの。」
「ねぇねぇ、『影』は?影はどんな意味だったの?」
クロからの質問。確かに、火と十の意味を聞いたけど、影の意味は言わなかった。名前の由来で影の如きとかは言ってたけど。
春姫ちゃんは一瞬微妙そうな顔になったがすぐ元通りの顔に戻った。
「……カッコいいのだそうじゃ。」
「「えっ?」」
「影はカッコいいのだそうじゃ。ヒトカゲの父親は両目とも視力が良かったのにも関わらず、ご飯中以外ずっと眼帯しているやつじゃったからのう……。風呂も就寝時も付けておったのぅ。」
中二病ってやつか!!!
てか、いつの時代の人だ?先駆者だよ、時代を先取りし過ぎているよ!
私が興奮している隣で、クロは逆にちょっとしょんぼりしだした。狼耳かへにょっとなるの可愛い。しょんぼりしてるのを喜んじゃってごめん。
「クロの一族、名付けが変……。」
そ、それは……!
「えっ、クロって響きすごく可愛いと思うよ!?」
「クロの名前、本当はクロウ……可愛くない。男みたいな名前。もっと可愛い名前が良かった。」
「かっこいい……は嬉しくないか。うーん、でも愛称(というかあだ名か?でも愛称と言った方が好印象になるか?)のクロって可愛い響きだと思うし……。」
うぅ、何てフォローしていいのやら、困った。
「うぅ、うー。」
クロも唸ってしまった。
「クロの本名のクロウじゃが、漢字で書くと『九』と『狼』で『九狼』じゃ。さっきクロの一族の一子相伝の武術の始祖が九尾の狼だったことを話したじゃろ?それに由来しておるのじゃ。クロが産まれながら高い霊力を持っていたから、それに期待しまくった曽祖父達、クロに武術を教えている三人の暴走した結果じゃの。」




