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『最も遠い星』

「まぁ、そういうことでの、イズナのやつはのぅ、いわゆる白馬の王子様に対して憧れがあっての……。」


 いやいやいやいやいやいや!!!

 だったら私は絶対に対象外じゃないですかっ!

 身分的にも見ため的にも精神的にも、白馬の王子様なんて遠過ぎだよ!エアレンデルがご近所さんとして親しみを感じちゃうくらい白馬の王子様は遠すぎるよ!!


「昨晩なんとはなしに検索してた、『最も遠い星』で出てきたやつじゃの。自らの事をそこまで言わなくても良かろう……。いや、逆にロマンチックなのかの?良くわからなくなってきたわい。まぁ、白馬の王子様というのは例え話じゃ。運命的な出合いとか、一緒に特別な体験をするとか……あっエロい意味じゃないぞ?ちょっとした冒険や不思議体験そんなのじゃ。あとは、熱烈な告白をされる、とかそんなのにも憧れていそうじゃな。そういった、物語の様な事を夢見ているのじゃ。」


 ……なんて尊いんだ!!!

 でも、私とイズナさんの間にそれらも特に起こらなかったはずだけど……。

 って、あ!そっか、イズナさんには告白として受け取られているだろうという事だった!


「うむ。あの時の事を思い出してみるのじゃ。イズナは顔を真っ赤に染めておったじゃろ。顔は背けられておったから表情こそ窺い知れぬが、色白のイズナじゃから解りやすく真っ赤じゃったな。イズナにとっては初めての異性からの告白。しかもおぬしは思っきり気持ちを込めたのじゃから、イズナはさぞかし情熱的な告白に感じたんじゃなかろうかの?」


 悶死しそうになるけど、頑張って耐えながらも思い出してみる……いややっぱりないな!何言ってんだコイツ?感しかない!


「今は原因の話じゃから、イズナがどう思ったかじゃ。さっき言った通り、おぬしに対してイズナは好感度ブーストがかかっておるしの。おぬしからの真っ直ぐな言葉が、イズナの心に響いたのじゃ。ブチ抜いたと言っても過言ではないの。」


 ……もし、そうだとしても、告白通り越してプロポーズまでいっちゃうのかなぁ。特にその直前にしょんぼりさせちゃったりもしたし……。


「そこは、イズナの結婚観というか、価値観じゃの。幼い頃から目指していた土地神を諦めるのなら、絶対にその人と添い遂げたいという想いじゃ。付き合う事と結婚がかなり(イコール)に近いのじゃ。」


 なるほど。確かに、イズナさんの立場だと気軽に付き合ってみるというのは難しいか。

 いや、付き合う=ヤッちゃうというわけではないけれど、近いもの、一部内容を含むものではあると思う。


「それとしょんぼりさせた事は妖精効果が強く関係してしまっているのかもしれぬ。手を繋ぐことを言い出される前にすでに好感度はかなり高かったのじゃろうの。異性としてというより、知人として。これからさらに仲良くなって友人となりたい相手として。だからこそ、手を繋ぐのを拒まれたと思ってショックも大きかったんじゃろうの。」


 私がビビったばかりに……。


「そのショックが大きかったからこそ、おぬしからの熱烈な告白(仮)がより大きな反発になったやもしれぬ。バネが縮まってからビョンと跳ねる様にの。」


 んなまさか……!?

 いや、悪印象は好印象に変換可能だというアレに近いか?……違うか。


「その後も、イズナが告白の返事を考える時間をくれと言ったら、おぬしは“いくらでも待ちます!!!”などと返すもんじゃから、イズナにとっては返事を待つという事ではなく、『イズナが土地神になるまで何年でも待つ』とか『あなたの事をずっと想い続けます』とかそういった意味に聴こえていたやもしれぬ。」


 自分の顔面レベルを明らかに超えている内容のセリフを、言ってないのに言った扱いになっちゃった……。


「それからおぬしは冬の里に行きたいとか、イズナの両親に是非ご挨拶をなどと言っておったの。イズナの中ではさらに勘違いが加速したじゃろうの。おぬしはイズナの父親とヤる事を考えておったというのに。」


 違う違う違う!!!最後のは違う!

 ……でもまぁ、そう考えると、プロポーズした事になっちゃうのか?


「今から考えなければならぬのは、プロポーズをしたかしていないかではなく、おぬしがどうしたいか、じゃ。」


 そう、ですね。私がどうしたいか……。


「イズナにプロポーズを否定するのか、このままプロポーズをした事にして返事を待つのか。おぬしが何を望むのかを決めなければ、この問題は進展せぬぞ?」


 ……。

 春姫ちゃんに私の心はバレバレだし言っちゃうけど……一目惚れだったんだよね。いい年したおっさんが、中学生年代の女の娘にさ。声に出したら、人間社会だと世間体が大変な事になっちゃうよ。

 だけど密かに想うだけならば……と。忍ぶ恋とか、そういった傍から見たら尊くも感じる様なものじゃなくて、ただ単に自分に対しての諦めなんだけどね。

 あとは、イズナさんに不快な思いはさせないように極力気をつけなきゃって。それだけは、何としても守らなきゃって。……まぁ、獣耳や尻尾をチラチラ見ちゃうのは、どうしても止まらないけど。

 プロポーズと勘違いされたのはびっくりしたけれど、それを真剣に考えてくれて……幼い頃からの夢と天秤に掛けるほどに迷ってくれるなんて、すごく光栄な事だと思う。例え妖精の効果だとしても。

 ものすごく嬉しいし、もしもイズナさんが私との結婚を選んでくれるなら、私もそうしたい。


 ……。


 …………。


 ……でも、無理だよなぁ。

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