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誰かいたのか?山田さんか?

 姉は何を言っているのだろうか?獣耳巫女さんたちは普通に公園にいるじゃないか。どういう意図があるんだ?


 うーん……獣耳巫女さんたちの様子を見て、邪魔しちゃいけない、我々(私と姉)が騒ぎ立てて気分を害しちゃいけない、遠くから愛でるものだ、などの考えになったのだろうか?尊過ぎて賢者モードになった的な?それなら理解る、理解りはするんだ。でも、心が、魂が荒ぶって収まらないんだ。


 ……いや、姉は相手への配慮やマナーを守りつつも前へ突き進む事ができる人物なのだ。我が姉ならば、彼女たちに気付いていたら突き進んでくれただろう。それに、彼女たちへの配慮だとしたら、先程の「いねぇじゃねえか。どこだよ!」のくだりも、彼女たちがこちらを気にする様な言動はしなかったはずである。


 ……まさか、本当に彼女たちに気付いていないのか?

 だが公園を見て、彼女たちを見逃すなんてことはありないぞ。大きな遮蔽物もないので角度的に見えなかった可能性も皆無だ。




 などと考えていたら、公園から獣耳巫女さんたちがこつらへ近付いてきた。

 私はついそちらに顔を向けてしまった(今までは視界には入れていたが、真っ直ぐにそちらを見ていたわけではなかった)。

 狐耳の巫女さんが前におり、犬っぽい耳の巫女さんと狸っぽい巫女さんはその後ろに付いている。

 あっ、狐耳巫女さんと目が合っちゃった!すごく、綺麗だなぁ。ものすごく整った顔立ちをしている。歩く所作も洗練されたものに見える。

 いや、ダメだ!!おっさんと見つめ合い続けるって、相手にとっては拷問に近いかもしれん、見続けてはダメだ!

 ……あああああむりだ、惹きつけられる!目が離れないぃぃぃっ!!


 などと一人で苦悩していると、私から3mほどの距離にまで来ていた狐耳巫女さんはニコッと微笑んでくれた。はうあっ!

 そして人差し指だけ立てた右手を口元に持っていき、シーッてしてきた。おっふ。


 私はゆっくり頷いて返事をする。あっ……見惚れていて脳が機能しておらず、ついつい反応を返してしまった。シーッとしてきた意図は解らないが、喋らなければいいという事ではなく、反応自体を控えた方が良かったのかもしれない。もしかして、しくったか?


 これに反応したのは姉だった。頷いた私の視線を追い、獣耳巫女さんたちを……通り越し公園へ、さらにはその向こうの田んぼへ。

 そしてまたこちらを向き、


「ど、どうした?誰かいたのか?山田さんか?」


 と言ってきた。山田さんは、我が家の前に公園の隣の家、つまりは斜向いの家の人だ。私も面識があるが今日は見ていない。

 って、あれ?我が姉ともあろうお方が、獣耳さんたちを当然の如くスルーしたぞ。

 あ、獣耳さんたちの名字も山田さんということか?いや、有り得なくはないが、先程の姉の視線の動き的に、やはり彼女たちを指しての事ではないだろう。


 狐耳巫女さんはちょっと苦笑いを浮かべ、後ろの二人は口元に手のひらを当て驚いた様な表情を浮かべている。あ、やっぱ頷いて反応しちゃったのはまずかったのかも???今度は反応しない様にしよう。


 まぁ、まずは姉だ。私は姉と向き合うが、なぜ姉は獣耳巫女さんたちをスルーしたのか解らず、どう対応したものかと迷ってしまう。

 姉は訝しげな表情でこちらを見ているが、「猫でもいたのか?」と周りを見渡し、そしてまたこちらを見た。姉の表情は、「どうしたんだこいつ?」というものへと変化している。


「あ、いや、山田さんはまだ見てないや。あの、まぁ、ちょっとね。」


 もしかしたら……姉と獣耳巫女さんは、実はガン無視するくらい仲が悪いのか!?

 姉の性格的に有り得ないだろうと思いつつも、そんな考えが頭によぎってしまった私は、誤魔化すというか、お茶を濁す様な曖昧な返事をするのがやっとだった。


 すると姉の表情がスッと元に戻った。あっ、これは、よくわからん言動をする上に、はっきりしない弟が面倒臭くなって、考えるのを止めたって顔だ。

 私が姉の表情を読んだ様に、姉も私の表情から迷いや困惑などを読んだ結果故かもしれない。


 姉は「よし、戻るか。美味い酒あったら明日また同じの買いに行って来いよー」などと言いつつ家の中に戻って行った。

 本気で言ったわけではない……はずである。

 う〜ん……、結局獣耳巫女さんの事は良いのかな?

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