ダメーーーッ!!!
「ダメーーーッ!!!」
えっ!?
声の主はイズナさんである。助けを求めようとしたタイミングでのカットイン。
イズナさんは叫ぶやいなや、私の右側に来た。イズナさんは右側から私に抱きついて来た。特筆すべき感触は特に無い。……だが、それも良い。
そして―――
ガブリ。
痛ってーーーっ!!!!!
イズナさんのは甘咬みじゃなかった。ガチ噛みである。しかも力を緩める事なく、噛み切らんとばかりに噛み続けている。
てか私はパッシブでカッチカチなはずなのに、今はしっかりがっつり痛みを感じている。イズナさんはどれだけ本気で霊力込めて齧り付いて来ているのだろうか。
……あれ?そう考えると、何だか興奮してくるな。この痛みも喜びに変わるというもの。いや、ごめん、嘘、かなり痛い。でもやっぱりちょっぴり幸せも感じている。
「イイイイズナさんっ!痛いです!かなり痛いです!身体強化の防御ぶち抜いて痛いです!」
ガブッガブッ
ぎゃあぁぁぁ!咀嚼するかの様にガブりガブりとしてきた。
この行動はどういう意味が込められているのだろうか。
怒らせてしまったのだろうか?クロにされるがままになってしまっているので、もっときっぱりと止めるべきだったか。いや、クロに対抗してガブリ始めたということは、……もしかしたらヤキモチだったりするのだろうか?だとしたら何て過激なんだ!
とか考えてても、やっぱり痛いんです。
「イズナさん!私はその習慣が何を意味するのかを知りません!痛いです、すみません、痛いです!!」
だがしかしやっぱりちょっぴり幸せ……!あぁ、何と心の複雑なことか。
とか自分に酔ってみようかと思ったらイズナさんからのガブガブが止んだ。
「……クロに噛まれて嬉しそうにしていたので、ヤキモチを焼いてしまいました。」
ぐふぅっ!過激なヤキモチが嬉しい。私にも言い分はある。でも、付き合った初日にヤキモチを焼かせてしまうのは、本当に申し訳ない。ごめんなさい。
でも、クロに噛まれてどうすれば良いのか解からなかったんです。
クロは今もガブガブと甘咬みしてきている。
「それは……ごめんなさい。そんな思いをさせない様に、以後気をつけます。……でも、クロはどうしたの?その甘咬みはどういう事なの?解らないんだ。教えて欲しい。」
イズナさんに謝ってからの、首をぐりんと反転(弱)させてから後半はクロへの問いかけ。
「えっ!?」
驚きの声を出したのはイズナさん。どうしたのだろうか。
クロもガブガブを止め、私の問いかけに答えようとしたが……イズナさんの方を、どうしたんだろう?と見ている。私もまたぐりんと首を反転(弱)、イズナさんを見る。
「クロは甘咬み、だったのですか?その、私、思い切り力を込めて噛み付いちゃいました……。」
あわあわとし始めるイズナさん。その時、クロの私をホールドする力が少し弱まった。今だ!
「あの、ケイさん、申し―――」
ガバッ!
私はイズナさんを抱き締めた。
……行動してから思った。今じゃないだろ、と。
だがしかし、こうなってしまっては後には引けない。勢い、きっとそれこそ神域流。……自分の行動を神域の所為にするの、良くない。はい。
「良いです。構いません。イズナさんに噛まさせてしまったのは私なのですから、謝らないで下さい。」
ぐうぅ、すごくいい匂い。やわらかい。……いや、胸部的な意味じゃなく、抱きしめる感触というかなんというかがです。あ、逆にイズナさんは私の加齢臭が……いや、妖精の霊力ってやつがどうとかだっけ?頭が良く回らないが、たしかなんか大丈夫だったよね、会った初日の時にさ。
ここまで来たら、イズナさんと恋人となったことを、クロとラスさんに伝えてしまおう。ヤキモチ焼かれたり、抱きしめちゃったりしたので今更かもしれないが、気付かれて指摘されるよりも、先に自分の口で伝えたい。
「クロ、ラスさん。私とイズナさんはお付き合いする事となりました。春姫ちゃんから私が妖精になったと聞いたと思いますが、寿命も伸びたからイズナさんが土地神となるまで待てるので、イズナさんは引き続き土地神を目指していけます!」
付き合ってるぜ宣言と、イズナさんはこれまで通り土地神目指すよと、仲が良さそうだからこそ心配になるだろう懸念事項についても伝えた。
って、イズナさんに了承とれよ!何勝手に言ってんだよ!?
「……イズナさん、まずはイズナさんに二人に伝える了承とるべきでした。私達のやり取りで気付かれてしまったかなと思ったので、自分の口で伝えたいと思い、言ってしまいました。勝手にすみません。」
イズナさんは私の腕の中で赤くなっている。私が自分をイケメンだと勘違いしてしまいそうになる状況だが、私は決してイケメンではない。ただのおっさんである。ちょいちょいエロい事を考えてしまう、ごく普通のおっさんである。
例えおっさんであっても……神域って、すごい。霊力ってすごい。
……ただ、今の自分を客観視すると美少女を抱きしめるおっさんという構図である。ものすごく痛い(どうしても相手を可哀想だと思ってしまい、心が痛む)ので、極力こういった行動は取らない様心がけねば。
「いえ……二人にはすぐ伝えるつもりだったので、構いません。」
私に抱きしめられて照れながらそう言ってくれた。良かった。
好きな人を抱きしめている喜びと、好きな人を拷問にかけている様な気持ちを同時にあじわっていると……
「良かったね!おめでとう!!!」
とクロがお祝い?の言葉をかけてくれた。




