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ひと拭きでピッカピカ

「まぁ力の差はそんな感じじゃからの、政府から積極的にこちらへ接触してくる事は少ないのじゃ。神域企業に人間がいるという事自体は歓迎しているから、妖精の事がバレなければ余計な事はしてこんじゃろう。ただ、おぬしから政府側に接触した場合は他国の外交官並の待遇を受けるじゃろうの。しばらくの間は控えて欲しいがの。」


 政府的には、私というか、神域に人間がいることは、人間と神域の橋渡しだったりご機嫌取りだったり、そんな感じのものを期待してるのかも知れない。

 そんなんで良いのか?とも考えなくもないが、政府内の神域担当者が視えない人だとどうしても不便な面も出てきそうだし、視える人にとっては恐怖を感じる面も起こりうる。政府内で、お前いけよ!いや、お前がいけよ!状態もあり得るかもしれない。

 もし、その状況を勇気を持ってなんとかしようという人物がいても、相手を刺激すんなよ!みたいな感じで周りから止められたりもあるか。

 全部勝手な想像であるが。


「それは、もちろんと言いますか、暫くと言わずずっとですね。必要最低限の接触に留めていきたいと思います。」


 私自身が苦労した訳でもなんでもないのに、高待遇は受けたくない。お偉方に頭を下げられても困ってしまう。そして、いつかそれを受け続けるうちに慣れてしまい、当然として受け取る様な人間になってしまったらどうしようか。いや人間じゃなくて妖精だけど。

 とは言え、私も今まで人間として生きてきたわけだし、今でも感覚としては人間である。政治的な局面でなければ、私のできる範囲では動ける様になりたい。

 となれば力をつけるしかない。里の役に立つにも、私の動ける場面で動くにも、結局は力をつけるしかない。妖精として力をつけていこう。そして大きな力をつけてもそれに呑まれない様、心も成長していかねば。ネバネバ。


「他に何かないかの?」


「はい。大丈夫です。」


「内容に納得して、契約を結ぶなら、氏名と拇印を頼むのじゃ。」


「はい。」


 私は三枚の書類に氏名を記入し、それぞれに拇印を押した。

 拇印って今までした事あったっけ?初めてかもしれない。

 ……あっこの指洗いたいけど、この家の洗面所を貸して貰ってもいいかな?


「うむ。これでおぬしはたった今から神域の社員じゃ。まぁ、ちょっと誤魔化して、今日の分は一日分の給金を出しちゃおうの。あっその指はこれで拭いてくれれば綺麗になるはずじゃ。」


 そう言うと春姫ちゃんはウェットティッシュみたいな物を渡してくれた。

 そのウェットティッシュ(仮)でさっとひと拭きしただけで朱くなっていた親指が綺麗になった。輝いてすら見える。シャイニングフィンガーってやつか!いや、ごめんなさい。見たことないから本物がどんな感じなのかわからないのだけど。子どもの頃、友人が良く真似ていたのだ。


「これすごいね!ひと拭きでピッカピカ!!」


「そうじゃろ?それは神域産での、術が掛かっておるからの。使い捨てじゃから、使い終わったらそこのゴミ箱にの。」


 と、部屋の隅にあるゴミ箱を指差す春姫ちゃん。

 指は綺麗になったが、これだけで捨ててしまうのはもったいない気がする。なので朱くなってない場所で顔でも拭いておこう。

 炬燵から出てゴミ箱へ到達する、ほんの二歩くらいの間にサササッと顔を拭いておく。もちろん汚れてない場所を使ってである。

 ゴミを捨て振り返ると、春姫ちゃんが何とも言えない顔でこっちを見ていた。

 やばい、おっさん的行動過ぎたか。


「きょ、今日の分から、しかも一日分の給料が出るのは助かるよ。ありがとう。」


 誤魔化す!

 春姫ちゃんからの視線がジト目へと変化する。

 タマモちゃんの身体でのジト目!とてもイイ!ありがとうございますと叫びたいが、そんな姿をタマモちゃんに見られてしまうわけにはいかない。


「…………まぁ()()はの、記憶を読まれる事は精神的に大きな負担となるわけじゃからの。手当代わりみたいなもんじゃ。」


 そんなもんだろうか。

 とりあえずおっさん的行動について何か言われる事はなかったから、良し!今後は気をつけよう。




 となれば、アレだ。アレをするタイミングについて相談しよう。


「あの、春姫ちゃん。」


「なんじゃ?」


「イズナさんと二人で話したいんだけど、今は料理してくれているじゃん?今後の予定を見て、どこか良いタイミングってあるかな?」


「そうじゃな、5時くらいから二人きりにしてやれるぞ。さっき表に出た時に、ラスとクロを5時に来る様に呼び出しておいたのじゃ。妾が二人と話している間にイズナとしっぽり決め込むと良いじゃろ。」


「しっぽりなんてしないよ!何てこと言ってるの!?」


 尻尾りたいけどしっぽりはしない!!

 てか、タマモちゃんに変な言葉聴かせないでよ!


「すまんすまん、言い間違いじゃ。尻尾の言い間違いじゃ。ん?タマモは気にしなくていいんじゃよ。」


 尻尾の言い間違いでしっぽりにはならないでしょ!……いや、なるのか?自分でも考えてしまったばかりだもの。いや、やっぱり間違えないな!

 後半は私にではなく、タマモちゃんへの返事だと思う。タマモちゃんが聴いているなら下手にツッコミを入れることはできない。黙って受け流そう。

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