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すまなんじゃ

「仲直り、してくれたら……嬉しいな。」


 私はそうラスさんに伝える。もちろん喧嘩をしているわけではない。こちらが謝って、ラスさんが許してくれたからこその、ラスさんがこれ以上謝り難くしてしまおう作戦なのである。

 それを聞いたラスさんは、なんとも言えない表情を見せる。私がどういうつもりでそう言ったのかが解っているのだろう。そして、ラスさんが私に更に謝ってしまうと、仲直りしてくれないならと、私も更に謝るという負の連鎖の様な泥沼状態に持っていくということも解ってくれているのだと思う。


「わかり、ました……。」


 しぶしぶ納得した様な表情のラスさん。


「本当に気にしないで下さい。気にするくらいなら、『そんな事』と言って笑い合えるくらい仲良くなってくれたら嬉しいです。」


 ……場を明るくしようかと思ってちょっと大げさな表現を使ってみたけど、人間の場合なら相手を絶望の淵に立たせる様な事いってるよな、これ。神域クオリティ神域クオリティ。いや、神域の年齢差のある結婚の話は聞いたけど、男女間の友人とかそういうのってどうなってるのか解らない。……大丈夫なのか?

 解らない。解らないからこそ、勢いだ。握手しよう?といった感じで右手を差し出す。あ、クロがくっついてるのは私の左腕だから大丈夫です。今も当たっています。


「そうですね。私もよろしくお願いします。」


 とりあえず気持ちは伝わったらしい。ラスさんもようやく笑顔を見せてくれて、握手してくれた。ただ、「私も」の時にチラッとクロの方を見ていた。何を思ったのかは知りたい様な、知りたくない様な。




 そう言えば、クロとラスさんはこちらへ来たのに、二人と話していたはずの春姫ちゃんはどうしたのだろうか。クロよりも後にこちらへ来たラスさんに聞いてみよう。


「あの、春姫ちゃんはどうしたんでしょうか?」


「春姫様ならさっきからそこにいるよ。」


 ラスさんに聞いたのだが、返事はクロから返って来た。

 クロの方へ目をやると、クロの視線はこの部屋の入り口の方へと向いている。

 私もそちらへ視線を移す。本当だ、春姫ちゃんがいた。春姫ちゃんが申し訳無さそうに襖から半身だけ出し、こちらの様子を見ている。何それ可愛いんだけど。

 たぶん今、クロ、私、ラスさん、それからたぶんイズナさん、春姫ちゃん本人以外の全員が春姫ちゃんを見ている。

 全員に見つめられると、春姫ちゃんは観念したかの様な表情となった。一体どうしたというのだろうか。


「すまなんじゃ。」


 しょぼんとした姿も可愛くてごめんという事だろうか。許します。


「まず、ケイよ。二人にはもう妖精の事を伝えてしもうた。『それとなく話をふってみる』と約束したのに申し訳ないのじゃ。それとなくって、非常に難しいのぅ……。おぬしが自分で伝えたかったじゃろうに、すまなんじゃ。」


「あ、ああ、良いですよ。強いこだわりを持っているわけではないですし、春姫ちゃんがそうしたって事は、それで良いんだと思います。」


「あうう、その信頼がさらなる罪悪感を……。」


「あああ、そんな罪悪感なんていいですから!『それとなく』ってすごく難しいと思います!誤魔化したり嘘ついたりしたら、それとなくの意味が無くなってしまいますし、だからと言ってズバッと言ってしまうこともできない。話せば話すほど、大変なことになってしまうと思います。だから、大丈夫です。大変な役を引き受けてくれてありがとうございました!」


「そう言ってくれると心が軽くなるのじゃ。じゃがのう、それだけじゃなくての……。」


 春姫ちゃんはクロをチラッと見た後にイズナさんの方を見る。そしてまたショボンとしてしまった。


「クロよ、すまなんじゃ。さっきは冗談のつもりじゃったんじゃ。冗談のつもりじゃったんじゃが、話の途中で走っていくもんじゃから……すまんの。」


 ええと……どういう事なのかな?よく解らない。首を傾げてしまう。

 すると、ラスさんが説明してくれた。


「ケイさんが妖精だという事の後、警護上の問題でその事を暫く秘密にすると聞いたのです。それを聞いたクロは、すごく不安がってしまって……秘密をポロッと漏らしてしまうのではないか、と。クロがあまりにも不安がるものですから、春姫様はクロを気遣って雰囲気を明るくしようとちょっとした冗談をおっしゃったのです。“ケイを独り占めにするのはどうじゃ?秘密も全部独り占めしちゃうのじゃ!独り占めじゃから誰にもケイの事を話さないのじゃ。”と。その後、“まぁそれは冗談じゃが、それくらいの気持ちを持っておれば―――”と話を続けていたのですが、いつの間にかクロがその場にいなくなっておりまして……」


 あぁ、それでクロがずっと引っ付いてきているのか……。

 クロみたいな可愛い娘が引っ付いてきてくれるのはとても嬉しい事なんだ。おっさんの夢と言ってもいいかもしれない。

 だが―――

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